第11話 再戦!眠そうな切り札!?
実戦リーグ三日目。
朝から訓練場の空気がおかしかった。
観客席はいつも以上に埋まり、ざわめきも大きい。
「ついに来たな」
「二勝同士の全勝対決だ」
「寄せ集めがどこまでやれるか……」
対戦表には、はっきりと書かれていた。
トライ・ブレイク
対
エリシア隊
俺は拳を握る。
「来たな」
隣で ユウト・セルヴァ が青い顔をしていた。
「来ちゃったな……」
「昨日まで威勢よかっただろ」
「それは相手が別格じゃない時限定だよ!」
その横で、カイト は眠そうに欠伸していた。
「帰っていい?」
「よくねえ」
「まだ始まってもいないぞ」
「だから帰りたい」
本当にこいつはぶれない。
リング反対側。
エリシア・ノヴァ が中央に立つ。
その左右には、槍使いの レナ と、大盾使いの ゴード 。
昨日まで見たどのチームより、完成されていた。
無駄な会話もない。
立ち位置も綺麗だ。
「始め!」
合図と同時に、俺は踏み込んだ。
「クロウ待て!」
ユウトの声。
だが遅い。
一直線にエリシアへ向かう。
その瞬間、足元に光陣が走った。
拘束術式。
「っ!?」
一瞬、脚が止まる。
そこへレナの槍が飛ぶ。
脇腹を掠める。
さらに横からゴードの盾が叩き込まれた。
視界が揺れる。
「クロウ!」
吹き飛ばされた俺は、地面を滑った。
……速すぎる。
俺が立ち上がる前に、ユウトが魔法を展開する。
だが、その術式をエリシアが即座に打ち消した。
「え」
「遅いわ」
風刃が走る。
ユウトの杖が弾き飛ばされる。
そのままレナの槍先が喉元へ突きつけられた。
「戦闘不能」
早すぎる。
まだ一分も経っていない。
「ちっ……!」
俺は再び踏み込む。
今度こそ二段踏み込みで距離を詰める。
だが、読まれていた。
エリシアは半歩下がり、俺の拳を流す。
そこへゴードの盾。
腹に直撃。
呼吸が止まる。
膝をついた俺の首筋へ、冷たい風刃が止まった。
「戦闘不能、二人目」
歓声とどよめきが混ざる。
「終わった!?」
「早すぎるだろ……」
俺は歯を食いしばる。
……何もできなかった。
その時だった。
「はあ……面倒」
リング端にいたカイトが、初めて前へ出た。
眠そうな目が、少しだけ変わっている。
「二人とも、突っ込みすぎ」
「カイト、逃げろ!」
ユウトが叫ぶ。
「無理。三対一でしょ」
そう言いながら、カイトは指を鳴らした。
空気が揺れる。
レナの足がもつれる。
ゴードの重心がずれる。
エリシアの術式の流れが一瞬乱れた。
観客席がざわつく。
「なんだ今の!?」
「三人同時に崩したぞ!」
カイトは静かに歩く。
相手の動きを一歩ずつ狂わせながら、攻撃だけを避けていく。
槍は届かず、盾は空を切り、魔法は僅かに逸れる。
「……へえ」
初めてエリシアが感心したように呟いた。
「本気、出せたのね」
「出したくなかった」
その瞬間、カイトの指先がレナの手首に触れる。
槍が落ちた。
次いでゴードの膝が折れかける。
「すげえ……!」
「一人で押してるぞ!」
俺も目を見開いていた。
こいつ、こんな強かったのか。
だが――限界は来る。
三人を同時に乱し続ける負荷。
額から汗が落ちる。
呼吸が乱れる。
エリシアはそれを見逃さなかった。
「終わり」
風の刃がカイトの足元を裂く。
体勢が崩れたところへ、レナの槍柄が肩を打つ。
さらにゴードの盾が迫る。
カイトは吹き飛ばされ、場外まで転がった。
「勝者、エリシア隊!」
歓声が爆発する。
だが、その中には別の声も混じっていた。
「最後のやつ誰だ!?」
「カイトってやつ、やばくね?」
「三人相手に粘ったぞ!」
注目は、勝者だけに向いていなかった。
カイトは地面に寝転んだまま言う。
「……やっぱ疲れる。帰りたい」
ユウトが駆け寄る。
「お前、そんなことできたのかよ!」
「できるけど、面倒だから普段やらない」
俺は無言だった。
悔しい。
負けたことも。
何もできなかったことも。
そして――
最後に一番目立ったのが、自分じゃなかったことも。
エリシアがこちらを見る。
「クロウ」
「あ?」
「あなた、まだまだ弱いわ」
……分かってる。
だから、腹が立つ。
拳を握る。
次は、こうはいかない。
今回もお楽しみ頂けましたか?
ご愛読頂きありがとうございました!
アリシアちゃんやっぱ強いです!
主人公の成長是非お楽しみください!




