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祭りの後は…






賑やかな時間は過ぎ去り、夕闇が校庭を覆い尽くす。生命に溢れていたこの場所に忍び寄る死の気配に黒猫はうっとりと目を細めた。


恋とは純真な心さえ黒く染める劇薬。

相手の些細な言動に一喜一憂し、相手を求め、欲をかき、いつしか怒り、嫉妬、憎悪と成り果てる。“好きだから”という絶対の大義名分をぶら下げて。


恋とはなんと素晴らしい。

人を狂わせる、全きの美しい理。


育てよ、育て。恋心。

大きな悲劇を生まんがために。


黒猫はにたりと笑う。

歯車はすでに回り始めている。




*****






木々が青々と茂る梅雨の終わり。

有力な企業がオフィスを構えるビル群を抜けると閑静な住宅街が広がっている。古式ゆかしい家屋から、白い外壁が眩しい真新しい家まで、新古が交錯する。その住宅街の終わりを告げるように東西に流れているのが美咲川だ。春になれば川に沿うように岸を満開の桜が覆い尽くすためそこから美咲川と名付けられた。桜が咲くとここら一帯の人々がこぞって花見に来るため賑やかになるが、今は花びらも散り深緑のアーチの下で川の流れに合わせるようにゆったりとした時間が流れている。美咲川に架かる大平橋を越えてしばらく。そこに広大な敷地を誇る城西学園は建っていた。


創立五十六年。

十二年前に建てられた新校舎と取り壊されることなく修繕を繰り返し現在も使われている旧校舎。体育館、運動場、食堂など、それぞれ第一、第二とあり、さながら二つの学校が同じ敷地に同居してしるようだ。他にも部室棟、専門等、プール、温室等様々な施設が充実しており、高校としてはかなり恵まれた環境になっている。広い敷地ゆえに閉塞感はないが体力のない者や方向音痴、面倒くさがりからはこの学校広すぎと苦情が入っているのも事実だ。

独立協歩を校訓に存外自由な校風は進学校でありながら少々特殊だ。生徒たちの個性を遵守し、よほどのことでもない限り生徒たちの自主性に任せる。

それでいて高い偏差値を維持する城西学園は、人気も高い。倍率は毎年三倍を超える。先ごろは体育祭を迎え、かなりの盛況ぶりを見せていた。

しかし現在。校舎は沈黙し、ピリピリとした空気が流れている。


それもそのはず。城西学園もまた他の学校と等しくテスト期間に入ったのだ。

楽しいイベントが終わったと思ったら、またテスト。これは悲しいかな学生の宿命と言っても過言ではないだろう。

誰もが机にかじりつき、参考書とにらめっこするか、教師の奪い合いをしている。


旧校舎にある特進クラスでも誰もが必死なのは変わりない、が。こちらでは少々事情が異なるようだ。


「青葉くん!ここの問題教えてくれない?どうしても分かんなくて」

「あら?そんな問題も分かりませんの?特別にわたくしが教えてさしあげますわ」

「いや、あんたに頼んでな……」

「青葉くん勉強で疲れたでしょ?糖分補給にパウンドケーキ焼いてきたから一緒に……あっ!」

「……まあまあの味れふね。……ん。青葉さんが作った方が美味しいでしょうけど」

「うっそ!あんなにあったのに全部食べちゃったの!?」


困り顔で微笑む少年と彼を取り巻く美少女たち。それを遠巻きに見守るぶすくれた表情の少年と彼を離れた席から眼鏡の奥の瞳で憎々しげに睨みつける少年。


彼らにかかればただのテスト期間もただでは終わらないようだ。


大変お待たせしました。

毎度毎度申し訳ありません…。


話はがらりと変わってテスト期間に入ります。

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