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フツメンに生まれたかった…  作者: 橘アカシ
テスト×眼鏡×弁当編
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負けてたまるか!






渡り廊下にはテストの結果が張り出された。

表の前には大勢の生徒が群がり、自身の順位と一番左上に書かれた者の名を確認しようと押し合いへし合い、ごった返している。

と言ってもここにいるのは特進クラスの生徒三十六人のため、言うほどでもなかったりするのだが、賭けの事はすでに全員が知る所となっており、誰もがその勝敗の行方を見届けに集まっていた。

そんな人ごみの中にぽつんと空間が生まれる。

勝負は決したのだ。一位を取った人物はゆっくりと前に進み出て言った。

「当然の結果ですね」

その勝ち誇った笑みに、開いた口が塞がらなかった。


こんな結末を誰が予測できただろう。





*****





テストは一週間に渡って行われる。

少ないと二科目、多い日には四科目を一週間の間に受けていく感じだ。

昼前には帰れるため、いつもなら喜び勇んで帰宅しゲームをするのだが、今回はそういう訳にもいかないだろう。

特進クラスと一言に言っても内実は、理系と文系が存在する。

当然、理系は理数系の教科が多くなり、文系は文系の教科が多くなるため、同じクラスでも受ける科目は違い、普段も共通科目以外は別々の教室で勉強している。

と言っても張り出される順位は共通科目である国数理社英の主要五教科の内、七科目の七百点満点で理系文系は関係ない。

ちなみに俺は理系。青葉は文系。井上さん、藤木さん、大野さん、天野さんも文系。脳みその造りの違いなのかやっぱり男子は理系、女子は文系の方が比率的には多いが、理系女子、文系男子も存在する。体育祭で頑張っていた浅間さん(体育祭で障害物競走に出ていたちんちくりん食いしん坊美少女)は理系だし、そもそも青葉が文系って時点で例える必要はなかった。

ついでのついでに言うと相馬は見たまんまの理系。


今日は月曜日だ。テストの初日。始まるまでまだ時間はあるが、クラスはすでに静けさに包まれている。

ノートを開いて最後の確認をしてるやつ。筆記用具の準備をしてるやつ。目を閉じ集中力を高めるやつ。俺をものっそい睨んでる眼鏡……。

うん。とりあえず、見なかったことしよう。とか、思ってたら眼鏡は席を立ち、俺の方に近寄ってきた。クラス中が俺たちに注目する。


「二階堂静。死装束は用意出来ているんだろうな。どれほどこの日を待ち望んだことか。君が無様に膝まづく姿が今から目に浮かぶようだ。覚悟しておくんだな」

それだけ言うと相馬はあーはっはっはと高笑いして席に戻った。

……あいつ、大丈夫か?

「相馬くん、大丈夫かな」

俺の心の声と青葉の声が重なった。いつの間にか隣に来ていたらしい。

だよな。あいつ大丈夫かって思うよな。今から決闘するみたいなセリフ吐いていったけど、これたかがテストだからな?絶対に負けられない(色々な意味で)勝負だが、負けたとしても死なねーし、膝まづかねーし。

「すごく顔色悪かった。目の下はすごい隈だったし、ちゃんと寝たのかな」

青葉の大丈夫は俺と違い、相手を思いやる大丈夫だった。心配そうに相馬の後ろ姿を見送る。相馬はイスに座るやいなや参考書を開き、鬼気迫る表情で文字を追う。よくよく見ると青葉の言う通り、目の下は真っ黒で頰もげっそりしているような気がする。

……あっぶねー!口に出して言わなくて良かったー!!俺の株がまた一つ下がる所だった。あればの話だが。

「何しに来たんだよ。お前は勉強しなくていいのか」

「ごめんね、邪魔して。すぐに戻るよ。これだけ言おうと思って」

何だ?テスト前にわざわざ言いにくるとか、よっぽど重要な事なのか?

「テスト、お互い頑張ろうね」

「……おう」

本当にそれだけ言いに来ただけらしい。青葉はそのまま自分の席に戻ってしまった。

……なんだ、あいつ?

天野さんがこの場にいれば一悶着ありそうなものだが、幸いまだ登校していないためここで騒ぎ立てるやつはいない。

他の女子はちらりと視線は寄こしたがそれだけだ。

教室は静かだ。誰もがテストに向け準備を進めている。多少の緊張感はあれど、雰囲気は悪くない。相馬がひとり余裕のない表情をしている。

俺は脱力した。知らない内に余計な力が入っていたらしい。負けられない勝負。女子達からのプレッシャー。

そう言えば、誰かとこうやって勝負するのは今の俺になってから初めてかもしれない。

頑張るって言葉もどっかに置き忘れていたようだ。


青葉の弁当をいいように戦利品にされてたまるか。食べたいなら正々堂々青葉に直接頼めってんだ。それに、あんなにしごかれたんだ。負けてたまるかっつーの。


「テスト始めるぞー。教科書、ノート、筆記用具以外全部しまえー」

担任の近藤が教室に入るなり何とも気の抜ける声で指示を出す。隣を見るといつの間にか天野さんが着席していて、目が合うとものっそい嫌そうな顔をされた。

テスト用紙が全員に配られた。真っ白な裏面を見つめ、後は開始の合図を待つのみ。


「始め!」


さて、いっちょやりますか!





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