体育祭、これにて終幕!
「青葉くん、おめでとう!」
「ありがとう。みんなの応援のおかげだよ。あと、二階堂くんのおか……」
「最後に一位を取るなんて、青葉くんはやっぱりすごいね!」
「二階堂くんの……」
「わたくし感動してしまいましたわ」
「にか……」
「青葉っちさすがだね!」
「先輩かっこよかったです〜〜」
「…………」
「「〜〜ーー…………。」」
見事な勝利を飾った青葉は、団など関係なく特進クラスの女子たちに囲まれている。俺が見た中では最大級の規模だ。同じクラスはもちろん、先輩後輩まで寄り集まって、青葉を取り囲んでいる。
青葉の隣にいたはずの俺はと言えば、引き剥がされ、追い出され、少し離れた位置からその様子を眺めている。……なんか、デジャヴ。
しかし、今回はもっと可哀想なやつらがいる。そう、多目的リレーに出場している三年生組だ。
今年、三年生から特進クラスの出場はなく、全クラス男子しかいない。
すでに最後の競技は始まっているのだが……。俺には彼らの涙が鮮明に見える。
分かるぞ。お前たちの気持ち。頑張ってるのに見向きもされないその悲しさ。俺には痛いほどよく分かる。
それでも、がむしゃらに走るお前たちの有志。俺は決して忘れないだろう。
そんなこんなで全ての競技が終わり、閉会式を迎えた。
開会式と同じように、朝礼台の前に整列し、結果発表を待つ。
「今年の体育祭は例年以上の盛り上がりをみせました。皆さんの熱い闘いは城西学園の歴史の一ページに深く刻まれる事となるでしょう。それでは発表いたします。激戦を勝ち抜いて、勝利をつかみ取ったのは……!」
結果だけ言うと、俺たち属する赤団が優勝した。団長は雄叫びをあげ、配下はむせび泣き、一般生徒は普通に喜んでいる。負けた団も潔く赤団に惜しみない拍手を送っている。
ちらりと後ろを振り返ると青葉も他の団と同じように一緒になって拍手していた。嬉しそうに微笑むその顔は少しだけ誇らしげだった。
「そういえば、紙にはなんて書いてあったんだ?」
青葉の肩がびくりとはねる。
「え!?それは、その……」
閉会式を締める校長のありがたいお話の合間に、ふと気になったのだ。走者が持ってきた紙と借り物が合っているか進行係が判定するのだが、最後までお題は発表されない。
明確な理由は定かではないがこれだけは言える。分からないという事は人間の想像力を掻き立てるものだ。
それでも俺は選ばれたんだし真実が知りたい。決して“モテない人”とか“可哀想な人”とか書かれてたらどうしようと恐れている訳ではない。青葉はそんな理由で俺を選んだりしないって信じてる。
だからこそ、こうして真実を問うているのだ。
なのに。なぜ、さっきから目を合わさない。それ以上首は曲がらないぞ。ギネスにでも挑戦するつもりか?
俺がじとーっと睨み続けると、観念したように首をもとに戻した。が、言おうとして口ごもるを何回か繰り返す。……え?やっぱり俺に言えないような事書いてあったの?俺が疑心暗鬼に陥る寸前に、青葉はやっと言葉を発した。
「えっと、あの。僕なんかがおこがましいかもしれないけど……」
青葉はポケットに手を突っ込むと、一枚の紙を取り出した。さっきのお題が書いてあった紙だ。捨てずにずっと持っていたらしい。折りたたまれたまま手渡されたそれを広げるとお題が目に飛び込む。
『親友』
「あの、二階堂くん?」
「……ばーか」
紙を見て黙りこくった俺の顔を青葉が心配そうに覗き込もうとする。その額を小突くと青葉は痛っと条件反射で目を瞑った。その隙に上から頭を押さえつければ、青葉には地面と足下しか見えないだろう。青葉からは大いに戸惑いを感じるが知ったこっちゃない。
「当たり前だろ!」
太陽の光に反射して何かがピカリと光る。それは校長の頭とは別の輝きを放っていた。
それが何なのか突き止める余裕もなく、いつの間にか体育祭は終わっていた。
この後、『青葉くんに何してたのよ!』と特進女子になじられたのは余談だ。




