第10話 二勝目と現実
実戦リーグ二日目。
昨日の勝利で、少しだけ周囲の見る目が変わっていた。
「寄せ集めにしてはやるな」
「クロウの一発は本物かも」
「でも昨日だけだろ」
好きに言わせておけばいい。
俺たちは控え席で対戦表を見ていた。
トライ・ブレイク の次の相手は――
ブラスト・ネイル。
「脳筋三人組だ」
ユウト・セルヴァ が即答した。
「全員前衛型。突っ込んで殴るだけ」
「分かりやすくていいな」
「お前が言うと褒め言葉なんだよ」
横で カイト が欠伸する。
「じゃあ楽かも」
「油断すんな」
相手三人がリングへ上がる。
大柄な坊主頭の ガル。
二本腕甲の ボド。
蹴り主体の ネス。
見るからに荒っぽい。
「おいクロウ!」
ガルが笑う。
「お前の喧嘩見たぞ! 気に入った! 正面から殴り合おうぜ!」
「悪くねえな」
「悪い悪い悪い!」
ユウトが慌てて割って入る。
「こっちはチーム戦なんだよ!」
開始線へ並ぶ。
ガイゼン教官の声が響く。
「始め!」
同時に相手三人が突っ込んできた。
速い。
作戦も何もなく、一直線に突撃。
「うわ本当に脳筋!」
ユウトが補助魔法を展開する。
青白い光が俺とカイトの脚へ走る。
速度補助。
「クロウ、正面受けるな!」
「分かってる!」
俺も昨日とは違う。
真正面からぶつからず、一歩引いて軌道をずらす。
ガルの拳が空を切る。
そこへ横からボドが腕甲を振り抜く。
「うおっ!?」
重い。
腕で受けた衝撃が骨まで響く。
だが、その瞬間。
「今」
カイトの声。
ボドの膝が揺れる。
体勢が崩れた。
またあの崩しだ。
「助かる!」
俺はそのまま肩からぶつかり、ボドを場外へ押し出した。
「一人!」
観客席が湧く。
だが次の瞬間、ネスの蹴りが横から飛んできた。
腹に刺さる。
「ぐっ……!」
吹き飛ばされ、地面を転がる。
「クロウ!」
ユウトの声。
くそ、痛え。
「油断したね」
カイトがのんびり言う。
「してねえよ」
「してたよ」
腹立つ。
立ち上がると、ガルが笑っていた。
「いいな! 今の耐えるのか!」
「お前ら、嫌いじゃねえ」
「俺もだ!」
なんなんだこいつら。
残り二人は息も合っていない。
だが、勢いと個々の強さで押してくる。
面倒なタイプだ。
「ユウト!」
「分かってる!」
今度は赤い光が腕へ走る。
短時間の出力補助。
「十秒限定!」
十分だ。
俺は踏み込む。
ガルが拳を振るう。
そこへ一歩目。
さらに、もう一歩。
昨日掴みかけた二段踏み込み。
「なっ!?」
一瞬で懐へ潜る。
拳を腹へ叩き込む。
ガルの巨体が浮き、そのまま後方へ吹き飛んだ。
残るネスが舌打ちする。
「化け物かよ」
「褒め言葉だな」
飛び込んできた蹴りを、今度は腕で流す。
昨日までなら受けて終わっていた。
今日は違う。
流して、空いた脇腹へ拳。
ネスが膝をつく。
「勝者、トライ・ブレイク!」
二勝目。
歓声が上がる。
「連勝かよ!」
「寄せ集めじゃねえなもう」
ユウトはその場に座り込んだ。
「もう無理……補助二連発はきつい……」
「よくやった」
頭を軽く叩く。
「……え、今褒めた?」
「うるせえ」
カイトは相変わらず眠そうだった。
「次はもっと楽な相手がいい」
「お前働け」
三人で控え席へ戻る途中、掲示板前が騒がしかった。
人だかりの中心には、新しい結果表。
そこには別チームの試合結果が張り出されていた。
エリシア隊
二勝。両試合とも圧勝。
失点ほぼゼロ。
周囲がざわめく。
「やっぱ別格だ……」
「優勝候補筆頭だろ」
少し離れた場所で、エリシア・ノヴァ が静かに水を飲んでいた。
俺と目が合う。
「二勝、おめでとう」
「そっちもな」
「でも、まだ粗いわ」
「……次会った時に言え」
彼女は少し笑った。
「三日目、当たるかもしれないわよ」
その言葉に、胸の奥が熱くなる。
まだ勝てるとは思っていない。
でも――逃げる気もない。
二勝した。
少し強くなった。
なら、次はもっと先へ行くだけだ。
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