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エピソード3:暗殺者

「おや、サラ様。こんなところで奇遇ですね」

「…………奇遇ですませていいものだろうか、アレスト・オーナ」


 オレは彼を最初から警戒していた。毎回、彼の正体を知る日まで、彼と出会う場面がおかしい場面ばかりだったのだから。


「どこで私の名前を、いや、マリナ嬢ですね。マリナ嬢には私の名前を教えてましたからね」

「あいつ、あの後、炎の聖女様とか呼ばれるようになったぞ、あなたのせいで」

「それは嬉しい限り」


 オレが一人でいるときに初めてアレストに会ったのは旅を始めて2か月半後。

 その日は偶然、単独の暗殺依頼を遂行していた。勇者達にはあまり知られたくない依頼だった。だが、聞いていたよりも現状が悪く、暗殺対象がいた組織のメンバーに反撃された。

 相手は全員倒せたが、対応した人数が多く、こちらも負傷した。脇腹が熱を帯びていた。少しでも動こうとすれば激痛が走る。


「……しかし、こんなときに会うとはな。焼きが回ったか」

「別にあなたのミスではないですよ。私の運が悪いというか」

「…………治癒魔法まで使えるのか、あなたは。一体何者なのだ」


 彼の手が魔力を帯びる。その魔力は治癒魔法としてオレの身体に馴染む。

 夜中の裏道。そんなところで見られるような魔法ではないことをお互いに分かっていた。

 裏社会に生きるオレ達にとってそれはあまりにも眩しい。


「……「サラには色々、学ばせてくれ」そう言われた理由が今になって分かった気がするな、アンサー」

「……………………何故、師匠の名前をあなたが」

「アンサーは優秀な暗殺者だった。であるならば、彼が出会う人間も特殊な人間が多い。その一人が、アレスト・オーナだっただけ」


 そのときはアレストが魔王であったなんて、知らずに話をしていた。先代勇者の名前を騙る不審人物だなんて思っていた。まあ、先代勇者の名前なんて、知る人は少ないからただの偽名として先代勇者の名前を使っていたのかもしれないが。

 今考えれば、先代勇者の名を知る者が少ない環境でオレ達に「先代勇者の名前(アレスト・オーナ)」を魔王アルレストが騙っていたなんて、有り得ないことだ。


「コゥルさんがそろそろ、迎えにでも来るでしょうから今回はこれくらいで」

「あなたは、」


 治癒魔法を使い終えてオレの前から去ろうとするアレストの服の裾を掴む。


「ん?」

「…………師匠は、あなたに何を、」

「……暗殺者サラ。『君(・)』は勇者一行のなかで年長者だ。優秀な暗殺者だ。責任感の強い人だ」

「それは」

「だからこそ、だからこそ、君はまだ学ぶべきだ。笑うべきだ。勇者達を信じていいんだ」


 言葉に詰まったオレに彼は柔らかく、笑う。その顔はあまりにも魔王には見えなくて、ただの優しい人にしか見えなくて。


「アンサーも「俺(・)」も君にそう望んでる」


 月夜に照らし出されるアレストの姿は魔王のくせに一筋の光で、師匠の話していた先代勇者「アレスト・オーナ」みたいで。


「また会いに来るよ。アンサーとの約束だからね」


 あなたはオレの光だ、なんて、言う機会はこのときだけだっただと知ったのは魔王アルレストが死んだそのときになってからだった。

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