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エピソード2:聖女

 彼との出会いは私達の運命を定められたものから、正反対のものへと変えてしまいました。


「おや、勇者御一行の聖女様。こんなところで会うなんて奇遇な」

「本当に奇遇ですね。あなたは確か、食事処で会った……」

「よくこんな一般人のことを覚えていますね」

「あれだけ意味深なことを最後で言われたら覚えていますよ、流石に」

「ははっ、それはそうだ」


 旅を始めて2ヶ月後。聖女である私は何故か、宗教国家に誘拐されていました。きっと聖女という私の名声が欲しかったのでしょう。

 そこで私は彼に会いました。


「そういえば、あなたのお名前は? 私の名前だけ知られているなんて不平等ですよ」

「それは確かに。では名乗りましょう。私の名前はアレスト。アレスト・オーナ。よろしくお願いします、マリナ・ユリア様」

「やっぱり私の名前をあなた、知っているのね、アレストさん」

「ええ、それは勿論。有名な勇者御一行の聖女様となればその名は知っていて然るべきかと。まあ、今回、あなたはその立場が原因で誘拐されたと思いますが」


 よく回る口でペラペラと喋りながら、彼は名を名乗りました。よくよく考えれば彼の名乗った名は魔王としての名ではありませんでした。ですが、魔王としての名とあまりにも似ていました。

 あの名前は彼の真の名前だったのではないか、と今になって私は思うのです。


「多分、そうでしょうね。そういえばあなたはどうして捕まっているのですか?」

「…………おそらく、人違いかと」

「あなた、もしかしてとっても不運な方?」

「そうですね、昔の仲間からもよく言われていました」


 困ったように笑うアレスト様は捕らえられているのに、楽しそうでした。


「マリナ様は脱出の手立てはありますか」

「ないわ。勇者様達が来るんじゃないかしら」

「信頼されているのですね」

「だって、私達は仲間だもの。仲間ってそういうものでしょう?」

「ははっ、流石、彼(か)のアイリ嬢の後継だ」

「ぇ、?」


 彼が発した、あまりにも聞き覚えのある名前に目を見開きました。その名前は、その呼び方は数人しか知らないはずで、一般人は知らないはずでした。


 先代聖女アリサ・アイリ・アイリスの親しい人しか知らない呼び方を。


「ではともに逃げ出すとしましょうか、マリナ嬢」

「…………聞いたって、答えてくれないのでしょう。なら、今はあなたのご厚意に甘えるわ、アレストさん」


 私がそう言えば、アレスト様は優しく私に笑いかけた後、目の前の扉を燃やしました。


 そう、燃やしました。


「お手をどうぞ、炎の聖女様」


 扉を燃やし、吹き飛ばし、跪きながら私に手を差し出した彼の姿はあまりにも魔王ではなく、騎士のようでした。


「ええ、よろしく、私の今だけの騎士様」


 彼が魔王だと知っても、私の騎士様はアレスト・オーナ、ただ一人でした。

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