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映像は語る… 前編





この映像はある生徒が捉えた城西学園体育祭の多目的リレー二年の部の記録である。





雲一つない晴天と、揺れる陽炎。太陽がじりりと肌を焦がし、にじみ出た汗が顎を伝う。その時に向けて会場中が一本の糸に研ぎ澄まされ、時が止まったような一瞬の静寂に期待が凝縮される。永遠にも思えるその時間を破ったのは晴天を高らかに撃ち抜く空砲の音だった。それを合図に選手が一斉に走り出す。


「さあ!多目的リレー二年の部が始まりました!実況は引き続きこの私、二年D組の平塚がテンション高めにお送りいたします!」

声援とシャッター音が入り交じる中、若干どころかかなりテンションの高い実況が場を更に盛り上げる。

そんな映像の中心にはひとりの少年。

あちこち跳ねた髪を走るのに合わせてぴょこぴょこと躍らせ、始まったばかりにも関わらず、すでに虫の息だ。ぶっちぎりの最下位をひた走る彼こそがこの映像の主人公である。


「最初の選手が第一関門に到達しました!彼は青組の時枝くんです!さすが陸上部のエースとだけあって圧倒的な速さです!しかし!この競技は足の速さだけで勝敗は決まりません!それは最初の障害が証明してくれることでしょう。では、進行をどうぞ」

「第一関門は学校クイズです。トップでたどり着いた選手はラッキー問題となります。では問題。先日、体育の飯田先生が意中の人に告白して振られてしまいました。理由はなんでしょう?」

「…………」

しばらくの無音。その後に続々と到着した選手のために次々と問題文が読み上げられていく。

彼は息を切らしながらもなんとか問題に答え、五番手で通過した。




「第二関門は着ぐるみぴょんぴょんレースです!右から順にうさぎ、猫、犬、リス、パンダ、ウーパールーパーとなっており、我が城西学園の手芸部が一ヶ月寝る間を惜しんで制作に当たった力作となります。一位から好きな着ぐるみを選ぶ事が出来ますが、時枝くんを抜いてトップに躍り出た緑組の遠藤くんはどれを選択するのでしょうか!?おおーっと、遠藤くんが立ち止まっている間に白組の浅間さんが追い上げてきました!躊躇なくうさぎを選び、まさしくうさぎのごとく跳ね……」

このあたりでシャッター音がその他音声を掻き消し、解説者の声は聞こえなくなった。


ここで改めてこの映像について言及しておこう。

城西学園において体育祭は毎年、他校がドン引きするほどの盛り上がりを見せるが、この年の体育祭は更に特殊だった。

救護テント搬送者数過去最高。うち過度の興奮による失神者三名。鼻血による出血多量者測定不能。

救護テントは地獄絵図と化し、後に養護教諭は語った。

『一度でいいからわたしもおひ……じゃなくて。んもう、ほんっとうに大変だったんだから!次から次へと体操服を真っ赤に染めた女の子がひっきりなしに来て、猫の手も借りたいぐらいだったわ。しょうがないからその辺にいた生徒にも手伝わせたんだけど……』

(この後、愚痴が一時間以上続くため割愛。プライバシー保護のため音声は修正済み)

その年の体育祭は半ば伝説と化しているが、カメラやビデオといった記録媒体に最後まで残されているのは唯一この映像だけである。

理由はおいおい判明するのだが、今しばらく彼らのキョウソウにお付き合い願おう。

たいへん遅れてしまいました。

待たせてしまった方には深くお詫びします。

夏が私を放っておいてくれなかったんです。

気づいたら二ヶ月近く経っていました。

言い訳はこれくらいにして、少し短いですが先にこれだけ上げておきます。

続きは早めに書けるよう尽力します。

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