降臨した魔族軍 その2
すいません、遅くなりましたm(_ _)m
切りどころが見つからなくて、一回で収めたので長めです。急いで書いているので誤字脱字が多いかもしれません。 作者より
そんな中、魔族軍の中から男女2人が、空を飛ぶスキルを持つ魔族の背に乗りながら降りてくる。
高度が低くなり、魔神の傍に跳び下りる。
そして、ノブナガに虚空の目を向ける魔神に跪いた。
「お待たせ致しましたぁ、魔神さまぁ。《水蓮の魔王》ミリィ、参上しましたぁ」
「同じく《破拳の魔王》ダラン、参上ですデス」
魔族の王、ミリィとダラン。
人間界に“王”の天紋を持つ者が複数いるのと同じで、また魔界にも“魔王”が複数いるのだ。
ノブナガも予想はしていたが、まさかこの最悪の状況で現れるとは思ってもいなかった。
「ちょっとぉ、メアぁ。貴方自分の軍を放って抜け駆けしちゃダメでしょぉ」
「魔神様の御前ですデス。王らしくみっともない姿を晒さないでくださいクダサイ」
「えぇぇ、もう仕方ないなー。《狂鎚の魔王》メア、やってきたよー!魔神様!!」
「魔神様に失礼ですデス。魔神様、申し訳ございませんマセン」
「いい」
戦鎚をくるくると回すメアの態度に、気にした様子もなくノブナガの黒剣を投げ捨てる。
「ありがとー、魔神様!!」
「もうぉ、メアは相変わらずなんだからぁ」
「だってー、生きの良い人間を見つけちゃったんだから仕方ないじゃーん」
「生きの良い人間ですかデスカ?」
「青裁炎光・燃え輝く・熱線・焦げ滅す・貫くーー“サンシャイン・レーザー”!!」
魔王同士で話している間、ノブナガがこっそりと詠唱していた熱線が放たれる。
“魔法構築”によって威力を倍にした“サンシャイン・レーザー”が魔王たちに襲いかかるが、一瞬にして魔王たちの前に出て来た魔神が左手を突き出して受け止める。
流石に無傷でとまでいかず、ジリジリと魔神の左掌を溶かしていく。
「炎・劫火球・燃えろーー“フレイム・ボール”!6門!!」
魔神がノブナガの“サンシャイン・レーザー”を防いでいる間、ノブナガの反対側からカレンの炎球が放たれる。
虚空に現れた炎球が放物線を描いて2つずつ襲いかかる。
「私に任せてぇ。“リキッド・ピラー”ぁ」
詠唱もなく発動された水の防御魔法。
しかも、地面から噴き出した水柱は1つだけではなく、2つずつ分かれた炎球の前に立ちはだかるように3つだ。
詠唱もなく並列発動されたミリィの“リキッド・ピラー”が簡単に炎球を呑み込み、消滅させてしまった。
ちなみに、詠唱なしで魔法が使えたのは、“魔王”のスキル“魔力操作”の[+無詠唱]があるからである。
これは詠唱によって魔力を動かすのではなく、自分で操作している為だ。
あと、[+無詠唱]の派生スキルを持っているのは魔法スキルを持った者のみで、先天性スキルで“空間魔法”を持ったサランと“水魔法”を持ったミリィしか習得していない。
「こっちにも生きが良いのがいるじゃん!私と遊んでよ!!」
ミリィが“フレイム・ボール”を防いでいる間に、メアは上機嫌に戦鎚を振り回しながら跳び出した。
“魔力操作”による[+身体強化]を使い、重たい武器を持ちながら高く跳び上がる。
上段に構えた戦鎚を標的であるカレンに向ける。
そこに、それを黙って見ているわけがない者たちからの攻撃が迫る。
「行きなさいっ、“天下五剣”!!」
「うおっ!すごーい!!」
瓦礫に埋もれながらも無事だった“天下五剣”を操作し、空中にいるメアに向かって斬撃を振るう。
突然地面から飛び出して来た剣に驚きながらも、標的をすぐに変えて戦鎚を振るう。
パンッという大気が破裂するような一振りで2本弾き、振るった勢いのまま瞬転し更に2本弾く。
最後の1本だけは弾かれずに済んだが、突然割り込んで来たダランの拳で弾かれた。
その両腕には、いつの間にか一回り大きい手甲が付けられている。
「相手が人間とはいえ油断は大敵ですデス」
「あははは、ありがとー!!」
「“ストーン・バレット”!!」
エリーナたちを無視するように会話するダランたちに、エリーナが岩石を放つ。
未だに空中にいる2人に、これを躱す事も迎撃する事も出来ない。
だが、
「させないわぁ。“アイス・バリア”ぁ」
“水魔法”の派生スキルである[+氷魔法]を使い、ダランたちの前に防御魔法を展開。
雪の結晶の形をした障壁が、エリーナの岩石を確実に防いだ。
MPも使わず詠唱せずとも初級魔法が使える“ロードオベーロン”の発動速度は驚異だが、その威力は本家よりもやや劣る。
それに対し、自前のMPを消費するものの、詠唱せずとも劣らぬ威力で発動できる[+無詠唱]の発動速度は更に驚異である。
エリーナは岩石を防がれている間に、通力を目に流して“魔王”たちのステータスをざっと見た。
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ミリィ・ラルー 168歳
天紋:魔王 レベル:111
スキル:水魔法[+遅延発動][+並列発動][+氷魔法][+省略詠唱]・魔力操作[+身体強化][+無詠唱][+魔力放出][+魔力圧縮][+遠隔操作]・魔素再生
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ダラン・ガビリンス 146歳
天紋:魔王 レベル:115
スキル:魔力装甲[+部分装甲][+武具装甲]・魔力操作[+身体強化][+魔力放出][+魔力圧縮][+遠隔操作]・魔素再生
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メア・ナイゾウト 101歳
天紋:魔王 レベル:94
スキル:魔力操作[+身体強化][+無詠唱][+魔力放出][+魔力圧縮]・魔素再生
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レベルはサランほどではないが、2人が100超え。
しかも、その2人は先天性スキルを持っている。
厄介な事この上ない。
「“フレイム・ボール”ッ。“エレキ・ショック”!“フォトン・バレット”!!」
エリーナが“ロードオベーロン”で3つの初級魔法をミリィに向けて放つ。
ミリィは巨大な“リキッド・ピラー”を自身の前に発動させてすべての魔法を防ぐ。
それが収まると、今度はミリィが“アクア・スプラッシュ”をエリーナに放つ。
それを光の盾で凌ぎながら、また攻撃の初級魔法を放つ。
エリーナとミリィで魔法交戦が行われている中、地面に着地したメアが大砲のような勢いでアリンカに襲いかかる。
横から振るわれる戦鎚をアリンカは[+身体強化]と“剛力”を使いながら、剣で受け流す。
戦鎚が通り過ぎるのを見越し、カウンターで袈裟に斬り裂こうとする。
しかし、メアが戦鎚を振り抜いた勢いで放たれてくる左脚に気がつき、咄嗟に“金剛”を纏う。
腹部に命中した左脚は途轍もない豪脚でアリンカに襲いかかり、その身体をくの字に曲げながら吹き飛ばした。
少し空中に舞った紅い液体は、アリンカの口から吐き出された血だ。
吹き飛ばされ瓦礫に衝突するアリンカに、また大砲のような勢いで迫るメア。
だが、突然アリンカの前に赤と青の浮遊剣が割り込んで来て、左右に分かれて地面に突き刺さる。
「《炎剣・水剣・“絶界”》ッ」
血反吐を吐きながら、浮遊剣同士を起点に空間遮断を展開。
流石に、ただの体当たりでは空間遮断を突破する事は出来なかったようで、勢いよく空間の壁に激突するメア。
足を止めたメアのすぐ背後に、また1本の浮遊剣が突き刺さる。
「《土剣・“重潰”》!!」
「うおっ、なにこれっ!?」
剣を中心に重力が増強、メアは超重力の軛によって足を止められた。
そこに更に追い討ちをかけるアリンカ。
「行きなさいッ、ネオアルミラージ!!」
アリンカが“ストレージ”から取り出した筒状のアーティファクトーー“サモンズ・コア”で召喚した武装幻想獣、ネオアルミラージ。
召喚されると同時に、主人の指示に従いメアに急接近したネオアルミラージは、超重力外からユニットの“豪脚”の発動させながら後ろ蹴りを放った。
いくら強い[+身体強化]ができたとしても、巨体の蹴りをまともに受けて無事でいられるわけがない。
超重力の範囲から弾き出されるように吹き飛ばされ、地面を何回もバウンドして体勢を直して止まった。
体勢を立て直したメアは満面の笑みを浮かべながら立ち上がる。
「なかなか生きが良いね!さっきの奴程じゃないけど、すっごく楽しいよ!!」
ダメージはあったはずなのに、笑顔を浮かべながら言うメアに対し、アリンカは口の中の血を吐き捨てながら立ち上がるだけで何も言わない。
会話などする気がないアリンカは“天下五剣”を操作し、メアに斬りかかった。
アリンカがメアと交戦している一方、カレンは《破拳の魔王》であるダランと対峙していた。
最初は魔法で攻撃していたのだが、ダランの魔力で作った甲冑を身に纏う“魔力装甲”で凌ぎながら接近されたので、カレンも格闘術に切り変えて拳を振るっていた。
「テヤァッ!!」
炎を纏った拳を放つも、手甲でまともに受けず流される。
そこにダランのパンチがカレンに炸裂する。
[+身体強化]で強化された拳は常人であれば穿いているところだが、胴体も[+部分変化]させてていたお陰で大したダメージにはならなかった。
殴られた衝撃に耐えながらも、カレンは灼熱の拳を振るう。
しかし、やはり受け流されて、逆にカレンが殴られる。
今度は顔面を殴られ、意識が飛びそうになる。
動きを止めた一瞬に、ダランは身を捻って回し蹴りを放つ。
カレンの腹部にめり込んだダランの蹴りは、衝撃を余す事なくカレンに伝わり、カレンの身体が浮き上がる。
そこに更に拳の連打が放たれる。
何十発という鉄拳を受けたカレンは遥か上空へと殴り上げられた。
力なく上空へと昇るカレンから、もう興味が無いように視線を逸らすダラン。
上空に待機している魔族たちも、自身の王の力に歓声を上げていてカレンに見向きもしていない。
その最中、カレンに“セルブ・サテライト”の光が降り注ぐ。
それと同時に、回復の光とは違う光が放たれた。
魔族、それに地上にいる“魔王”たちもその光に導かれて上空を見上げた。
そこには、巨大な翼を広げ、下界を見下ろすように長い首を垂らした、紅い竜がいた。
閉じていた目が縦に開いたかと思うと、次の瞬間にはガバッと開かれた口から一閃の炎が放たれる。
カレンの“竜化”状態での[+破壊炎線]だ。
放たれた炎は人型の比ではなく、射線上にいた魔族の兵が一瞬にして消滅した。
なんの抵抗もなく、一瞬で。
魔族の兵たちを消滅させた[+破壊炎線]は止まる事なく、地上にいるダランへと降りかかる。
肉体の限界まで強化し、慌てて射線上から逃げる。
それを追うように首を動かすと、凝縮された炎も移動して追いかける。
もちろん、その際に誤って射線上に入ってしまった兵を消滅させながら。
なかなかダランに当たらないカレンは標的をダランから“魔王”全員に変え、ミリィやメアも巻き込む。
「“アクアブルー・エッジ”ぃ」
降ってくる[+破壊炎線]に対し、ミリィは水の上級魔法“アクアブルー・エッジ”を放つ。
凝縮された水が勢いよく飛び出し水刃となって[+破壊炎線]に襲いかかるが、それも超凝縮された炎を前に一瞬にして蒸発してしまう。
「ちょっとぉ、ドラゴンがいるなんて聞いてないわよぉ」
「ドラゴンだよ!楽しそう!!行ってくるっ!!」
「今は回避に集中してくださいクダサイ。死にますよマスヨ?」
“アクアブルー・エッジ”が効かないとわかると、すぐさま[+身体強化]を使って回避に専念するミリィ。
メアは楽しそうに[+破壊炎線]に突撃しようとするが、ダランが止まると同時に脇に抱え込んで消滅は間逃れた。
しばらく、回避し続けていると、ついに[+破壊炎線]が途絶えた。
「“エア・バレット”!“ブラック・バレット”!!」
ミリィたちが足を止める瞬間を見計らい、エリーナが風弾と黒球をミリィに放つ。
今度は通力を操って、“ロードオベーロン”の魔力を強化した風弾と黒球だ。
咄嗟に展開した“アイス・バリア”を1弾目の“エア・バレット”が破壊し、2弾目の“ブラック・バレット”がミリィに命中。
[+身体強化]をしていたとはいえ、さすがにノーダメージとはいかず、殴られたように飛ばされる。
「天上の風よ・激しく吹き荒れ・万物を切り裂け・黒鳥の羽ばたき・叫声は歪み・四肢は裂け・すべてを天空へと誘え!ーー“テンペスト・ブレイド”!!」
それと同時に、アリンカが詠唱し続けていた魔法が発動する。
ダランとメアを中心に巨大な竜巻を発生し、天を衝く。
竜巻の近くにいた魔族の兵たちは途轍もない風に吹き飛ばされ、その中心にいるダランたちには鋭い風が襲いかかる。
メアを庇うように覆い被さり、“魔力装甲”で全身を覆って耐えるダラン。
魔力の甲冑を削っていくが、また新たに覆い直す事で凌ぐ。
そして、なんのダメージを与えられないまま“テンペスト・ブレイド”の効果が切れる。
「サンキューね!ダランッ!!」
「どうもですデス。ただ、僕の方が年上なので敬意を払ってくださいクダサイ」
「シャア!行っくぞー!!」
目の前のアリンカたちを無視し、何やら気合いの声を上げるメア。
ダランはダランで戦場で指摘するには、おかしなタイミングで言う。
そこにアリンカの“天下五剣”が仕掛けるも、戦鎚と手甲で弾き飛ばされる。
負けじと浮遊剣を操作し、ダランとメアに襲いかかる。
エリーナの方も“ロードオベーロン”の魔法を駆使し、ミリィと魔法交戦している。
魔王たちは気づかない。
エリーナたちが念話で話し、作戦を立てていた事に。
「おう!?」
「あらぁ」
「?ーーッ!?まさかーー」
別々に戦闘していた魔王たちが交戦の最中に衝突し合い、驚いたような声を漏らす。
その中で1人、ダランだけは何かを察したような声を上げる。
そう、この衝突はエリーナたちに仕組まれたもの。
戦闘の最中、1箇所に集まるように誘導したのだ。
その理由は、
「カレンっ、今よ!!」
『了解ッス!燃え飛べッス!!』
アリンカの合図と同時に、上空に待機しているカレンの[+破壊炎線]が放たれる。
1箇所に固められた魔王たちは、衝突してしまったせいで回避が間に合わない。
いくら尋常じゃない[+身体強化]が出来るとしても、竜状態の[+破壊炎線]を前にしては耐え切れるはずもない。
メアだけは戦鎚を振りかぶって迎え撃ち気満々のようだが、他の2人は『ヤベェ』という顔で固まっている。
ついに、魔王たちを一閃の炎が吞み込もうとした瞬間、突然影が割り込んでくる。
それは、さっきまでノブナガの数々の魔法を受け止め続けていた魔神だった。
一瞬にて割り込んだ魔神は降ってくる[+破壊炎線]を剣で受け止め始める。
掲げるかのように上げられた剣はドラゴンの強力なブレスを受け止め、魔神の背後にいる魔王たちを逸れて地面を消滅させる。
一瞬で消滅させるブレスを容易く受け止めた事に、カレン自身とエリーナたちも驚きを隠せないように固まってしまう。
[+破壊炎線]が途絶えると、魔神はなんの予備動作なしに跳び上がった。
地面に蜘蛛の巣のようなクレーターを作り、途轍もない速度で上空へと昇った魔神は、炎竜であるカレンの前までやって来る。
カレンが内心「あれ?デジャブ?」と思うが、その結果はノブナガの時とは違うものとなる。
顔の正面までやってきた魔神は、驚いて固まっているカレンへ向けて剣を振り下ろす。
何とか[+竜鱗硬化]で鱗の強度を引き上げたが、その鱗をぶち砕いて斬り殴った。
強化した鱗のお陰で顔から真っ二つという事にはならなかったが、斬り殴られたところから鮮血が飛び散る。
さすがの竜も意識を失い、地面へと落下する。
落下している間に“竜化”が解かれて人型に戻ったお陰で、地上にいるエリーナでも受け止める事が出来た。
しかし、エリーナたちの間近に着地した魔神が剣を振るった剣圧でエリーナたちを吹き飛ばしてしまった。
瓦礫の山に背中から衝突し、アリンカは意識を失う。
エリーナはスフィーリアの[+鋼鉄衣]の防御力もあって、ブラックアウトするまでには至らなかった。
それでも、激痛で動けないのは変わらないようだが。
その光景を目にしたノブナガは、頭の中で何かがぷつんっと千切れる音を耳にした。
そこからのノブナガの顔は、見ていられないほど無の表情になる。
「“限界突破”」
ぼそりと呟かれた言葉は、ノブナガの限界を吹き飛ばすスキル。
制限時間が過ぎると動けなくなるデメリットがあるので使って来なかった、切り札の1つを切ったのだ。
残り少ないMPが嘘のように湧き上がり、天の衝くように魔力の柱が噴き出した。
その気配に、魔族の兵たちは疎か魔王たち、それに魔神も身体を向けて振り向いた。
誰かの生唾を飲む音が、鮮明に聞こえてくるほどの静寂。
そんな中、ノブナガは周囲の事など知った事ではないとでも言うように動き出す。
瞬間、ノブナガの周囲に100体の[+多重分身]体が召喚させる。
突然現れたノブナガの分身体に目を剥く魔族たちだが、そんな暇はないという事を次の瞬間に思い知る。
100体の分身体の内、50体が“空踏”と[+縮地移動]を使って上空の兵たちを蹂躙する。
残りの50体は15体が各魔王に5体ずつ襲いかかり、残りは魔神へと突進する。
5体が“アラビオン”を弓型へと変形させて装着し、遠距離から超電磁砲を魔神へ向けて放つ。
5方向から放たれる光速を超えた豪杭が襲って来るが、特に驚いた様子を見せずにその場で瞬転する魔神。
それだけで、数トンあるはずの杭が弾き返され、“アラビオン”を装備している分身体たちに命中、消滅した。
しかし、そんな程度では攻めの手は緩まない。
瞬転し終えた魔神に、また5方向から分身体5体が急接近する。
その手には、すでに発動済みの“エレメント・ソード”を纏った黒剣が握られている。
大気すら斬られたとわからないほどの剣速で、五帝の剣が振るわれる。
それに対し、魔神は剣の刀身と柄、左の腕と手、足裏ですべて受け止めた。
この時、魔神の身体から見覚えのある光が漏れ出したのだが、頭に血が上っているノブナガは気づく事が出来なかった。
魔力が勢いよく放出され、受け止められていた五帝の剣が弾け、体勢を崩したところに魔神がまた瞬転して分身体たちを斬り捨てた。
斬られた分身体たちは一撃でHPを持っていかれ、消滅する。
その直後、これまた5方向から魔力の高まりを感じ取った魔神。
5つ共尋常じゃない魔力に、魔神はゆっくりとした動作で上を見上げた。
すると、そこには大気を足場にしながら、召喚されてからずっと詠唱し続けていた分身体たちが魔神を囲むような配置でいるのだ。
虚空の目を向けた時には、詠唱は完成していた。
「「「「「ーー“デス・ダークネス”ッ!!」」」」」
5体が一斉に唱えていたのは、触れたものを消滅させる殲滅の黒球。
今回は“魔法構築”を使い、5体が発動した黒球を合体させる。
1つでも10メートル以上ある黒球は、5つが合体する事で100メートル近くまで膨れ上がる。
5体が発動した“デス・ダークネス”は、まるで某バトル漫画の元気を集めた玉のように放たれる。
魔族軍の3分の1を軽く呑み込んで消滅させながら落とされる“デス・ダークネス”。
そんな超巨大黒球に対し、なんと魔神は左手で受け止め始めた。
すでに消滅させようとではなく、押し潰そうと迫って来る“デス・ダークネス”を突き上げた左手で完全に受け止めいるのだ。
魔神の足元が異様に陥没しているのを見ると、その超巨大黒球がどれほどの迫力なのかが見て取れるだろう。
よく見ると、魔神の左手から光が漏れ出していて、“デス・ダークネス”に直接触れる事なく受け止めているようだ。
その時点で気づくべきだったのだが、超巨球を受け止めている光景に視線が行っていて見逃してしまった。
“デス・ダークネス”の効果が切れ、受け止めていた超巨大黒球が消滅する。
それを見越し、ノブナガ本人が迫る。
「ザンっ!」
(うんっ!)
[+浮遊剣]の状態で飛ばされ、遅くなって戻ってきたザンがノブナガの右手に再構築する。
それと同時に、今までMP消費とそれ以上の威力が必要なかったから使ってこなかった“属性付与”を詠唱する。
「我が剣に宿れ元素っ。その刃は世界の始まりを告げし原初の剣!ーー“スピリッツ・ソード”!!」
直後、聖剣に膨大な魔力が宿る。
赤、青、碧、緑、黄、茶、白、黒。
すべての色が一振りの聖剣に凝縮し、心臓の鼓動のように魔力が脈立つ。
“エレメント・ソード”が5属性であれば、“スピリッツ・ソード”は8つすべての属性が1つに凝縮された魔法だ。
「ハァァァァァァァァアアアアアアアアア!!!!」
原初の剣を両手で握り、魔神へと振るう。
ただ上段からの振り下ろしのはずなのに、離れている魔王たちでさえ吹き飛ばされそうになるほどの余波が襲いかかる。
8つの光が周囲の世界を染め、魔族たちの目を覆う。
光が止み、激しい光にやられた目が回復すると、その光景に声も上げられず目を剥く。
何故なら、全員の視線の先にはーー
ーー聖剣を剣で受け止めている魔神がいたから。
「ーーーー」
「……どういう事だ」
至近距離で見合う、ノブナガと魔神。
魔神は一切変わらない顔で見ているが、ノブナガは信じられないものを見るように呟いた。
自分の全身全霊の受け止められたから。
ーーではない。
魔神が受け止める最中、魔神の身体から光が漏れ出したからだ。
ノブナガと、ザンと、エリーナと同じ、通力の光が。
「なんで……魔族が通力なんて…………」
上った血が治り、放心するような呟きで呟くノブナガ。
虚無だった魔神の目が揺らぐ。
空いた手を伸ばし、ザンガルドに触れる。
掴むのではなく、まるで撫でるかのような手付き。
(ーーえ………………ハバキ様……?)
それに気を取りれたノブナガは、魔神の前蹴りに吹き飛ばされる。
ザンガルドを手放し、瓦礫の山に衝突する。
ザンガルドも通力を切らして“剣化”が解けて人型になる。
しばらく、ザンに目を向けていた魔神だったが、なんの表情の変化もなく視線を逸らした。
「え、“エア……バレット”……っ」
それはエリーナが魔神に向けて魔法を放ったからだ。
どうにか身体を動かせる程には回復したエリーナが、ノブナガから視線を逸らすべく放ったのだ。
もちろん、ダメージなどなく、標的がエリーナになっただけ。
魔神の足が徐に動き出す。
“ロードオベーロン”を支えに上体を起こすので精一杯なエリーナに向かって歩を進める。
「や……やめ、ろ…………」
ノブナガが起き上がろうとするが、すでに満身創痍な上に全身がボロボロのせいで立ち上がる事も出来ない。
ザンは意識はあるが、何かに気づいたように魔神を眺めていて動く気配を見せない。
しかし、そこで意外な者が魔神の前に立ちはだかった。
「待って」
それは“衣化”を解いて人型に戻ったスフィだった。
言葉を強調するかのように両腕を広げ、エリーナの前に立つ。
「す、スフィ、さん……」
やめろと手を伸ばすエリーナだったが、スフィはそれを無視して魔神を見つめ続ける。
「殺してはダメ」
いつものように短い言葉。
しかし、スフィには珍しく、その言葉には強い意志のようなものが感じられる。
「あなたはそんな人ではない」
続けて言葉を紡ぐスフィ。
初対面のはずなのに知ったような風に言っている事に疑問を覚えるが、それよりも魔神の足がスフィの前で完全に止まっている事が気になる。
「スフィーリア、か」
「(コクリ)あなたはこんな事望んでいない」
ザンと同じで名前を言い当てられるが、あっさりと肯定したスフィは確信めいた事を言う。
ノブナガがどう言う事だと考えている近くで、ザンが「やっぱり……」と呟く。
スフィと魔神はしばらく見つめ合う。
そして、魔神の手が伸び、その左手をスフィの頭の上に置いた。
すると、左手を動かして撫で始めた。
まるで、子供の頭を撫でるように、優しく。
その光景に、ノブナガも魔族たちも目を剥く。
だが、その光景も長くは続かない。
撫でていた手を突然引っ込めると、撫でていた手でスフィを殴った。
デフォルト顔を殴られ、地面に倒れ込むスフィ。
その急な光景に、更に驚くの束の間、
「ヲヲオオオオォォォォォォォォオオオオオオ!!!!」
咆哮のように叫び始めた魔神は衝動に駆られたように剣を振り上げる。
その矛先はエリーナに向けられる。
その瞬間、ノブナガが見る光景がクリアになってゆっくりになる。
ーーエリーナさんが殺される。
そう認識した瞬間、自分でも驚く程、感情が溢れ出した。
「やめろろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」
はっきりそう言えたのか怪しい。
しかし、その感情が剥き出てきたのは間違いない。
瞬間、ノブナガの身体から通力のとは違う光が溢れ出した。
それは、吸血界で人間界に戻ろうした時に溢れ出ていたものと同じ、金色の光だ。
気がつけば、ノブナガは魔神の前に立っていた。
振り下ろされていた剣を左手で受け止め、真正面から魔神を睨んでいた。
対する魔神は、虚無だった目が揺らいでいた。
ザンガルドの名前を呟いた時のような一瞬の揺らぎではなく、見るからに揺らいでいたのだ。
しかし、今のノブナガには至極どうでもいい事だった。
右拳を握りしめ、金色の光を纏った拳で感情任せにぶん殴った。
顔面にめり込み、後方へと吹き飛ばす。
吹き飛ばされた方向には、見物に回っていた魔王たちがいる。
「あぎゃ!」
「ちょっとぉ、重いわよぉ〜」
「早く退いてくださいクダサイ」
吹き飛ばされた魔神は見事に魔王たちに衝突し、ドミノ倒しのように倒れ込んだ。
魔王3人が戦場とは思えない緩い会話する中、あり得ない声が聞こえる。
「くっ」
それは呻き声。
間違いなく、痛みを堪える声だった。
その声が、今まで一切のダメージを負っていなかった魔神から漏れ出したのだ。
人が神を傷つけられない事を知っている。
にも関わらず、魔神はノブナガの攻撃でダメージを負ったのだ。
驚愕の視線がノブナガに集まる。
「ーーぅぉ」
神にダメージを与えた張本人は、金色の光を出した事でMPがごっそりと持っていかれ、“限界突破”の時間切れもあって倒れ込んだ。
ノブナガが出した分身体も音もなく消滅してしまう。
これで、もう誰も立てない状態になってしまった。
ようやく、起き上がる事が出来た魔王たちが勝ち誇ったように言う。
「これで抗う者はいませんわぁ。魔神様ぁ」
「これからこの世界を破壊して回るんだよね〜」
「あなたはいつもやり過ぎなので、自重してくださいクダサイ」
上空に待機していた魔族の兵たちも地上に降り立つ。
1万いた兵もさっきの戦闘で7千程まで削れてしまったが、魔神の圧倒的な力の前には関係のない事。
魔王たちが進軍の準備をしようと隊列を確認する中、魔神はずっとノブナガを見つめている。
ノブナガも見られている事に気づき、ボロボロの肉体を懸命に動かして魔神へと視線を向ける。
見つめ合う中、魔神はノブナガに向けて一歩踏み出した。
トドメを刺すつもりだったのか、はたまた違う目的があったのかもしれない。
だが、次の2歩目は天から降って来た声によって止められた。
「悪いけど、君たちにこれ以上好き勝手はさせないよ」
その場にいる全員が、すでに日食の終わった太陽を見上げる。
すると、太陽の日を背に誰かが降りて来ている事に気づく。
翼があるわけでもないのに、なぜかゆっくりと着地する。
全員の視線を集めながら着地したのは、20代程の青年だった。
どこにでもいそうな顔の人間族の青年。
しかし、纏う雰囲気は人の身が纏うものとは違う。
「“神域”」
直後、白銀の光が魔神や魔王たち、それに魔族軍を囲むように輝き始めた。
その光は徐々に数を増していき、中の様子を少しずつ見えなくしていく。
全員が突然現れた白銀の光に混乱する中、魔神だけは拳を握り締めて光に向かって拳を放つ。
しかし、魔神の拳でも壊す事は出来なかった。
「今の君には壊さないよ。これでも神である僕の領域だからね。今は大人しくしててよ」
にっこりと笑いながら青年がそう言うと、ついに中が見えなくなってしまった。
ノブナガたちの前に、巨大な白銀のドームが出来たように思わせる。
「さっ、これでしばらくは大丈夫かな」
「あ、あなたは……?」
突然現れた青年に、ノブナガは驚いたように呟く。
あの魔神をあっさりと捕縛したのだから、驚かない方がおかしい。
しかし、そんな呟きを青年は特に大した事はしていないように手を振ると、思い出しような声をあげる。
「あ、そう言えば、僕まだ名乗っていなかったね。ごめんね」
そう前置きし、青年はこう言った。
「僕はミウ。この人間界で“人神”をさせて貰ってるんだ。よろしくね、ノブナガ・ヒグラ」




