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「起きろポンコツ!」
思いきり蹴られる。
「ごふっようございます!」
蹴られたついでに挨拶も飛び出す。
床で寝た身体の痛みに追加される局所的痛みが、目をこじ開ける。
笑いをこらえるスカーレット。
咳払いをして真面目な声色へ。
「ほら、邪魔だ。忠犬なのはいいが、もっと部屋の隅とかで寝ろ」
確かに玄関の廊下とリビングの間ではあるけれど。
僕に布団はくれませんか。
「せめてソファーで寝ていいですか」
「だめだ。それは客人向け」
「やっぱ床ですか」
「床も却下。邪魔だし見栄えが悪いだろ。使用人の部屋は別である。玄関すぐの扉」
気付いてなかったが確かに扉がある。
全身痛いけど、起き上がって見に行く。
簡素なとりあえず寝るだけの部屋。
そういうのは先に知りたかったな……。
「基本的に仕事以外はその部屋に籠っとけ」
背後から冷たい声で背筋がぞわっとする。
「で、今からちょっと外出してくる。その間に片付けと掃除で」
投げ捨てるようなセリフで颯爽と玄関から出ていった。
結局何も聞いていないが……あの紅い扉だけ気にしていたら大丈夫なのだろうか。
大丈夫そうなところから開けていく。
……彼の書斎。
本の壁が僕を圧倒する。
僕も読んだことがあるような有名な小説もあるし、背表紙の字が擦り切れたお気に入りっぽい実用書とかもあって相当本、好きなんだろう。
それに実用書がお気に入りってことは、結構ちゃんと努力している人なんだろうなあ。
そこにある高級そうな机や椅子、座ったら怒られるだろうなと笑った。
おっと、妄想を膨らませている場合じゃない。まだ何も終わってない。
こっちは……洗面所か。
買ってきた日用品を持っていく。
棚に直していくが、棚の大きさがバカでかい。
買ってきたそれなりの体積の日用品をすべて飲み込んでいって感動した。
棚の中に住めそうなくらいだ。
気になって棚のいろんな扉をパカパカしていると掃除機が出てきた。
いいやつ持ってるな〜。見た目からして高そう。
隣に洗濯機。これも同じく。
でも、洗濯物結構溜まっていて……一人ではできないタイプなのだろう。
回しておいた。
そして掃除機をかける。
人生で初めて掃除機かけて汗かいた気がする。
ふと、食糧庫の扉を見つめる。外鍵がついている。そもそも外鍵の扉とか家の中に存在するんだ……。
そんな発想すらないし、なんなら食糧庫なんか家につける余裕もない。その日食べる分はその日に消費するのが普通だと思っていた。
この中に人間がいるって思うとよぎる嫌悪感。
それより隣の紅い扉が妙に主張してくる。
なんなら、変なオーラ出ているんじゃなかろうか。なんとなく視線がそっちに向く。
いやいや、ダメダメ。行くほうは、あっち。




