どうなることやら…
「僕は評価されてしかるべき人間なんだ!お前とは違う。誰よりも勉強して、勉強して、血反吐吐くほど勉強して。遊び呆けたりぜず、寝る間も惜しんで、勉強してきたんだ。どうして、僕が一番じゃない?僕の方が優れてるはずだ。僕の方がお前よりずっと優れてるはずなんだ。僕はずっと一番だったんだから。僕が一番だったんだ!!なのに、なんでお前ばかりもてはやす?お前ばかり注目される?どうして、努力してる僕が、何もしていないお前に負ける?どうして……!!」
颯の叫びに廊下はしんと静まり返った。颯そっちのけで言い争いを始めていた少女達も空気を読んで思わず息を飲む。
「……お前さえ、いなければ」
焦点の合わない目で颯は呟いた。静かすぎる廊下で皆の耳に届くには十分だった。
「お前さえ、いなければ僕は正当な評価がされる。お前さえいなければ僕が一番になれる。お前さえいなえれば……」
握りしめていた両手をだらりとたらし、うつむいて顔を覆った前髪の奥で眼鏡が怪しく光る。
すでに、颯にとってユエルが一位であったことは重要ではない。ただ、静に勝てなかった事が颯の心中を負の感情で覆い尽くす。
“なるほど”
張り詰めた空気の中でユエルは冷静に状況を見極めた。これまでまったくのご無沙汰だったクロネコは甲斐甲斐しく布石を用意していたらしい。
どこで仕込んだのやら、今の颯の状態はまさしく悪魔に取り憑かれている、だ。
周囲を見回すがクロネコ本体はこの近くにはいないようだ。少なくともユエルには見つけられなかった。颯の中にあった負の感情を増幅させるだけ増幅させて、安全な場所で高みの見物ということらしい。
ならば、と。ユエルもまた青葉の隣で高みの見物を決め込んだ。この場合、標的になっているのは静であり青葉ではない。この場から連れ出したくはあるが、クラスメイトの修羅場を放って逃げる青葉ではないと承知のため、何かあった時はユエルが側にいてすぐさま助ければ良い。
時々、クロネコの気配はしたがこれといった行動はなかった。片っ端から人を死に追い込んでいたのが嘘のように何もしなかったのは嵐の前の静けさのように不気味だった。
未だ、クロネコの目的がなんなのかはっきりとはわかっていない。
ただの愉快犯というにはユエルが人間界に来てからの行動に符合がいかない気がもするが、それも偶然なのか。はたまた必然か。
クロネコの真意を探るにはちょうどいい機会だろう。
というかぶっちゃけ、青葉絡みでなければ心底どうでもいい。特に静が関わっているとなれば、手助けするどころか巻き込んだ分の慰謝料を払えと要求するレベルで後はどうなろうが知ったこっちゃない。
青葉をダシにした颯にはむかつくし、もちろん報復はする。どう料理してやろうかと考えてひとりにやりと笑うが、ふっと表情を消した。その前に颯の心が壊れてしまわなければ、の話だ。




