はらへり少女は世界を救う!?
「樹里…頭に葉っぱが付いてるよ。今度はどこを通って来たの?」
青葉は苦笑してその葉っぱを取ってやる。けれど少女は怒ったように眉を釣り上げて青葉に詰め寄った。
「お兄ちゃんがどこにもいなからあちこち探したんだからね!高校来るの始めてだし、お腹空いたし、無駄に広いし、人多いし、お腹空いたし」
「ごめんごめん。色々あって迎えに行けなかったんだ。あっ、紹介するね。僕の妹の青葉樹里。ここが志望校みたいで来年は後輩になるかもしれないからみんなよろしくね」
肩ほどの長さの髪は癖っ毛なのかあっちこっち跳ねており、前髪は眉のあたりでぱっつんにしている。青葉の妹とあって顔立ちは良く似ているが女の子だからか結構可愛らしくみえる。比べる対象が論外過ぎて完璧に俺の主観だが。背も中三というのを差し引いても低めで小動物のようだ。井上さんをウサギとするなら彼女はリスだろうか。
青葉以外目に入っていなかったらしく、今気づきましたと言わんばかりに青葉の妹は俺たちを見て目をひん剥いた。
そりゃ、そうだろう。俺を含めまたとは見れない美形がこの場に集まってるのだ。驚くのも無理はない。
「あ、えっと、こんにちは。お兄ちゃんのお友達?」
普通の女子ならここで頬を赤らめてぽや〜っとするか、本能剥き出しに迫ってくるかのどちらかだが青葉の妹は目を眇めて俺たちを品定めするような視線を送ってくる。“お友達”というところを強調したのは俺の勘違いではないだろう。そもそも最初に俺たちが眼中になかったという時点で彼女のブラコン具合が分かるというものだ。
「そうだよ。みんな同じクラスなんだ」
青葉のその言葉にいったん警戒大勢を解いたのかにこっと笑って自己紹介をした。
「はじめまして。青葉樹里、中三です。お兄ちゃんがいつもお世話になってます」
そう言ってぴょこんと頭を下げる。
あれ?一瞬、頭の中を何かの記憶が掠めていった。もう一度その記憶を引っ張り出そうとしたところで誰かの腹の虫がぐう〜〜と鳴いた。
「「…………」」
青葉の妹は頭を下げたままお腹に手を当てて受付嬢のような綺麗なお辞儀を披露した。
一瞬の沈黙の後、弁当を食べるために各々が動き始めた。はらへり少女のためにいつになく全員の動作は一丸となって速かった。
さすが青葉というべきか抜かりなく用意されたレジャーシートを木陰に敷き青葉の弁当を中心に置いて、その周りを俺たちが囲む。
青葉の右隣に青葉さん……は違和感あるから樹里ちゃん、かな?が座り、天野さん、井上さん、藤木さん、大野さん岡倉と続く。
いつもならここで一悶着ありそうなものだが今回はすんなりと決まった。それもこれも樹里ちゃんの存在が大きい。樹里ちゃんが青葉の隣になるのは当然で年上ばかりに囲まれては落ち着かない。お兄ちゃんの隣が一番安心出来るだろうとの暗黙の配慮だ。必然的に青葉の隣の席は一つとなるのだが、将来の妹(仮)の前で争うほど彼女たちも盲目ではないため不承不承ながら互いに譲る形となった。すると自然俺が青葉の隣に座ることになり、最近ではすっかりくっつき虫となった岡倉が俺の左隣となるわけだ。
別にこの並びに不満があるわけではない。ただ女子が五人もいるのに野郎に挟まれているこの状況に納得できないだけだ。
……まあ、いいや。予想に反して早くに青葉の弁当にありつけるのだ。それだけで良しとしようではないか。




