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レジャーシートの上にて戦は起こる…

俺は今とてつもなく感動している。


定番のおにぎりに唐揚げ、玉子焼きはもちろんのこと。そのバリエーションは非常に富んでいる。

おにぎりは塩握り、梅干し、おかか、ツナマヨ、ぴりっと香辛料の効いた菜っ葉の和え物が入った全五種類。

玉子焼きもふわふわの出し巻き卵に、砂糖が入った甘いやつに、小さく切られた根菜が入った変わり種まで全三種類。

唐揚げにはラップにくるまれたマヨネーズと、ネギが入った甘酢のようなソースが添えられている。

それ以外にも冷凍じゃない手作りのグラタンや梅とシソとのりを豚肉で巻いた不思議な揚げ物、レンコンの肉詰めなどなどなど。

一抱えもあるお重三段にふんだんに盛られた宝の山。一人占め出来ないことは口惜しいが、多人数用だからこそ可能な種類豊富なおかずたち。

体育祭バージョンの青葉の弁当は半端なくやばかった。

もはや女子力を超越し、主婦力の域に達している。

料理人を目指しているなら分かるが、普通の男子高校生が趣味でここまでの弁当を作れるだろうか?

答えは否だ。

大半のやつが俺のように包丁の握り方さえ知らないだろう。女子さえも台所に立てば惨劇が起こる場合があると聞く。というか実際にこの目で見た。俺的に理想の彼女は料理上手な女の子だが、昨今は女性の社会進出も進み、家事の全てを受け持つ必要はない。外食チェーンやコンビニ弁当も発展し、料理など出来なくとも生活に不自由することもない。

だからと言って将来の夢は素敵なお嫁さんですという初心な女の子が時代遅れというわけでもなく、それも社会でのひとつのあり方だ。重ね重ねになるが俺的にはこっちの方が胸キュンポイントは高い。ここはしっかりメモするように。

たくさんある選択肢の中からどれを選ぶかは本人次第。男だろうが女だろうが向き不向きがあり、必ずしも性別に合った才能を持っているとは限らない。そもそも性別にこだわる事こそ時代遅れだ。

適材適所。性別に関係なくやりたいことをやればいい。


つまり何が言いたいかといえばーー青葉が友達で本っっ当に良かった。

俺の人生の中でこんな幸運に巡り会えたのは万にひとつの奇跡に違いない。最初はいけすかないハーレム野郎とか思っていたが青葉を知れば知るほどその認識がとんだ見当違いで、偏見以外のなにものでもない事を痛感した。

口の悪い俺に愛想を尽かさず、こうして笑顔で弁当を振る舞ってくれる。青葉の前世は天使か仏だろう。どこかの自称天使ではなく本物の方だ。


神と青葉に感謝を捧げつつ弁当を堪能する俺以外は青葉の妹、樹里ちゃんを会話の中心に置いて盛り上がっている。しかし俺には彼らの輪に加わる余裕は一ミリもなかった。



レジャーシートを引いて弁当を中心に据えると、円を描くように座った。青葉が別に用意していた紙皿と割り箸を回すと弁当タイムの始まりだ。

まず玉子焼きに箸を延ばす。ふわっふわで出汁がじわっと染み出る。うまい。次いで唐揚げを頬張る。外はかりっと中はジューシーだ。うまい。左手におにぎりを持ってかぶりつく。梅干しだ。うまい。もひとつ玉子焼きを口に運ぶ。これは噂に聞く甘いやつ!?うまい!うますぎる!

と、こんな調子で食べていたのは始めだけ。


敵はすぐそこに、いた。


丸っこい揚げ物の正体を暴くべく箸を延ばしたその矢先、何かに掻っ攫われた。なに!?俺の揚げ物はどこへ行った!?

優れた動体視力で行方を追えば、形だけは可憐なその唇に吸い込まれていった。ゆっくりと咀嚼し、見せつけるように嚥下すればその唇は勝ち誇ったように弧を描く。

……いや、おかずはまだまだたくさんある。目くじらを立てるほどのことではない。さあ、気を取り直して花型に切られた人参の煮物を……。

と、見せかけて肉団子をつまみ、そのまま口に放り込む。うむ。これもうまいな。視界の端でオレンジの花が小刻みに揺れているが俺の知ったことではない。

会話などそっちのけで地味で無駄な攻防戦はしばらく続いたのだった。




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