第3話 摘発!二次元ショップ、ヤミメイト
俺たちO -72小隊は装甲車で秋葉原へ向かっていた。
目的地は電気街の裏路地にあった。
違法二次元ショップ・ヤミメイト秋葉原店
「いや本当にやるんだ……」
俺は頭を抱えた。
シールドが装備を確認しながら言う。
「オタクショップ相手に完全武装ってどうなんだ」
キーボードがタブレットを操作する。
「違法魔法少女グッズの大規模流通拠点らしいですよ」
「世も末だな」
リエさんは真顔だった。
「対象は国家指定危険作品」
「違法所持だけでも摘発対象よ」
たかがアニメグッズなのに怖すぎる。
ーーーー
ヤミメイト地下店舗。
店内はアニメソングが流れ、モニターにはアニメがエンドレスで映し出されている。
そして棚には魔法少女グッズがずらりと並んでいた。
催涙ガスと閃光弾を投げ入れ、隊員たちが突入する。
「国家警察省だ!」
「全員動くな!」
一瞬の静寂。
そして店の奥から叫び声。
「自慰メンだァ!!」
「逃げろ! 捕まるとオナ禁だぞ!!」
「もう広まってる!?」
俺が叫ぶ。
店内はパニックになった。
その時。
棚の前で震える成人男性を見つけた。
両手には魔法少女フィギュア。
「マジカルキュアブルーだけは……!」
涙目だった。
リエさんが静かに近づく。
「違法よ」
「この作品は子供向け作品。オーバー13指定」
「つまり中学生以上の無許可の視聴、画像等の所持は禁止されてるわ」
男は絶望した顔になる。
「ぼ、僕は……どうすればいいんだ……」
店内が静まり返る。
リエさんは少しだけ目を伏せた。
「大きなお友達の居場所は、今の日本にはないのよ」
重い。
だが次の瞬間。
リエさんは一枚のチラシを差し出した。
国家認定婚活パーティー
“コスプレ交流会”
「……は?」
「女性は国家認定コスプレイヤー限定」
「AI適性審査済みよ」
最低だった。
男が震える声で聞く。
「こ、ここで奥さんを見つけろって……?」
「そう。あなたの推しも来るわよ。この子、レイナちゃんなんかどう?結婚できれば、毎日マジカルキュアブルーの格好したレイナちゃんと生殖行為に励めるわ」
「リエさん。言い方が……」
美人上官から生々しい表現を聞きたくなかった。
「僕!がんばります!」
意外にもリエさんの勧誘はうまく行ったようだ。
「そう。じゃあちょっと待ってて」
リエさんはタブレットを操作し、交通違反の切符のようなものを渡した。
「なんですか?それ」
「これは反則切符。今日は連行しない代わりに、後日社会適合支援センターへの出頭日を知らせるものよ」
社会適合支援センター。
国民の性癖を改善するという名目で設置された機関。
交通違反の反則切符感覚でそんなところへの出頭命令を渡すGメン。
「そこに行けばレイナちゃんに会えるんですか?」
男がリエさんに尋ねた。
「は?その前にあなたは、メンズトレーニングセンターに行ってきなさい。しっかりと管理された環境でオトコを磨いてきなさい」
「リエさん……急に厳しいですって」
「ぼ、僕は不細工だから……」
「そういう問題じゃないのよ。だいたい努力もしないで女が選ぶと思う?レイナちゃんを振り向かせたかったら、その清潔感のない見た目からなんとかしなさい」
「コスプレ婚活パーティはそれからよ」
「リエさん……もうやめてあげて」
なんか俺の方が辛くなってきた。
「も、もし結婚相手が見つからなかったら……?」
リエさんは少し黙る。
そして静かに言った。
「社会適合支援センターで長期支援よ」
男は自分の行く末を悲観したのか、黙って反則切符と婚活パーティのチラシを持って大人しく帰って行った。
「リエさん。レイナさんとかすごく美人ですよね」
「ああ、これ?AI画像よ」
リエさんが周りに聞こえないように小声で答える。
「え?」
『人間ハ見タイモノシカ見ナイ。希望ハ救済ニツナガル』
「ジローラモにさっき生成してもらったのよ」
「……。」
最悪だ。
ーーーー
店内にいた客たちは渋々、反則切符を受け取っていた。
ちなみに指定日時に出頭しないと逮捕されるという恐ろしいシステムだ。
店員が突然叫んだ。
「俺たちは誰にも迷惑をかけていない!好きなものを楽しむだけで、なんでこんな目に遭わないといけないんだよ!」
そうだ!という声が店内に響く!
『否』
ジローラモの目が赤く光り、大音量で答える。
『退廃的文化ハ伝染スル。退廃ノ元カラ断ツベシ。人間社会存続ノ為、退廃文化ハ制限サレネバナラナイ』
店内の空気が凍る。
隊員たちは無言で押収品を段ボールへ詰めていく。
魔法少女ポスター。Blu-ray。抱き枕。裏取引されていたダッチワイフ。
その山の上で、
マジカルキュアブルーの笑顔がキラキラ光っていた。
俺はその顔を見つめる。
どう見ても、
ただの子ども向けアニメだった。
でもこの国では。
“大人が好きになること”が罪になっていた。
「日本には大きなお友達の居場所はない……か……」
俺は催涙ガスの残り香が漂うヤミメイトを後にした。




