続・戦う少女たち その1
時は遡り、ノブナガが一本橋で騎士たちを引き付けている一方、エリーナたちは帝城への侵入を完了していた。
隠し通路からエリーナの部屋に出たエリーナたちはアリンカがスキルで部屋の周囲を探る。
「どう?アリちゃん」
「下の階はドタバタしてるけど、この階は静かね」
「3階は家族の部屋しかないんです。使用人の人がたまに来ますが、それ以外は誰も来ないんです」
「なるほどッス。それにしても、エリーナさんの部屋、荷物少なくないッスか?」
「ここを出る時に、だいたいの物は持ち出したからです。必要のない小物とかアクセサリーだけ置いて行きましたけど」
カレンに言われ、改めてエリーナの部屋を眺めるザンとアリンカ。
小物とかアクセサリーがあったので、あまり荷物が少ないというイメージはなかったのだが、よく見るとカバンやら服やらといった物が見当たらない。
殺風景とは言わないが、どこか住んでいる部屋としての印象が欠けていると思ってしまう。
それもそのはずで、旅に必要な服や道具を持ち出したのだから無くて当たり前である。
ノブナガと出会った時に、すべての荷物を買い直したので実物はないが……
「それよりどうする?先に王様の部屋に行ってみる?」
「そう、ですね……部屋にいるでしょうか?」
「ちょっと待ってね。ーーーーんー、この階に私たち以外の気配はないみたい」
「上の階は?」
「上?んーー、上も、いないわね。気配を消すスキルを使ってるなら別だけど、“王”にそんなスキルなかったしね」
「じゃあ、そのエリーナさんのパピィはどこにいるんスか?」
ちょっと待って、カレン。カレンってお父さんの事、パピィって言うの?なんでチャイナ服ヒロインと同じ呼び方なの?知ってる?ねぇ、知ってる?とツッコミたかったザンだったが、今はそんな空気じゃないので自重した。
とりあえず、後で聞こうと心の中で誓ったザンは視線をエリーナに向ける。
「……多分、謁見の間だと思います」
「謁見の間?あそこって、召喚した人を出迎える部屋よね?なんで、そこに?」
「多分そこに、“魔王”もいると思うから」
「……やっぱり、戦いは避けられないんスね。ノブナガさんを待つッスか?」
“魔王”は最終的に戦わなければならない相手だ。
だが、急いで戦いに行く必要だってない。
引き付けているノブナガの到着を待ってから挑みに行くのだって手だ。
ここまで無事でいる現王に今更危害を加えるとも考えられないわけだし。
「ーーいえ、行きましょう。これは、私がケジメをつけなくてはいけない事ですから」
「わたしもエリちゃんに賛成かなぁ。ノブちゃんに頼ってもいいけど、それだとわたしがスッキリしないし」
「私たちを蚊帳の外にして、1人で倒しちゃいそうよね」
「自分もそう思うッス!」
自分たちの目的。
それすら他人任せにするほど、エリーナたちの立てた目標は小さいものではない。
最後ぐらい、自分たちの手で終わらせたいものだ。
その決意が一致し、顔を見合わせて強く頷き合う。
髪の色を元に戻した一行は、エリーナの部屋を出て謁見の間へ。
アリンカを先頭に、カレン、スフィ、エリーナ、そしてザンの順に並んで進む。
“気配遮断”のアーティファクトを起動させながら、“気配探知”と“魔力探知”を使って周囲を警戒しながら進む。
いつどこに気配や魔力を隠蔽できる者が現れるかわからない以上、ゆっくりとした進みになるのは仕方のない事だろう。
そうして、物陰に隠れながら進む事、十数分。
階段で2階に降りてきた正面。
2メートルは余裕である壮大な扉を前に、一行はたどり着いた。
某RPGゲームの魔王戦のBGMがザンの頭の中で静かに流れる。
そんな中、覚悟を決めたエリーナが扉に手を伸ばす。
それほど力を入れていないにも関わらず、如何にも重そうな扉はゴゴッ、ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッという音を立てながら開かれた。
片方しか押していないのに、なぜ両方開くのか……
ザンとカレンの頭にそんな疑問が浮かび上がるが、それを考えるよりも先に声が掛けられた。
「よくぞ来た、アブリーの娘よ。我が魔界の王の中の王、“魔王”サランである」
正面を見れば、派手な塗装が施された椅子に腰掛け、足を組み肘をついている手の上で顔を支えているサランがいた。
その傍にはネルラが控えて、隣の椅子には虚ろな目でエリーナたちを見る現帝王アブリー・アンディエル、エリーナのお父さんが座っている。
エリーナの視線がアブリーに吸い寄せられるが、それを引き剥がしてサランに戻した。
「あなたと言葉を交わす事はもうありません。あなたを倒して、お父様を助け出します!」
「強気だな、アブリーの娘よ。あの小僧の姿は見えないようだが、貴様らに我が討てるか?」
「ーー倒してみせます!スフィさん!!」
「わかった」
無言で付いてきていたスフィが光の粒子へ分解し、エリーナに纏われて再構築。
純白の衣ーースフィーリアがエリーナに纏われ靡かせる。
それと同時に、エリーナは目を通力を集中させてサランを視る。
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サラン・ナドレア 147歳
天紋:魔王 レベル:126
スキル:魔眼[+遠見][+暗視][+支配][+炯眼][+石呪][+千里眼][+未来視]・空間魔法・魔力操作[+身体強化][+無詠唱][+魔力放出][+魔力圧縮][+遠隔操作]・魔素再生
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(レベル100超え……でも、怯む理由にはなりません)
「みなさん、行きましょう!」
「オッケー」
「はいッス!」
「わかったわ」
それぞれの武器、エリーナが“ロードオベーロン”、ザンが復活した魔剣を、アリンカが“咫耶”を構える。
カレンは両手足と翼を[+部分変化]し、“仙人”の天紋を得たノブナガ直伝の“格闘術”の構えを取る。
それを見たサランはフッと笑うと、椅子から立ち上がって段を降りる。
追尾してネルラが付いて来ようとするが、それを手を挙げて止めた。
少し驚いた顔をするが、ノブナガがいない以上自分は必要ないと完結させ控える事にした。
段を降り、謁見の間を囲むように空間遮断の結界を覆う。
これで、ここで起こった事が外部に漏れる事はない。
万全の準備が整ったサランは、またフッと笑うと両手を広げて宣言する。
「ふんっ、よかろう。思う存分かかって来い!」
瞬間、問答無用で襲いかかる。
「一気に行くわよっ、“天下五剣”!!」
“ストレージ”から取り出した5本の浮遊剣が、サランを貫かんと飛び出す。
「そのような攻撃」
右手を翳し、空間遮断障壁“絶界”を発動。
見えない壁が“天下五剣”の進行を妨害する。
そんな事はわかっていたとばかり跳び出すザン。
魔剣の“身体強化”、それと通力強化により空間遮断障壁を回り込んで迫る。
魔剣に通力を載せ、鋭い斬撃を放つ。
“魔王”のスキル“魔力操作”によって[+身体強化]を発動したサランは、後ろに跳んで回避。
着地と同時に空間爆砕ーー“震空”で吹き飛ばそうとする。
が、それが使われる前に、
「燃え飛べッス!!」
前に突き出されたカレンの両手から一閃の炎が放たれる。
すべてを焼き潰す[+破壊炎線]が回避直後のサランに襲いかかる。
瞬間的に“絶界”で防ぐが、[+破壊炎線]は空間的な障壁すら突破する。
慌てた様子で“絶界”を多重に発動してどうにか防ぐ。
「“フレイム・ボール”っ。“フォトン・バレット”!」
そこに“ロードオベーロン”からの追撃。
劫火球と光の散弾が多重の“絶界”を回避し、サランへ着弾。
魔力の直接操作ゆえに、[+身体強化]に使うMPを自在に変える事ができる。
それにより、ステータス2倍を増大させたり減少させたりできるのだ。
それを使い、サランは5倍まで引き上げる。
急激に上がったMNDで炎球と光の散弾を耐え凌ぐ。
完全に防いだわけではないが、HPがちょっと削れただけで終わった。
「光よ・一点に照らすは・闇を払うーー“フラッシュ”!8門!!」
それだけでは終わらない。
目の前にいるザンがフル詠唱で唱えた“フラッシュ”。
頭上に浮かぶ8つの光に誘われて目を向ければ、そこには光と一緒に浮かぶ大きなアーティファクトがあった。
浮遊砲型光収束アーティファクト“ルナイト”だ。
8つの光が“ルナイト”を通して収束し、標的となるサランへと降り注いだ。
着弾は一瞬。
5倍にしたMNDの防御も貫き、サランを吹き飛ばした。
一撃の光弾が着弾と同時に弾け、複数の衝撃がサランを襲う。
「くっ、やりおる」
飛ばされたサランは空中で体勢を立て直し、無事に着地する。
が、次の瞬間、背中に見えない壁に衝突した事に固まる。
一瞬の思考、その一瞬で左右に赤と緑の剣が突き刺さっている事に気がつくサラン。
それと同時に、また頭上に浮かぶ砲が目に入る。
本能がけたたましい危険信号を鳴らす。
それに従う前に、頭上に浮かぶ砲ーー浮遊砲型酸素圧縮アーティファクト“ブロイズン”から収束された酸素が放たれた。
一切ダメージのない空気砲だが、サランが足を止めるには十分な衝撃。
「《五剣・“絶界”》!!」
瞬間、いつの間にかサランを囲むように突き刺さっていた4本と頭上に浮かぶ1本が起点となって空間遮断を作り上げる。
密封された空間に、途轍もない濃度の酸素が蔓延する。
そこにカレンが近づき、空間遮断の壁に手をついた。
「火・焔・灯すーー“ファイア”!!」
密封された空間に、小さな火種が灯る。
刹那、途轍もない爆発が密封された空間内に起こる。
「うわああ!!」
一瞬保たれた結界だが、爆発に耐える事ができずに破られた。
手をついていたカレンは至近距離から受けた爆風によって吹き飛ばされる。
ザンも爆風に見舞われながらも、地面に魔剣を刺して必死に耐える。
爆発が止み、煙が少しずつ晴れる。
完全に煙が晴れる前に、
「とんでもない爆発だ。我が空間の結界を張っていなければ、この部屋も崩壊しているところだぞ」
「ッ!?」
晴れた煙の中から、服に少し煤が付いたサランが立っていた。
特に大きなダメージを負った様には見えず、しっかりと2本の足で立っている。
「“絶界”を多重に展開しなければまともに受けていたところよ。なかなかの攻撃と連携だった」
そうサランが呟いている間、ザンたちは武器を構える。
相手の隙をついた完璧な超火力だったのだ。
それで仕留められなかった事が痛いと感じてしまう。
「これは我も少々本気で挑まねばならぬようだ」
直後、サランのすぐ横に空間の穴ーー“開空”が開かれる。
その穴に手を伸ばし、空間の奥にあるものを取り出した。
それは目を奪われてしまうほど美しい槍。
蒼く長い柄と空のような青い刀身が神々しくも感じるその槍はーー
「ッ、ラミス!!」
槍を見るなり、そうザンが叫ぶ。
そう、その槍こそが、数千年前にザンと一緒に人間界に来た4人の精霊の1人、
ーー聖槍、ラミスピア
「東のダンジョンに眠っていた精霊よ。さあ、かかって来い」
そう言い放ち、ラミスピアを構えるサラン。
そう構えただけで、今までとは比べものにならない威圧がサランから放たれる。
まるで見えない壁に押し潰されるかのような圧力。
誰かの唾を飲む音が鮮明に聞こえた。
それでも、それでもと。
エリーナたちは己が武器を構える。
負けるわけにはいかないから。
目的を果たす為に、通らなくてはいけない道だから。
更なる決意で固まった目で、サランを射抜く。
そして、第2ラウンドが始まった。
また入りませんでした……
3まではいかない事を祈ります……(´∀`)




