表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/27

26 救出作戦

 エアリス先生が捕まったのか?どうしてそうなった。たかだか学校の一教師だろう。


「たくさんの人が捕まってるのか?」


 この問いの答えがYESならば……。


「いえ、いま捕まってるのは王家の四人とエアリス先生の計五人っスね」

《これはもう完全にアレでしょ。キミのせいでしょ》

「なんでそのメンツでエアリス先生なんだよ。もっと軍事のトップとか政治のトップとかいるだろ」

「覚えてるっスか?終戦の間際、エアリス先生の声が聞こえて光のラインが現れ触れた者は皆、死にかけの人まで含めて怪我や病気が治ったっていう……。

 魔法なのか奇跡なのかわからないっスけど、エアリス先生が関わってるのは間違いないっス」


 ……やっぱり完全に俺のせいじゃないか。エアリス先生を隠れ蓑にしてしまったから……。しかしエアリス先生の声でなければ信用がなくあれほどうまくいかなかっただろうし、あの時の最善を取った結果だ。しかたない、これからどうするか考えよう。


「つまりどういうことなんだ?ドルゲンローグはその魔法を恐れてエアリス先生を亡き者にしようとしてるってこと?」

「そうっスね。あと教会の方も悪魔だなんだと騒いでるみたいっス。あるいは拷問などして方法を吐かせ自分達の物にしようとしてるのかもしれないっスね」

「教会がね……。拷問は、法的に許されてるのか?」

「──すまないっスけど、おれっちはドルゲンローグの法律には詳しくないっスね。アレスきゅんは押し付けられた正義がそんなに大事なんスか?」


 フィルにしては珍しく、怒気を孕んだ声質だった。侵攻国の正義なんて知ったこっちゃないってか。……よく考えたら法律なんてどうでもいいか?やりたいようにやれば?でもアレスくんが犯罪者になっちゃうしな……。


《助けようよ。その力があるなら、僕はそうする》


 アレスくんがそう言うなら────助けに行くか!王族はついでだ。フィルの協力も必要だしな。


「アレス、助けに行くの?どうにかできるの?」

「なんだよ、ティーテ。ティーテは誰を助けたいんだ?」

「──う~ん、エアリス先生もだけど、でも国王さまが悪いわけでもないし、そもそも侵略戦争だし。代表として裁かれるようなことしてないよね」

「ししょー、私も助けたいです。陛下はともかく……エアリス先生が殺されちゃうのはイヤです」

「アレスきゅん、気持ちは固まったっスね?いつ決行するっスか?」


 勝手に気持ちを固めるな。あとイリス意外と国王に冷たい。まあいい、全員そのつもりなら都合がいい。でも行き当たりばったりじゃダメだ。作戦を考えないと。


「フィル、情報がる。今どこにいていつ護送される?協力者は何人だ?」

「!──場所を変えるっスよ。ちなみに、協力者は他にいないっス」


 ニヤニヤすんな。最悪じゃねーか。



 ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇



「ここが、今のおれっちの拠点っス。まあ適当に座ってください」


 フィルに連れられて来たのは年季の入った古ぼけた印象のアパートだった。外観はあまりキレイではなかったが室内は小綺麗にしてあった。寝室とダイニングが繋がっていて、キッチンが別部屋にある。広めの単身用……だが、どう見ても女性の部屋だ。部屋は白とピンクを基調として壁には可愛らしい模様が描かれている。床には落ち着いた赤色の絨毯が敷いてある。

 ダイニングにテーブルと椅子が二脚置いてあったので椅子に座る。ティーテとイリスは寝室にあったソファに座ってもらった。


「ここは……?さすがにお前の部屋じゃないんだろ?」 キョロキョロ

「そうっスね。この街に来てからおれっちのことを話したら共感してくれて。使っていいって言ってくれたんで一緒に住んでるっス」


 それはそれは……変わった感性を持つ女性がいたもんだ。どこまで話したか知らないがこんな奴を招き入れても面倒ごとしかないだろうに。


「アレス、あんまりマジマジと見たら失礼だよ」

「あ、あぁそうだな。じゃあさっそく話をするか」

「そうっスね。まずいつ移動するかっスけど……おそらく明日っスね」

「!……ゲホッゴホッ」


 飲もうとしたお茶を盛大に吐き出してしまった。息が苦しい。「大丈夫?」とティーテが駆け寄ってきてくれた。優しい、天使かな?


「ゲホッ、明日ぁ?今夜行くしかねーじゃねーか!」


 ティーテに背中をさすさすされながらなんとか返事をする。いくらなんでも明日は急すぎる。


「しかたないっスよ。ここはただの通過点っスから。到着は昨日だったんスすけど、むしろ1日空いたのは奇跡っスよ」


 ああ昨日到着で今日出発だったら会えてないのか。確かにここにのんびり停留する理由もないしな。じゃあ今夜中に何かを起こす必要があるのは間違いないってことだ。


「ならどっちかだな。足止めするか、今夜中に助けに行くか。まだ汽車に乗ったままか?」


 一応、ドルゲンローグの首都まで着いていくって方法もあるか。ただ首都に近づくにつれ警備は厚くなっていくだろうし、悪手に思える。


「いえ、別の汽車に乗るんで昨日汽車を降ろされて今日は砦の牢に入っていると思うっス」

「砦……?そんなんあったか?」

「ラカシンポートの王城みたいには目立たないっスけど、あるっスよ。昔はでかかったんスけど、前線でなくなってから少しずつ崩したみたいっスね」


 ここの砦は街の真ん中じゃなく東の端っこの方にあるらしい。俺たちは南門の近くから入ったから気づかなかったのかな。線路は森を迂回して東から入っていくように敷設されている。


「砦の地図はあるのか?」

「さすがに内部まではないっスね。この街の地図ならあるんでそれで検討するっスよ」 ガサガサ


 フィルが地図を広げたので東の方を見ると、門の近くに四角い枠がある。これが砦か。せいぜい豪邸くらいの大きさで、たしかに砦としては小さい。


「この区画が砦でしょうか。これだと内部がわからないですね」


 イリスが感想を述べるが、その通り、ただ枠で括ってあるだけで中は何も書いてない。地図上の位置が分かっただけだ。

 

「もう少し詳細にわからないか?」

「地図には載ってないんで、自分達で書き込むしかないっスね。多少は調べたんスけど」


 そういってフィルが地図に書き込み始める。ちょうど情報を集めてた時に声をかけたってことか。


「こんだけか?」


 ────これによると、敷地の真ん中に砦があって周りは何もないみたいだ。


「外から見るしかできなかったんスよ。あと、砦は五階建てくらいの大きさっス」

「敷地内の砦の周り、何もないのか?遮蔽物は?」

「ないっスね。なんで、敷地に入ると目立って即座にバレるっスね」


 敷地の周りは門の近くという事もあって人通りは多そうだが、敷地に入るだけでバレるのは厳しいな。情報を得るにも侵入するしかないなら、そのまま救出した方が楽そうだ。


「透明化して空から入ればいいんじゃない?」

「えっ?」


 ティーテ、余計なことを……! いや、でもそれしかないか。


「入るときはそれでいいか。問題は、どうやって出てくるかだ」


 俺だけで行っても要救助者が五人では……俺の結界で六人も移動できるか?結界を大きくすると狭い通路なんかでつっかかりそうだ。


「透明になって空を飛ぶ……?アレスきゅん──そんなパネェ事できるんスか?」

「出来らあっ!」

「……師匠、ここはふざける場面じゃないです────」

「アレス……」


 あっ、やめて、呆れないで。イリスちゃんにそんな目で見られたら頑張れなくなっちゃう。


「マジにそんな事ができるんなら、陽動はするっスよ。正門側で騒ぎを起こすんで、裏門から出てきたらいいっス」

「そうか、ならそうしよう。フィルとティーテは正門で陽動係だ。俺とイリスで潜入する」

「わかりました!師匠の足手まといにならないようがんばります!」

「じゃあどう陽動するか話し合ってくるっス」

「仕方ない……それでいっか」 ショボーン



 ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇



 そんなわけで砦近くの建物までやってきたわけだ。フィルには先に来て動向を注視してもらっていた。


「どうだ、フィル。変わった様子はあったか?」

「アレスきゅん。ないっスね。ちょっと変わってもらっていいスか?もう限界で」


 フィルは言うが早いかどこかへとんで行った。トイレだな。一人で見張りはきつかったか。悪いことをした。

 俺たちはその間のんびり観光してゆっくり食事して一休みしてから来たわけだ。今は夜の九時頃である。あまりに遅い時間だと人通りがなく目立ってしまい逃げづらくなる。


「空き家かな?フィルくんもよく見つけたよね」

「そうですね。良く考えたら救出した後隠れる場所も必要ですもんね。ここを使うんでしょうか?」


 いま俺たちがいるのは三階建ての建物の屋上である。この真下の部屋が空き家になっており一階・二階には人が住んでいるようだ。確かに都合のいい物件を見つけたと思う。フィルはリサーチ能力に長けているんだろう。

 夜の眺めもいい。街灯もあちらこちらに建ててあるし住宅から漏れ出る明かりもあって夜でも真っ暗にはならない。加えて今夜は月も大きくて綺麗だ。


「王族の事はフィルに任せるさ。エアリス先生なら自分でどうとでもできるだろうし」

「そうだね」


 ティーテと一緒に砦を眺めながら風に当たって呟く。この世界はいつも暑いけれど、夜になれば冷たい風が吹いて気持ちいい。


「ティーテは陽動の作戦、もう決まったのか?」


 俺はティーテに顔を向けて聞いてみる。フィルとティーテなら土系魔法で地面を隆起させて混乱させることだろう。これなら障害物に隠れることもできて都合がいいはずだ。


「うん、まあだいたい。でも捕まったらしょうがないし、ほどほどで逃げるよ」


 それで正しい。俺はまさか捕まらないだろうし、イリスも守れる。最悪でも救出に失敗するだけだ。


「師匠、こちらは何も決めていませんが、大丈夫でしょうか?」

「そうだな、イリス。砦の内部構造がわからないから行き当たりばったり作戦だ!」

「なるほど!」


 牢屋は地下にあるって相場が決まっているしな。こっから飛んで行って侵入したら地下を目指して鍵を開けたら騒ぎが起こるのを待ち、混乱に乗じて脱出だ。完璧なプラン。


《本当に大丈夫なのかい?》


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ