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本格派…

多目的リレー。

多目的とは言ってもなんてことはない。ほんの少し詰め込みすぎた障害物リレーだ。

これも特進クラスに美男美女が集まり始めてから出来た伝統行事の一つだったりする。

走者は公平を期すためくじ引きにより、各クラスから一名ずつ選ばれる。となっているがそんなのは建前で、大体のクラスで特進クラスの生徒が当たるよう不正が行われている。

気づかれないよう、走らせたい生徒に当たりしか入ってないくじを引かせたり、気弱な生徒だと泣き落としで走者に決められたり。

もちろん特進クラスだって黙ってはいない。決してはずれくじを引かないよう、万全の対策を施している。と言ってもうかうかしてると罠にハマる危険大だ。今年は二年の特進クラスから二名の犠牲者が出た。

ちなみに俺たちの場合は、青葉がくじを作り、渋るB組の生徒に有無を言わせずそれを引かせた。別に脅したわけではない。普通にお願いしただけだ。なぜか実行委員はものすごい汗をかいていたが、その日は暑かったのだろう。


というわけで俺たちは無事はずれくじを引くことなく、体育祭に臨んだわけなのだが、青葉の今日の運勢は最悪だったらしい。




一年、二年、三年と順番に行われ、初の多目的リレーを終えた一年走者たちは生きるしかばねと成り果てていた。打って変わって勝敗の行方を見守っていたはずの他の生徒たちは勝ち負けなんてそっちのけでえらい盛り上がりようだった。

青葉はすでにスタート位置に立っている。心なしか蒼ざめて見えるが体調は大丈夫だろうか。他のリレーと違い足の速さはあまり関係ない競技だが、体力ではない部分をがりがり削られる。

「毎年、えげつねえよな。青葉は大丈夫……か!?」

見ているだけでは心配で他に意見を仰ごうと振り返った俺が目の当たりにしたのは、超本格的な望遠カメラだった。

俺の隣にいつの間にか三脚が組まれ、望遠レンズはバズーカのように青葉に標準を合わせている。それだけでは飽き足らず、大野さんはビデオカメラを俺に手渡した。

「ビデオ撮影は二階堂に任せましたわ。岡倉くんはこっちをお願いします」

大野さんは岡倉に向かって望遠カメラを指差した。岡倉は分かったと苦笑いしつつ所定の位置につく。そこにすかさず藤木さんが声をあげた。

「そういうあんたは何をするのよ」

一眼レフを手にした藤木さんは大野さんを半眼で睨む。

「この目に青葉くんの勇姿を刻みつけます。……と言いたいところですが私はこっちで」

そう言って大野さんが取り出したのはスマフォだった。藤木さんはなるほどと納得し引き下がった。

……え?なんすか、これ?

なぜ俺はビデオカメラを持たされている。望遠、一眼レフ、ビデオ……。こんな本格的な装備をいつの間に揃えたんだ。

首を傾げる俺に岡倉が答えをくれた。

「大野さん達に頼まれたんだ。俺のお父さん、一応プロのカメラマンだから、機材を貸してくれないかって。お父さんに聞いたら古い機材だったらって事で、スタッフの人にさっき持ってきてもらったんだ」

「……へえ。お前の親父ってカメラマンなんだ。なんかすげえな」

岡倉は自分が褒められたかのようにえへへと笑う。美青年の照れた笑顔など女子が見たなら憤死ものだろうなと考えて。

いや、今注目すべきはそんなところではないと考え直す。普段ならばカメラマンだという岡倉の父に興味を持っただろう。

だがしかし、俺は美少女達にツッコミを入れるべきではないだろうか。小学生の子供よりも張り切っている家族でもここまではしない。……いや、今世の母さんは多忙のはずなのに毎年来てこれくらいの装備で俺の活躍を記録していたが。……どこもこんなものか。


何事も甘受することが肝心である。特にどうでもいいことにいつまでもこだわっていては無駄に神経をすり減らすだけだ。

すでに大野さんと藤木さんはベストポジションにつき、プロ顔負けの構えをとっている。岡倉もカメラをいじくりまわして青葉にピントを合わせているらしい。カメラマンの息子だからかなかなか様になっている。

……なんか、つべこべ言ってる方がカッコ悪い気がしてきた。とりあえず、渡されたビデオカメラの電源を入れようではなか。

次回、ようやく青葉が走ります。

ひっぱり過ぎました。

長かった…。

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