エピソード6:剣士
「ここで会ったが100年目! アレスト、俺と戦え!!!!」
「1週間振りじゃなかったっけ、ルベルくん」
「そんなこたぁ、どうでもいいんだよ!! おら、早くやるぞ!」
「僕は君だけの人間じゃないんだけどなぁ。まあ、いいよ」
俺がそいつと旅先の修練場で戦ったのは旅を始めて8ヶ月ちょっと経ったときのころだった。正直、他の奴らとは仲良くしてるくせに俺にはあんまり話しかけてこなくて、話そうと近寄りゃあ、用事があるからと逃げちまう。
死ぬほど悔しくて、ようやく会えたその日、俺はアレストに決闘を申し込んだ。
「ちょっと、ルベル?! アレストさんに何させるつもり?!」
「……アレストならルベルとでも戦えるだろう」
「俺様もサラと同じだわ。心配する必要ねぇと思うぜ、サライス」
「僕、マリナと買い物行ってくるね」
「ちょっと、いや、アレストさんがバカ強いのはボクも知ってるけど、でも、戦闘狂とはダメでしょ!」
「「「多分、大丈夫」」」
「嫌な信頼だなぁ」
側にはサライスとサラとコゥル、ユーグがいた。サライスは俺を止めようとしたけど、サラとコゥルはそんなサライスの肩に手を置いて、サライスを止める。ユーグは興味なさげだった。
「俺が勝ったらテメェの戦闘の仕方教えろ」
「そんなことでいいんだ」
「それ以外に俺が何欲しがると思ってんだ」
「そうだった、君達はそういう人達だったね」
俺の返答にアレストは呆れた様子で頭を押さえた。よくよく考えりゃあ、アレストが「君達」って俺達のことを纏めて言ってた時点で俺がおかしいことに気付いてりゃあ、良かったかもしれねぇ。
「テメェは俺に勝ったらどうすんだよ」
「うーん、そうだなぁ。僕の言うことに一つだけ従ってくれる?」
「おう、やってやらぁ!」
少し考えた後、アレストはニコリと俺に笑いかけた。自分が勝つことが分かっているかのような余裕のある笑顔で死ぬほど、ムカついた。
まあ、それで結局、俺とアレストは決闘をした。俺は親父から貰った剣で。アレストは自前らしき剣で。俺達は勇者一行の奴らでしか分からないくらいの速度で剣をぶつけ合い、戦い合う。
「──流石、勇者一行の剣士殿。レッドのやり方、全部吸収したな、これ」
「? 何言ってんだ、そんなの当然だろ。俺ぁ、剣士だぞ」
余裕綽々で俺の剣を流すアレストの言葉に何言ってんだ、と思いながら首を傾げた。
剣士なら前の勇者一行の剣士レッドのやり方くらい、吸収するだろ。
「うーん、その謎理論、流石、レッドの息子くん」
「俺の誇りだからな、親父は!」
アレストの言葉に何の違和感もそのときは持たなかった。レッドの息子が俺だって俺は知っていたから。俺と親父の仲間達、各国の要人達は知っていたから。
だから偶に目の前にいるアレストが知っているものだと、俺は思ってしまっていた。
彼はその時点ではただの強い、怪しい不審者でしかなかったのに。
「じゃあ、僕の奥義、少しだけ見せるからこれも糧にできる?」
「──――──っ」
アレストが俺から一旦離れて、そう言った瞬間、雰囲気が変わった。顔は笑っていて、いつもと変わらないなに何かが違った。
剣に炎が纏う。緊張の糸が張り詰められる。切先は俺に向かっている。両目は真っ直ぐに俺のことを見ていて、目を離せなかった。
「リンク」
「ぁがっ!!」
刹那のことだった。目を離せなくなっていた俺が気付いた瞬間にアレストは俺の懐に入り込んでいて、剣の柄で俺の腹に一撃を喰らわす。俺の身体は防御姿勢も取れず、吹き飛んだ。
「あ、炎は囮か! なるほど! リンクで痛覚に直接痛みを、って、大丈夫、ルベル?!」
「威圧をしながら隙を見て一撃か」
「思ってたより力技じゃねぇかよ」
「サラとコゥルも俺の心配してくんねぇ?! っつぅ、いてぇ……」
「ごめん、力入れすぎたかなぁ」
吹き飛ばされ、腹を押さえながら地面に打ち付けられた腰を摩った。今考えても魔王らしくないゴリ押しに負けたと思う。単純な力負けをした。サラとコゥルに文句を言う資格はなかったが、文句をぶつけた。
滅茶苦茶悔しかった。
アレストは悔しがりながら3人にツッコむ俺に手を伸ばしてくれた。
「今回は僕の勝ち、だね。じゃあ、僕からのお願いだ」
「何だよ」
つい数秒前まで笑いながら戦って、俺を吹き飛ばしたアレストはいつもと変わらないように笑う。
俺はそんなアレストの手を取って立ち上がっていた。
「しっかり、お墓参り、するんだよ」
そう言ったアレストの顔が手の掛かる子どもを見るかのような顔をしていた。
思えば魔王アルレストが、アレストが親父の墓を知っていること自体がおかしいのだとアレストがアルレストだと正体を明かしたときに気づけたよなと思う。




