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うちのお兄ちゃんはモテ過ぎて困る…

樹里はとっさに植込みに身を隠した。

見つけた先にいるのは二人の少年。一人はすらりと背が高く、ものすごいオーラを放っている。もう一人は大勢の中にいれば埋れてしまいそうな、けれど樹里の目にはきらきら輝いて見える探し求めていたその人だった。



樹里は宣言通り城西学園の体育祭に来ていた。

中学とは違う盛り上がりように高校ってすごいなあと感心していると午前の部が終わった。よし、お兄ちゃんを探すぞと思った時には遅かった。ちらりと見えた青葉の横顔はお昼の大移動が始まったために人の波に押し流され、完全に見失ってしまったのだ。

そんなこんなで初めて足を踏み入れた広すぎる学園内を歩き回り、帰り道も分からなくなったところでやっと兄の姿を見つけたはいいものの、緊迫した空気に気づいて出るタイミングを逃してしまった。



「なんか、喧嘩してる?」

植え込み越しに伺っていると二人はなんだか言い争っているように見えた。一方的に青葉が罵詈雑言を浴びせられているなら樹里もすかさず間に割って入っただろう。相手がクラスのドンだろうと未知の怪物だろうと躊躇いはない。

けれど、あの青葉が。いつだって一歩引いて静観する青葉が、ちょっとだけ眉を吊り上げて怖そうな人に言い返している。

すぐにいつもの優しい笑みに戻ったが樹里にはそれだけで衝撃だった。

「うそ、お兄ちゃんが……怒った?」



あまりの出来事に唖然とし気づいた時には人が増えていた。更に出にくくなったがお腹が切なく訴えるのでええーいままよ!と今見つけた風を装い、彼らの前に飛び出した。



そして、現在。

兄とその友人たちと兄の作ったお弁当を囲っている。

“なんでこんな事になっちゃったんだろう”

恥ずかしさのあまり穴があったら是非とも引きこもりたかったが、彼らの迅速な行動によりあれよあれよと言う間にお弁当を食べる段階まできてしまった。

朝、皆でお弁当を食べると青葉が言っていたがその輪に自分が入るなんて思っておらず、完全に油断していた。

青葉の友達とやらを確認した後の事は全く考えていなかったのだ。しかもお腹の虫の忍耐力のなさ。まさかあのタイミングで鳴るなんて狙っていたとしか思えない。

健全な女子中学生の羞恥心を持ち合わせた樹里にこの状況はものすごくいたたまれないが背に腹も変えられない。

こうなったらいろいろ見極めてやる!と箸を片手に決意を新たにしたところでお弁当を食べながら樹里のための簡単な自己紹介タイムが始まった。

「青葉くんの妹に会えるなんて嬉しいな。あたしは井上のの。樹里ちゃんって呼んでいい?」

「わたくしは大野サラサと申します」

「私は藤木美和子。よろしくね」

「僕は天野ユエルです。あなたの将来のお姉さ……むぐ!!」

最後の人は途中で口を塞がれた。前の部分も聞かなかった事にして樹里はにこっと笑う。

「お兄ちゃんのお友達は綺麗な人ばっかりなんですね」

当然ですと胸を張るユエルは放っておいて褒め言葉に慣れているはず三人は青葉の妹の言葉だからか嬉しそうに頬を染めた。

そんな彼女たちに口では平然と言ってのけたが樹里は内心思いっきり叫びたかった。

なにこの美形率!右から順に美形、美形、一個もとばさず全員美形。ゆるふわ系の美少女に、お嬢様系美少女、クール系美少女と、正統派美少女。

高校ってやっぱりすごいなあと感心するも兄至上主義の樹里は外見のみに惑わされず、一つの真実を見抜いていた。

彼女たちは全員青葉に好意を寄せている。甘い蜜によってたかる蝶々たちを追い払ってきた樹里にしてみれば一目瞭然だった。

樹里は思わず兄を半眼で睨む。昔から女子を無自覚にたらしこんでいたが高校では格段にレベルアップしている。自慢の兄がモテるのは分かるし、仕方ないとも思うがもう少し自覚して欲しい。

そんな樹里の気持ちを青葉が今さら酌んでくれるはずもなく。

「こっちは二階堂静くん。その隣が岡倉雅人くんだよ」

「…………」

「よ、よろしく」

残る二人について聞かれたと思ったのか樹里の視線の意味にも気づかずににこにこと紹介を続けたのだった。


このままもう一話続きます。

主人公の存在は頑張って感じてください。

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