第12話 負けた週末とやり直し
エリシア隊に敗れた、その日の放課後。
一年体術クラスは教室へ集められていた。
金曜日の終礼――この学校では、週末前にその週の実戦成績と評価が発表される。
前方に立つのは、ガイゼン教官 。
教室の空気は重い。
「まず、リーグ戦ルールの再確認だ」
教官が黒板を叩く。
「基本は平日毎日試合。勝敗でポイント変動」
その横に文字が並ぶ。
勝利 加点
敗北 減点
「だが、休戦届けを試合前までに出せば、その日は試合回避できる」
ざわつきが起きる。
「一週間に二回まで。ポイント変動なし」
つまり、無理な相手や調整日に使えるってことか。
「使いどころも実力のうちだ。覚えとけ」
なるほど。
教官は名簿へ視線を落とす。
「今週終了時点、暫定順位」
上位チーム名が読み上げられていく。
当然のように、エリシア隊 は上位。
そして俺たち、トライ・ブレイク は一敗で中位につけていた。
悪くない。
……いや、負けたばかりでそうは思えない。
「次、個別講評」
嫌な言葉だ。
教官は真っ先に俺を見る。
「クロウ」
「……はいはい」
「返事が軽い」
舌打ちしたい。
「お前は強い。だが頭が悪い」
教室に笑いが起きる。
「前しか見えてねえ。味方の位置も、相手の狙いも見ず突っ込む。昨日はその典型だ」
言い返せない。
「一人で勝てる相手ならいい。だが上位相手にはただの的だ」
……くそ。
次にユウトへ視線が向く。
「ユウト」
「はい!」
「補助の幅はいい。判断も悪くねえ」
本人が少し嬉しそうになる。
「だが体術が弱すぎる。狙われた瞬間終わる」
「ぐっ……」
「逃げ足だけは評価する」
「褒められてない!」
また笑いが起きる。
最後にカイト。
「カイト」
「はい……」
眠そうだなこいつ。
「やれば強い。だがやらねえ」
「否定できません」
「戦えるのに手を抜く奴は、一番信用されねえ」
教室が静まる。
その言葉だけは、少し重かった。
教官は三人まとめて睨む。
「トライ・ブレイク、お前らは素材だけなら上位だ」
少しざわつく。
「だが現状はバラバラの三流チームだ」
胸に刺さる。
「週末使って考えろ。来週も同じなら落ちるぞ」
終礼はそれで終わった。
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帰り道。
夕焼けの校門前で、三人とも無言だった。
最初に口を開いたのはユウトだった。
「……集まるか、明日」
俺は即答した。
「ああ」
カイトは面倒そうに頭を掻く。
「休みなんだけど」
「知るか」
「知ってよ」
だが、断らなかった。
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土曜日、朝。
訓練場の隅。
休日で人も少ない。
俺たちは三人で向かい合っていた。
「まず作戦会議!」
ユウトが紙を広げる。
「クロウは突っ込みすぎ。カイトはやる気なさすぎ。俺は狙われたら死ぬ」
「最後ひどくね?」
「事実だよ!」
カイトが手を挙げる。
「俺からもある」
「なんだ」
「クロウ、拳しか考えてない」
「……」
「ユウト、説明長い」
「うっ」
「俺、眠い」
「帰れ」
少し笑いが起きた。
空気が軽くなる。
「じゃあ練習するか」
その日、俺は初めて“待つ動き”を練習した。
突っ込むだけじゃなく、相手を見て一拍置く。
ユウトは移動しながら補助魔法を使う練習。
カイトは嫌々ながら、二人に崩しのタイミングを教えた。
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日曜日。
昨日より少し動きが合う。
俺が踏み込む直前に、ユウトの補助が入る。
相手役のカイトが崩れたところへ拳を通す。
「今のいい!」
ユウトが笑う。
「クロウ、今ちゃんと待てた!」
「子供扱いすんな」
「成長したなあ」
「殴るぞ」
カイトが地面に座りながら言う。
「でも、前よりマシ」
「珍しく褒めたな」
「疲れて判断鈍ってる」
「素直じゃねえな」
気づけば、三人で笑っていた。
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夕方。
訓練場からの帰り道。
沈む夕日を見ながら、ユウトがぽつりと言う。
「負けてよかったかもな」
「何言ってんだ」
「だって、負けなきゃこうして集まってない」
少しだけ黙る。
……否定はできない。
カイトも頷いた。
「まあ、少しだけ」
「少しかよ」
「かなり、は言いすぎ」
俺は肩で笑った。
悔しさは消えていない。
エリシアに何もできず負けたことも、忘れていない。
でも――
次は違う。
一人で突っ込むだけじゃない。
三人で勝つ。
そう思えた週末だった。
本日もご愛読ありがとうごさいました!各キャラの成長実は主人公達の国家は全体的に魔法よりも体術が強め、地味でシュール泥臭い戦いを続け成長していく姿、お楽しみください!




