大丈夫か……?
組分けも無事終わり、翌日の五限目。
俺たちはB組に来ている。六人六組に分かれた後は三木の独断によりそれぞれのクラスに振り分けられた。
そうそう三木っていうのは我がクラスの学級委員長だ。鏡を所持していない貴重な男子でもある。しかしクラスきっての変人でもあった。
基本面倒くさがり屋で帰りたいが口癖。動作ものろのろとしていてワンテンポ遅い。一見もさいが例にもれずぼさぼさ頭の下はイケメンで真実の姿を見たものは心臓を撃ち抜かれるといういわく付きの男だ。そんな三木がなぜ学級委員長をしているかといえば、早く帰りたいからだそうで。
城西学園では自主性を重んじるため大体の事は生徒に一任している。そのため決め事の際は学級委員長を中心にクラス全体で話し合うのだがなかなか話が纏まらない時がある。結局どこかしらにたどり着くのに硬直状態に陥りやすいその時間が無駄で嫌だということで。三木の信条は即決即断。委員長決めの時も三木が真っ先に立候補しものの三十秒で終わった。
そんな感じで委員長権限を最大限に活用しちょっとした独裁政権を築いている。
特に反発する理由もなくクラスは三木の言いなりだ。その辺はなかなか仲のいいクラスと言えるかもしれない。
委員長は雑用があるんじゃないかと思うかもしれないがそこは特進クラス仕様。他のクラスの委員長に比べればずっと少ない。無駄な話し合いと雑用を天秤にかけた結果、委員長をやってるぐらいには仕事はそんなにないと予想できる。
とまあ三木について長々と語ってみたものの、現実逃避には物足りない。
教室に入った瞬間の阿鼻叫喚。これが同じ敷地内で美少女とイケメンを彼らから隔離した弊害だ。無事だった者たちによる手馴れた介抱により一旦の収束を見せる。
しかし、突き刺さる視線が痛い。
ものすごく見られてる。他の五人は平気な顔をしているから感じているのは俺だけらしい。あの熱烈な視線はやはり俺に向けられている。
美男美女が前に立ってるんだから見られるのはあたり前。俺だって女子からのうっとりとした眼差しなら大歓迎だ。
だが、これは違う。女子の大半が見つめているのは岡倉と藤木さんだ。天野さん、大野さん、ついでに青葉もそれぞれ視線を集めているが俺に向けられたそれは異質だった。
……そう、俺は野郎に見つめられている。
おい。なんでそんな目で俺を見るんだ!ありがたやーて手を合わせるな!拝むな!俺が睨むとびくっと肩を震わすものの嬉しそうに頬を染める。
俺はその惨状に耐えかねて静かに目を逸らした。
もう、深く考えるのはやめよう。
その先で青葉と目が合う。
「二階堂くん。どうかした?」
のほほんとした微笑みになんとなく和んだところで一番ヤバイ視線が鋭さを増す。
「いや……なんでもない」
見てる。見てる。見てる。野郎共より危険なそれは俺と青葉に注がれている。窓際から三列目。後ろから二番目の席。時代錯誤な三つ編み眼鏡。
入った瞬間から殺気とも呼べる禍々しい気配を放っていた。
……が、嫌な予感しかしないから深く考えるのはやめよう。
うん。考えない。……考えない。…………。
「なあ、青葉!お前は今年何やるんだ?」
クラスの後ろに席を用意され競技決めが始まった。今は実行委員が今年やる競技を説明しつつ書き出している。
少しでも気を紛らわそうとして青葉に話しかけたが失敗だった気がしないでもない。
「僕は……玉入れがいいな。二階堂くんは?」
「俺は別に……なんでも」
「二階堂くんなら何をやっても一番だよね。俺も玉入れがいいなあ」
反対隣に座っていた岡倉が青葉と同様憂鬱げに呟く。
ああ、そういえばこいつら……。
「なんで体育祭って全員強制参加なんだろう……」
遠い目をした二人は極度の運動音痴だ。四月の体力テストでも女子を合わせてワーストワン、ツーを叩き出していた。
「……まあ、頑張れ」
諸々を含めこのクラス、大丈夫だろうか……。
と言いつつ、なんだかんだで俺たちの体育祭は無事開催の日を迎えた。




