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エピソード1:勇者

 ボクが魔王と知り合ったのは魔王討伐のための旅を始めて一週間後。

 彼は街中の食事処で食事をしていた。普通に一般人として食事をしていた。服装も髪型も今思えば魔王としての正装のままだったが、普通に馴染んでいた。

 正装とはいっても、騎士、みたいな服装だったけれども。


「相席いいですか?」

「ん?ああ、こんにちは、サライス様。どうぞ、って随分と大所帯だなぁ」

「すみません」


 確かにそのときはボク含めて勇者一行は8人だった。だから、まあ、確かに大所帯と言われればその通りで否定はできなかった。


「勇者御一行も大変ですね。良いとこで食事をすればいいのに、こんなところでなんて」

「いやぁ、堅苦しいところは苦手で」

「そうなんですよ。勇者様はお貴族様のお宅で頂くと固くなってしまって」

「聖女様!!」


 ボクが堅苦しい食事は嫌いだからと街中の素朴な食事がいいのだと言い、訪れる食事処。多くの人がいるからか、いつもボク達は事件に巻き込まれていた。


「なのに、ストーカー、喧嘩、暗殺、盗人騒ぎ、魔法の暴発に、薬の爆発。挙げ句の果てには魔王軍との大喧嘩まで!!」

「一週間しか経ってないのに、すごい引きだな、サライス。暗殺者としても同情しかできない」

「慰めになってないですって、サラ。暗殺者って言葉も鋭いんですか」

「そうかもな」

「ひどい」


 ボク達がそんな話をしていれば初めて会った魔王、このときは魔王だなんて知らなかったけども、彼は何とも言えない顔で笑った。

 騒がしく、何も考えてない一行だったことは間違いなかった。


「流石、当代勇者様。良い旅になることを願っていますよ」

「ありがとうございます」

「ああ、そうだ、サライス様、いや、勇者、一つお願いをしてもいいだろうか」


 食器を片付けて立ち上がり、出立の準備を終えた彼はボク達を見る。彼の言葉遣いは敬語から徐々に変わっていっていた。多分、あの口調が魔王の本来の口調だったのだろうと今になって思う。

 だって、彼はこれ以降の出会いでも口調が敬語だったり、敬語が抜けたりと変わっていったから。


「はい?」


 ボクは言葉を返す。


「皆との旅を目一杯楽しんでおくれ」


 そう言って、彼は、魔王アルレストはその場を去った。


 彼のその言葉の真意を知ったのは当分後のことだった。

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