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フツメンに生まれたかった…  作者: 橘アカシ
テスト×眼鏡×弁当編
49/63

青葉(…)争奪戦、再び!?





便秘くん……じゃなかった、相馬はチャイムが鳴る一分前に帰ってきた。

さすが学年一位。トイレでどんな格闘があったか知らないが、始業時間はきっちり守るとは出来る男は違う。

「二階堂静!!今回のテスト、青葉浩一を賭けて勝負しろ!!」

……とか、思ってたらいきなりの宣戦布告。どゆこと?





*****





俺の発言で静まり返った教室は、なんとも言えない空気となり、気まずくなったのだろう男子たちが現実逃避するために勉強に走った。

それを見た女子たちも先程までの騒がしさを自覚したのか自身の机に戻り、何事もなかったように黙々と勉強を再開した。

青葉と岡倉は何故か互いに見合わせ苦笑する。

この静けさはテスト期間に相応しいはずだ。なのにいたたまれなく感じるのはなぜだろう?

そこに再び相馬登場。

今回のテストでもひと波乱が待っていそうだ。

……去年まではすっげぇ平和だったんだけどな。

とりあえず、チャイムがなったため、相馬の発言は保留となった。





帰りのホームルームが終わるとすぐ、相馬が俺の元にやってきた。

心配した青葉と岡倉もまた俺の元に集まり、俺に一切興味のない女子はさっさと帰り支度をしている。他の男子たちは気になるのか、女子たちと同じように帰り支度しているが、その動きは遅く聞き耳を立てているのが伺える。ちなみに委員長の三木は終わるや否や疾風の如くご帰宅なさった。噂では他校に彼女が居り、一秒でも早く会いたいがために、毎日、瞬息で帰るのだそうだ。くそっ!リア充め!

俺だって、すぐにでも駆けつけたい彼女が欲しいわ。なのに目の前には女子どころか野郎に因縁つけられる現実。……泣きたくなってきた。





「僕は君が気に入らない。だから勝負を挑んだんだ」

開口一番でこれだ。相馬は眼鏡をくいっとあげ、机に頬杖ついて座る俺を顎を逸らして見下した。これが美人女医(クールでSっ気あり)だったら、俺は喜んで見下されただろう。しかし、同い年の男子にやられてもむかっ腹が立つだけだ。

「で?だからってなんで俺がお前と勝負しなきゃならないんだよ。テストならお前が一位だし俺に勝ってんじゃねえか。それにどうして青葉の名前が出てくんだよ」

相馬はハッと小馬鹿にするように嗤うと、さらに眼鏡をくいっと持ち上げた。

「本気を出していない君から一位を取ったって、本当の勝利ではないんだ。血反吐吐くほど努力して、それでも無様に負ける君の姿が僕は見たい。そこで君に本気を出させるためにはどうすればいいか?答えは明白だろう。君の原動力になり得るとすればひとつ。いや、ひとりしかいない」

そこで、相馬は舞台俳優のように大げさな動作で青葉を指し示した。その動作につられて俺は青葉を振り返った。

「…………え?僕?」

「そう!青葉くん、君だ!!」

相馬の熱意?に青葉は若干引き気味だ。俺に困惑の目を向けてくるが俺だって意味が分からん。助けて欲しいのはこっちの方だ。

相馬は気にせず、話を続けた。

「君の事は嫌でも目に入る。今年の始めから青葉くんと仲良くなった事も、君が青葉くんの弁当に対して異常な執着を見せている事も知っている」

……話の流れは分かった。つまり目の前にエサ(青葉の弁当)をぶら下げてやる気を出させた上で、俺を負かそうという魂胆なのだろう。だが……。

「俺がお前と勝負して、俺に何のメリットがあるんだよ」

そう、そこなのだ。こいつはやる気満々だが、俺は別に相馬の事を勝負で負かしたいほど、特別な感情は抱いていないし、青葉の弁当は賭けるようなものではない。

つまり、俺が勝負に乗る必要はないし、乗る理由もまったくないわけだ。

……とか、考えてた俺は学年一位の頭脳を甘く見ていたらしい。

「いいや、二階堂静。君はこの勝負を受けるしかないんだ」

相馬はいきなり俺に背を向けると、叫んだ。

「諸君は青葉くんの弁当が二階堂静に搾取され続けたままでいいのか!?」

「……!!?」

その言葉に教室に残っている者、教室を出ようとしていた者まで足を止めて、相馬の演説に耳を傾けた。

「青葉くんの弁当に出会い、どんな味だろうと想像を膨らませた者は少なくないはず。その見た目が、匂いが、私を食べてと誘惑してくるんだ。一度でいいから味わってみたいと思うのはどうしようもない事。しかし、それは叶わない。なぜなら、青葉くんの弁当を独り占めし、地獄の番犬の如く立ちふさがる二階堂静がいるからだ!僕は彼を負かそう!そして勝った暁には青葉くんの弁当チケット制を確約するとここに宣言しよう!」

お前はどこの政治家だ!?出来もしな事を公約にして、支持を得たって後から痛い目見るのは自分だからな!?

しかし、聴衆の力は偉大なり。クラスメイトの瞳に希望の光が灯るのを俺は見た。

「……いいんじゃない?相馬くんの相手をしてあげても。こんなに勝負したがってるんだし。ねぇ?」

「そうそう。戦いを挑まれたら受けて立つのが男ってものだよね」

「敵前逃亡とか、ありえないし」

背中をつーっと嫌な汗が流れる。じわり、じわりと退路が断たれていく。

……あれ?これってやばいやつ?

「戦わずして逃げるというのなら、それも構わないよ。青葉くんの弁当は我々がおいしく頂くだけだ。この際、君と本気の勝負が出来なかったとしても、二階堂静はただの腑抜けだったと諦めて溜飲を下げようじゃないか。……さあ、どうする?」

……この場はオーディエンスを味方につけた相馬に軍配が上がったらしい。

青葉が誰に弁当を作るかなんて、青葉自身が決める事だし、チケット制なんてあまりに馬鹿げている。現に青葉は自分の弁当が戦利品のように扱われおろおろしているし、岡倉やまだ教室に残っていた井上さんたちもこの騒ぎに困惑している。

流れは今、相馬にある。ここで相馬の提案を一蹴したとしても焚き付けられた聴衆が黙っていないだろう。

気分はヌーの大移動に遭遇したはぐれインパラだ。

だから俺は仕方なく叫び返した。

「分かったよ!お前と勝負すればいいんだろ!?俺が勝ったら青葉の弁当云々全部なしだからな!!」

ええい、面倒くせぇ!とりあえず、勝ちゃいいんだろう!?

「フハハハハ!受けたな二階堂静!いまから君の無様な負け姿が目に浮かぶようだ!」

眼鏡を押し上げながら高笑いする相馬を殴り飛ばさなかったのは、ぶるぶると震える俺の肩を青葉と岡倉が必死で抑えていたからだ。

俺が勝った時はその眼鏡叩き割ってやるから覚悟しておけ!!




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