表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/18

第九話:硝煙の市、あるいは闇の等価交換

第九話:硝煙の市、あるいは闇の等価交換

マフィアの拠点は、かつての食肉加工工場を改造した巨大な倉庫街だった。

錆びついた鉄扉と、不自然に増設された無数の監視カメラ。警察の突入部隊が周囲を包囲する中、私はADUADSアドゥアッズの機体高度を下げ、闇に紛れて待機していた。

「……索敵完了。倉庫の屋上、および内部に多数のドローン反応。エクリプスから流れたとされる、新型の信号パターンを確認したわ」

リアシートのエレーナが、タブレットに表示された波形を指でなぞる。

「連中、ドローンと引き換えに何をエクリプスに渡したんだ?」

「……マフィアが管理していた、旧大国時代の『高度軍用集積回路チップ』のストックよ。今のエクリプスにとって、兵器の脳となるチップは喉から手が出るほど欲しいはず。……最低の等価交換ね」

エレーナの声に怒りが混じる。

「おもちゃ」の皮を被った「守護神」と、テロリストに魂を売った「暴力」。

作戦開始のカウントダウンが、モニターの端でゼロを刻んだ。

強襲:未熟なる猟犬

ドォォォォン!!

警察の装甲車が正門を突破すると同時に、倉庫の窓から無数のドローンが溢れ出した。

だが、その動きはこれまで戦ってきたエクリプスの直轄部隊に比べれば、あまりにも単調で、粗野だった。

「……ただ飛ばしているだけか。操縦者が素人だな」

私は右レバーを引き、ADUADSを跳躍させた。

空中での姿勢制御。補助腕が瞬時に連動し、レーザー・ダズラーが四方へと扇状に照射される。

ジジジッ……!

エクリプス製の高性能ドローンといえど、それを操るマフィアの技量が追いついていない。視界を焼かれたドローンたちは、味方同士で激突し、あるいは壁にぶつかって火花を散らす。

掃射スウィープする。エレーナ、全ターゲットをAIにリンク!」

「了解、ロックオン・シーケンス、オール・グリーン!」

左腕のクラウド・バスターが、重低音を響かせて火を噴いた。

市街地では使えなかった「高密度散弾」が、倉庫の上空を「死の空域」へと変える。一度の射撃で数機がまとめて叩き落とされ、マフィアたちの怒号がスピーカー越しに聞こえてきた。

露見:闇の痕跡

倉庫の最深部。警察部隊がマフィアを制圧する中、私はADUADSを歩行モードで内部へと進めた。

そこには、木箱に詰められた大量の軍用パーツと、すでに「空」になったいくつかのコンテナが並んでいた。

「……遅かったか。肝心のチップは、もう運び出された後みたいね」

エレーナが悔しそうにモニターを見つめる。

コンテナの床には、一束の紙の資料が落ちていた。そこには、次の取引場所と思われる座標と、事細かに指示が記されていた。

「……成る程な。コレで少し疑問が解消した」

「何かわかったの?」

「不思議に思った事は無いか?あの遠隔操作テクニカルはどうやって我々の前に現れるのか?」

「遠隔操作で移動しているのでは」

「いくら戦後混乱期とはいえ、武装した無人車両が道を走っていたらさすがに目立つだろう」

「夜間人目に付かないルートを選んで自動走行させているとか?」

「それが技術的に可能か、仮に可能であっても、それだけの技術をエクリプスが保有しているかは、分からないが、タイミングが良すぎる」

「でも、実際に無人テクニカルは私達の前に現れて、襲ってくるのは何故?」

「その、カラクリが、この資料に書いてある」

颯真はエレーナに紙の資料を手渡した。

「我々の通ることを予測したルートに住んでいる住民に報酬を含めた資金を提供し、車両、武装、遠隔操作の為の装置を購入させ、武装、遠隔装置を設置せずに積み込み、本人に運転させ目的地に移動。移動後、その場で車両、武装を設置し放置。あとはエクリプスが遠隔操作」

「あとは我々が知っての通り。という事ですね」

「ただ遠隔操作の装置が、それ程、高性能という事では無いな。我々がテクニカルに対応出来ているのも、それが理由だろうな」

「ここまでして、エクリプスは何がしたいのかしら?本当に地域紛争の再現が可能だと信じているとは思え無い。貴方はどう思う?」

「わからん。だが、マフィアを隠れ蓑にして、着実に物資を補充したのは確かだ」

私はADUADSのセンサーを最大出力にし、倉庫の隅々までスキャンした。

エクリプスは姿を見せない。だが、彼らが撒き散らした「暴力の種」は、この街の至る所に根を張っている。

終結:パペットの報酬

「……助かったよ、海堂大尉。約束通り、燃料と弾薬、そして友好国までの『クリーンな通行証』を用意させてもらった」

署長が満足げにADUADSの脚部を叩いた。

ネオンの光は相変わらず毒々しいが、マフィアの支配が消えた夜風は、どこか少しだけ軽やかになった気がした。

だが、エレーナの表情は晴れない。

「颯真……次の座標、『廃空港』を指しているわ」

「……そこが奴らの資源の心臓部か。」

私たちは「玩具の兵隊」として、再び西へと向けて機体を起動させた。

エクリプスが強力な力を手に入れる前に。それが私たちに向けられる前に、この旅を終わらせなければならない。

ハイウェイへと戻るADUADSの背後に、夜明けの光が微かに差し始めていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ