第14話 十強決戦、赤き牙
実戦リーグ最終日。
第一訓練場には、一年全員が集められていた。
一ヶ月続いた実戦リーグ。
勝って笑った者も、負けて消えた者もいる。
その最後に残るのは、上位十チームだけだ。
俺たち トライ・ブレイク も、その発表を待っていた。
「胃が痛い……」
ユウト・セルヴァ が腹を押さえている。
「お前、戦う前よりこういう時の方が弱いな」
「順位発表は精神攻撃なんだよ!」
横で カイト が欠伸した。
「俺は眠い」
「知ってる」
前へ出た ガイゼン教官 が一喝する。
「静かにしろ」
空気が一瞬で張り詰めた。
「実戦リーグ全日程終了。これより最終順位を発表する」
十位から順に呼ばれていく。
「十位――グレイ・リンク!」
歓声。
「九位――サンダーロウ!」
悲鳴。
「八位――ブラック・ボルト!」
ざわめき。
ユウトの顔色が悪くなる。
「まだ呼ばれてない……!」
「上なんだからいいだろ」
「心臓に悪い!」
「七位――トライ・ブレイク!」
「うおおおおお!」
ユウトが飛びついてきた。
「七位! 七位でも十強だぞ!」
「離れろ暑い!」
カイトは拍手だけしていた。
「妥当」
「お前、もう少し喜べ」
だが七位という順位は悪くなかった。
終盤に二敗目もした。
未完成な俺たちには、むしろ現実的な数字だ。
「六位――アイアン・クロウ!」
「五位――ストーン・バースト!」
「四位――ストーム・ハウル!」
残り三枠。
空気が変わる。
「三位――レッドファング!」
歓声が爆発した。
赤髪の大男、ガレス が拳を突き上げる。
誰より声がでかく、誰より笑う男。
だが、試合になると別人だ。
豪快に見せて、戦況を読む。
力で押すように見せて、相手を誘導する。
その両脇には仲間二人。
眼鏡の セイル。
冷静沈着な分析役。
巨漢の ドグ。
前線を押し潰す怪物。
「二位――ブルー・スピア!」
「一位――エリシア隊!」
当然のような首位通過。
勝点も頭一つ抜けていた。
エリシア・ノヴァ は静かに立ち、歓声を受け流している。
隣の レナ は槍を肩に担ぎ、以前よりも鋭く研がれていた。
ゴード は無言のまま盾を鳴らす。
……相変わらず隙がない。
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ガイゼン教官が掲示板を張り替える。
「これより上位十チーム決戦を行う」
ざわつきが広がる。
「目的は優勝ではない」
全員が静まる。
「国営武術大会 出場権三枠の決定だ」
視線が一気に変わった。
「一位のエリシア隊はシード。反対山へ配置」
「三位レッドファングは本戦側山」
「その他順位は固定配置だ」
そして掲示板に組み合わせが貼り出される。
俺たちは前へ出た。
七位の位置。
その先にあった相手は――
トライ・ブレイク(7位)
VS
レッドファング(3位)
「……終わった」
ユウトが真顔で言った。
「まだ始まってねえよ」
「初戦でレッドファングだぞ!?」
カイトは眠そうに掲示板を見る。
「重いね」
俺は笑った。
「最高じゃねえか」
「お前だけ感覚おかしい!」
周囲もざわついていた。
「七位が初戦レッドファングか」
「でも見てえな、その試合」
その時、でかい笑い声が響いた。
「がはははは!」
ガレスがこっちへ歩いてくる。
「よう、クロウ!」
「声でけえ」
「初戦で当たるとは運命だな!」
「最悪の間違いだろ」
ガレスは豪快に笑い、俺の肩を叩いた。
重い。
「お前んとこ、好きだぜ」
「気持ち悪いな」
「泥臭く勝ち上がる奴らは嫌いじゃねえ」
その瞬間、空気が変わる。
笑顔のまま、目だけが鋭くなった。
「だが、止める」
セイルが眼鏡を押し上げる。
「クロウ君。あなたの二段踏み込み、右肩が先に入る癖があります」
「……見てやがるな」
ドグは無言で拳を鳴らした。
圧だけで面倒くさい。
ガレスが笑う。
「力だけじゃ勝てねえ。頭だけでも勝てねえ」
拳を握る。
「両方ある方が勝つんだよ」
……面白い。
かなり強い。
だからこそ、燃える。
「止められるならやってみろ」
俺が言うと、ガレスは嬉しそうに笑った。
「いい返事だ!」
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解散後。
訓練場の隅。
俺たち三人は円になった。
ユウトが真顔だった。
「普通にやったら負ける」
「はっきり言うな」
「事実だよ」
カイトも頷く。
「かなり強い」
俺は右拳を見る。
右腕集中加速打撃。
未完成の新技。
荒い。外せば隙になる。
だが――こういう相手を倒すために必要な技だ。
「やるぞ」
ユウトが深く息を吐いた。
「……やるしかないな」
カイトが小さく肩を回す。
「少しだけ本気出す」
初戦から最大の山場。
だが悪くない。
ここを越えれば、本物になれる。




