銃撃戦
今回は銃撃戦がメインです。
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国際観艦式。GOSTO(全洋安全保障条約機構)体制になって以降、四年に一度開催されている。
全8隻の学園要塞艦を含めた世界中の軍艦等を集め、その兵器の素晴らしさを見せ合うだけではなく、互いの理解を深め、国際秩序の維持に役立てるためのものだ。
今回は北大還流の小国、壇国で開催される。壇国の島々は現在、西方中緯度帯を流されている。季節はいわゆる秋を迎えており、暑さ寒さも特別ない恵まれた気象条件となっている。
朝0900に行進を実施し、解散した勇名は、早ヶ瀬三尉と共に第二港湾ブロックへ移動、機甲神骸の曲芸滑走の準備を行っていた。
他の艦にいる観客たちに見守られて滑空と着水を行ったあと、少し離れた場所で円を描く動きで待機している。
時刻は1015となり、現在わだつみ艦隊の随伴艦をしている八洲皇国の艦隊が無反動砲やアスロックの試射を始める頃だった。
事件は前触れもなく始まる。
八洲艦隊の無反動砲が、来賓たちが集まっているわだつみの艦橋に向けて放たれたのだ。
爆発音と、吹き出す炎、そして煙。
それを目にした勇名は、永遠と呼吸を合わせて、急ぎわだつみに向かう。艦橋には、来賓接待のために幼なじみの白河鈴と、その護衛の三雲螢がいるはずだった。
最大出力で劣るとされる六式でも、最大戦速を超えて滑走させれば数秒で現場に着く。止まない護衛艦の無反動砲に対して、機甲神骸の携行型無反動砲を打ち返す。
永遠による弾道補正が入った弾丸が、護衛艦の無反動砲を直撃し、破壊する。他の艦の無反動砲もわだつみに向けられていたため、方向転換をしつつ、携行型無反動砲で射撃し、沈黙させていく。
八洲艦隊の中に、VSL(垂直型ミサイル発射装置)の蓋を開放する動きが見られる。
「させるかっ、これ以上はっ」
勇名が操作して放たれた弾丸が、VSLに直撃する。ミサイルが誘爆したようで、大きな火柱が上がり、火災が発生した。
「永遠、艦橋の状況は?」
「火災は収まってる。でも、重傷者が多い。女皇陛下は担架に乗ってる。鈴ちゃんと螢ちゃんは元気そうだよ」
「そうか。女皇陛下が……」
「第7方面隊司令は……バイタルサイン……なし」
「やばいな、八洲とGOSTOで戦争させるつもりなのか?」
「それはわからないよ……VSLのセルが開放された!」
勇名は素早く開放された蓋を発見し、その艦に射撃する。浮き上がり始めたミサイルに命中し、誘爆が起こされる。
「悪いことに使うから!」
勇名は次々に八洲艦隊の艦のVSLを破壊していく。当然、火災になる艦が多く、沈みかけている艦も見られた。
「お兄ちゃん、八洲艦隊は予定のコースを外れていってる。わだつみ艦上で、銃撃戦が始まってるよ」
「どういうことだよ」
「わからないけど、八洲艦隊と連携した敵が潜んでいたってことかな」
「このまま第一甲板に乗れるか?」
「乗れるけど、艤装が陸戦用じゃないし、着艦時に味方を傷つける危険がある」
「なら、俺だけでも投げてくれ」
そういった勇名は、ホルダーの中のパイロット用の拳銃を確認し、操縦席の銃座から小銃を外して持つ。
「無茶言わないで。六式は高速で滑走してるんだよ」
「永遠なら、腕の動きで相対速度合わせられるだろ?」
「そんなの、危ないよ。お兄ちゃんが大怪我しちゃうよ」
「ちゃんと受け身とるから!」
「そういう次元の問題じゃ……、わかったよ」
永遠が諦めたようにいう。勇名が仲間の危機を放置するわけがないからだ。
機甲神骸の操縦席の扉が開き、猛烈な風圧の中、添えられた六式の左手に勇名が乗る。
「行くよ、三、二、一……」
「うぉー!!!!」
勇名は宙に浮く。あっという間に、わだつみの第一甲板を一度越え遠ざかったあと、今度は近づいてくるように見える。左手から受け身を取るが、それでも強い力で甲板に叩きつけられる。
「くっそ、痛ってぇ」
一瞬、勇名の視界が真っ白になりかける。
「鈴、螢!!」
唸り声を上げつつ、身体を起こす。左手の指を数本と、肋骨を何本か折ってしまったかもしれないと思いつつ、脳内ホルモンの影響で身体がしっかり動くことを自覚する。
「こんなとこで昼寝してられるか」
立ち上がった勇名は、艦橋の状況を確認しながら、遮蔽物から遮蔽物へと移動していく。
艦橋の下で、鈴、螢、女皇陛下が鉢巻きをした兵士に連れられているのがわかる。女皇陛下は、侍従と見られる男二人に、担架で担がれている。
「敵か? 味方か?」
勇名は螢の様子を注視する。あんな平凡な兵士に勝てない螢ではない。しかし、男をある程度信用して付いていく様子を見ると、敵ではなさそうだ。
「危ない!」
鈴たちから見えない場所に、黒ずくめの戦闘服を着た八洲人らしい兵士がいる。銃を構えて、待ち伏せしているように見える。
勇名は二四式自動小銃をフルオートにして放つ。防弾チョッキを着た上半身ではなく、足を狙って撃った弾がいくつか命中したのか、黒ずくめの男は倒れる。
驚いてこちらを見た鈴が、急に涙をこぼす。
「勇名!」
勇名は一気に駆けると、鈴たちに合流する。鈴が怖いものを見た子供のようにしがみついてくるが、勇名は鉢巻きをした男に急ぎ自分について説明する。
「俺はこいつらの同期で、学友の羽佐間勇名です。援軍と思ってください」
「あ、ああ。ありがたい。俺は陸戦群普通科第3連隊の山下だ。相手は特殊部隊のようだ。羽佐間一佐の甥御さんが来てくれて良かった。ここから第二港湾ブロックまでの行き方を教えて欲しいんだ。そこまで行けば、仲間がいるんだ」
「残念ですが、士官用通路は通れません。少し遠回りになりますが、道案内はします」
「助かる。頼む」
「陛下の容態は?」
「裂傷は止血出来ている。火傷の範囲が広いのが問題だ。早く医師に診せないと」
「第二港湾に常駐の医師がいます。急ぎましょう」
「なんで無視するのよっ」
「ああん、遅くなって悪かったよ。脇が痛いから、しがみつかないでくれ」
「羽佐間殿、拳銃を貸して欲しい」
螢は武器を持っていないようだ。
「わかった。頼んだ。で、ちびっ子は離れてくれ。動きづらいは痛いは……頼むから離れてくれ」
「嫌だっ」
「陛下の御前で何子供返りしてんだよ!」
「だって……、お母様が……」
「だから、急がないと」
鈴を引き剥がし、周囲を警戒しつつ第二港湾ブロックへの道を歩き始める。階段から第二甲板(地下一階相当)に降り、当直員の仮眠用ベッドが並んでいる通路を通る。
「えぇっと、ここは、右」
空き部屋が並ぶ一角は、会議室や自習室として使われているエリアだ。人の気配を感じた勇名は、鈴たちを一度手で制する。
停電があるのか、かなり薄暗い。勇名は六式から持ち出していた陸戦用リュックから閃光弾を取り出す。
「目を閉じて、耳を抑えろ」
そう言った勇名は、閃光弾を廊下に転がした。目を瞑っていてもわかる強烈な光が廊下を照らす。
呻き声が聞こえたため、急いで走る。部屋の扉を蹴破ると、暗視ゴーグルをつけて両眼を抑え転がっている黒戦闘服の男が数名いた。
そんな状態の敵にとどめをさすのかと戸惑いが生まれるが、迷いはすぐに吹っ切れる。山下が容赦なく黒戦闘服たちを撃ち殺したからだ。
「嫌な仕事は若い君に押し付けられない。君が悪いんじゃない。俺みたいな大人が、他人の命をおもんばかる余裕がないだけだ……さあ、進もう」
勇名は何も言えず、ただ頷く。
空き部屋が並ぶ一角を過ぎて、航海科の学徒たちが仮眠や休憩を取るための一角に差し掛かる。
周囲を警戒しつつ走っていくと、所々に航海科学徒の死体が転がっている。先ほどの黒戦闘服にやられたのか。痛ましさに胸が苦しくなるが、大怪我をしている女皇陛下も連れている以上、嘆いている暇はない。
記憶をたどりつつ、第二港湾ブロックへの道を急ぐ。次の角を右、と思ったとき、甲高い音と共に、目の前の床が火花を放つ。
足を止めると、黒戦闘服数人が現れて立ち塞がる。一旦、後退しようと後ろを見るが、そこにも黒戦闘服が現れ、こちらに銃口を向けている。
「お疲れだったな。ここまでだ」
どこかで聞いたことのある声が、こちらを静かに威嚇する。
黒戦闘服は全員が覆面をしているが、明らかに知っている声が一人いる。
「羽佐間……なんとか君、読み通り、君が陛下と殿下を連れてきてくれたな。お手柄だよ。英雄・羽佐間誠十郎の甥だからと何かと優遇されてた君だからこその、素晴らしい判断だった。見事にこちらの見込み通りに動いてくれた」
「どうして、陛下と殿下を狙っている?」
「君は、今の八洲をどう思う? かつては七賢帝国と並び立ち、非賢帝国の盟主とまで言われた八洲大皇国が、今やGOSTO体制の手駒のひとつにされている。臣民は誇りと慎みを失い、政治家は腐敗し、官僚は無気力にGOSTOのいいなりになっている。そんな八洲の数少ない希望こそ、女皇陛下と皇太女殿下、そしてこの要塞艦わだつみだ。我々は陛下、殿下と共にわだつみを運用し、八洲を正道の国家に回帰させることを目指してい……」
「長いよ。もういい。要は、あんたこそが獲真主義者なんだな、警務隊の隊長さん」
「ああ、そうだ。驚いただろう? 俺は……」
「有利な状況で話しすぎるのはフラグだって、知らないのか?」
「フラグ?」
轟音と共に巨大な何かが、立ち塞がっていた警務隊員たちをなぎ倒す。勇名はそれが六式の拳であると理解する。すぐに後ろを向いて、二四式小銃を連射する。
不意を突かれた黒戦闘服たちは足を打たれて次々に倒れていく。螢も素早く状況を把握して、拳銃を撃っている。
ちらりと後ろを向くと、六式の拳は開かれ、掌が上向きになる。
「乗ってください」
勇名に促され、鉢巻きの男を始め、一行は六式の掌に乗る。
「永遠、急いでくれ」
勇名も掌に飛び乗る。後ろからの銃声に、また振り返り小銃を撃つ。
掌はすぐに動き始め、一行を第二港湾ブロックに招き入れる。
一行は甲板に降ろされ、近くにいた機甲神骸大隊の下士官に勇名が声をかける。
「女皇陛下が重体なんです。早くドクターを!」
「わかった」
下士官がすぐに通信で連絡を始めるのを見て、勇名は安心する。
「おい、羽佐間君、君……」
山下が崩れ落ちかけた勇名を支える。勇名は、肋骨と左手の他、右脇腹から血を流している。
「大丈夫です。ちょっとした骨折と、貫通した銃創ですから……」
勇名は、自分の意識が遠のいて行くことを感じる。
「おい、しっかりしろ! 羽佐間君……!」
勇名はそれなりの深傷を負いました。
戦闘続行出来るのでしょうか?




