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フツメンに生まれたかった…  作者: 橘アカシ
テスト×眼鏡×弁当編
57/63

解説を求む…








相馬は訳のわからない事を喚き散らし、その瞳にはどこか剣呑な光が宿っている。あれだ。見るからにヤバイ感じの。今にもなんかやらかします感がひしひしと伝わってくる。

俺マジでこいつになんかしたか?早急に解説を頼みたいが俺以外の全員もぽかんと相馬を見つめているため、期待できそうにない。

なんか注目されたいみたいな事言ってたけどこれじゃだめなのか?間違いなくこの場の注目を掻っ攫っているのは相馬ひとりだ。

……まあ、俺がこんな注目集めたら、地獄行きでもいいから空いてる穴に引っ込みたいが。

相馬はさっきから『お前さえいなければ』を繰り返している。

せっかくのイケメンなのにこれじゃあ好意を寄せてる女子がいてもドン引きだ。

ちなみに俺は全力でドン引いている。

というか、マジで誰かどうにかしてくんねえかな。俺は帰ってゲームに癒しを求めたい。

身近にいる女子は今の相馬より断然怖いし、俺に寄ってくるのは野郎ばっかり。画面の向こうにくらい癒しを求めたところでばちは当たらないだろう。

「二階堂くん。相馬くんの様子、ちょっと変じゃないかな?」

俺の斜め後ろにいた青葉がそろそろと側まで寄ってきて、俺に聞こえるだけの音量でいった。

「はあ?どう見たっておかしいだろう。たかがテストで一位取れなかったくらいで癇癪起こしてんだぞ?」

「そういう意味じゃなくて……。なんて言えばいいんだろう」

ちらりと横を見ると青葉は難しい顔をしていた。その向こうに見えた鬼のような形相は全力スルーして、青葉が言った意味を考える。

……まあ、確かにテストで負けて癇癪起こすにも、俺が嫌いだからと突っかかるにも、放心したように戯言を繰り返す様は、変というより異様という言葉が相応しいだろう。

だからと言って俺は相馬について詳しく知らんし、これがやつのデフォルトなのかもしれない。君子危うきに近寄らず。触らぬ神に祟りなし。と行きたいところだが、気づくのが遅すぎた。この状況を放置するわけにもいかず、どうにかしなきゃいけないのは……俺なんだろうなあ。

本当は嫌だが、心底嫌だが、ここで逃げ出したらもっと恐ろしい目に合うのが、青葉の隣から放たれる殺気で察せられるため、仕方なしに口を開いた。

「男のくせにぐちぐちうるせえ。自分から勝負吹っかといて勝てずに喚き散らすぐらいなら始めから突っかかってくるんじゃねえよ。勉強云々の前にその貧弱な根性叩きなおして来い!!」

俺の言葉に腫れ物を扱うようだった雰囲気が霧散し、全員の目が俺に向いた。どこか同情的な目で相馬を見ていた女子たちの眦がだんだんと釣りあがっていく。

「それは、いくらなんでも言い過ぎではありませんこと?」

「そうよ。相馬くんだって決死の思いで勝負を切り出したからこそ、ここまで思い詰めてるんじゃない」

「まあ、二階堂だしデリカシーのない言葉はしょうがないけど。いくらなんでも相馬くんに失礼だよ」

え?なんで俺が責められてんの?俺の方が散々な言われようしたはずだけど、さっきのは気のせいか?俺の空耳だったとか?んな馬鹿な。まあ、確かに棘びっしりの嫌味を織り交ぜながら俺を口撃してくる美少女たちに比べれば、相馬のストレートな言葉は子猫パンチくらいのダメージしかないが。……たとえが悪かったな。相馬は子猫の毛先ほども可愛げがない。

これでは俺が相馬をいじめているようではないか。というか、天野さんたち青葉の取り巻き要員じゃないのか?なんで相馬を庇って……って、単に俺を目の敵にしてるだけか。分かってる。分かってるけど布団に籠る時間が欲しい。緊急に。

「ふん。女に庇われるようなやつが喧嘩しようなんざ、 百万年早いんだよ」

そして俺の口は相変わらず、攻撃性の言葉しか発してくれない。是非とも穏便に済ませてご帰宅を所望したいのだが、うまくいかないものだ。


「……お前さえいなければ」

俺の言葉が聞こえていたのかいないのか、ずっとぶつぶつ言っていた相馬の声がするりと耳に入ってくる。その声は一切の感情を排し、どこか機械染みていた。女子たちに気をとられていた目を相馬に改めて向けると、虚ろな瞳が俺をまっすぐに見つめていた。

激昂していた相馬は面倒臭いの一言に尽きたが今の相馬は様子が変では済まされない。

相馬は徐にポケットに手を忍ばせた。そこからゆっくりと取り出したのはメタリックカラーの普通のボールペンだ。かちり、とノックしてペン先を出す。

それで何をする気だ?と質問できるやつはいない。相馬の雰囲気に誰もが気圧され身動きできずにいた。

相馬はダッと走り出す。ボールペンを振りかざしながら、俺に向かって。スローモーションのように感じた。相馬が迫り、ペン先がズームアップするようだ。

その様子を俺はただただ眺めていた。


「……二階堂くん!!」


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