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少子化対策特別チーム Gメン69  作者: 紅椿伊織


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4/8

第4話 夫婦のカタチ



「それでは東京都城東地区少子化対策ケース会議を開始します」


重苦しい空気の会議室。


長机を囲むのは、


国家警察省

ハローワイフ

性生活基準監督署

社会適合支援センター


など、少子化対策関連部署の担当者たちだった。


壁には巨大スローガン。


「迅速・適合・生殖」


最低だった。


俺、織因ユウジは、国家警察城東方面担当として会議に参加していた。ちなみに警察の外ではO-72小隊とは恥ずかしくて名乗っていない。


「ではハローワイフ城東より報告します」


ハローワイフ。略称ハロワ。

正式名称:公共夫婦関係安定所


結婚と夫婦生活を行政管理する機関である。


「先月の実績です。結婚紹介により3509件、婚姻指導により578件、政府斡旋により256件」


「そして、勧告により13件のカップルが成立しました」


会議室に拍手が起こる。


賛同出来なかったが、形だけ拍手した。


婚姻勧告。


つまり国家が「お前ら結婚しろ」と勧告する。事実上の命令である。


「続いて性生活基準監督署より報告します」


今度は性基署の女性職員が立ち上がった。


「先月は463件の相談、132件の指導、19件の臨検を実施しました」


「リエさん。臨検って?」


「夜の性生活に立ち会って指導するの」


「嫌すぎる……」


性基署の職員が続ける。


「ただ、臨検予定の一組。対象の妻が逃走しました」


会議室がざわつく。


「対象は以前より生殖行動が低下。臨検予定の夜、妻のサチコが逃走。現在、行方不明です」


「逃走案件となると……国家警察省ですね」


会議室中の視線がこちらへ集まる。


リエさんが立ち上がった。


「国家警察が担当します」


モニターに夫婦の顔写真が映る。


どこにでもいそうな普通の妻だった。


「オカズ君、家出人の捜索は得意よね?」


「え、まあ……」


所轄署少年係だった俺がこの件を担当することになった。


ーーーー


家出人の捜索には自負がある。


まずは家族からの聞き取りだ。夫のフユキ氏から話を聞く。


「サチコさんとはどうだったんですか?」


「その……夜の生活を嫌がる以外は特に何もありませんでした。」


「寝室を見せてもらっても?」


「ええ……どうぞ」


夫婦の寝室を見せてもらう。


『月刊夫婦生活』

『大解剖四十八手』

などの政府推奨図書があった。


「これは?」


壁に今月の管理表という名前の表が貼られていた。


「ああ。『こども作りチャレンジ』です。通信教育の付録ですよ。子作りをKPI管理してPDCAサイクルでやるんです」


「……」


子作りをビジネスみたいに言っている。

嫌すぎる。


この家庭でも努力した形跡が見られた。

いや、子作りの義務感がこの夫婦を苦しめていたのかもしれない。


「失礼ですが、性生活以外では?」


「特に思い当たる節はありません。私たちは政府勧告で結婚しましたが、仲は良かったと思います。最近はお気に入りのカフェに一緒に行くのが楽しみで……」


「フユキさん。まずはそのカフェに行ってみましょうか?」


「え?私もですか?」


「はい!」


この夫婦はまだ終わってない。

そう確信した俺は夫のフユキ氏を連れて、夫婦がよく行くカフェに向かった。


ーーーー


やはり俺の読み通りサチコさんはカフェにいた。


「サチコ……」


「フユキさん……」


「こちらは?」


「国家警察省です」


「そっか……逃亡しちゃったからね……」


乾いた笑いだった。


「コーヒー二つ」


俺はコーヒーを注文し、フユキ氏と一緒にサチコさんの話を聞く為に同席した。


しばらく沈黙。


やがてフユキ氏が尋ねる。


「……どうして」


サチコさんは俯いたまま答えた。


「相性……」


「え?」


「あなたはいい夫よ。優しくて生活力もあって、イケメンで……結婚相手としては最高。私には勿体無いくらいだわ」


「サチコ……俺が下手なばかりに……夜の生活が不満なら改善する!そうだ。今度、政府のセミナーを……」


「違うの!」


「じゃあなぜ?」


「イキ顔……」


「え?」


「あなたのイキ顔がどうしても無理なのよ。それまでは満たされた気持ちで幸せだったのが、あなたのイキ顔で萎えるの!」


「そ、そんな」


「自分でもなんでかわからないの……こればかりは無理なのよ。だから……離婚を……私のせいで無駄な努力を続けるあなたを見るのが辛いの……」


「そんなことはない。性基署のカウンセリングで、理想的なイキ顔になってくる!」


「フユキさん……もうやめて。私は……あなたをこれ以上苦しめたくないの……」


「サチコ……すまない。俺のイキ顔が間抜けな為に……」


「あなたは悪くないわ。でもこればかりは……こればかりはなんでかわからないけどダメなの……」


泣き出す妻のサチコさん。


だが、俺はここまで聞いて思った。


「あの……。電気消せばいいじゃん」


「あ。」


俺の一言でその場が静まり返った。

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