道のりは果てしなく遠い…
すったもんだの末、やっとメニューが決まった。
定番のハンバーグにポトフ、彩りサラダにアップルパイと弁当の時とは打って変わって純洋風だ。
「じゃあ、藤木さんと大野さんは野菜を切ってくれる?井上さんと天野さんはアップルパイの仕込みをお願い。岡倉くんはお肉をこねてくれるかな?」
青葉はてきぱきと指示を出し段取りを整えていく。その姿を女子四人は陶然と見つめ、岡倉は神妙に頷いた。
「頼んだぞ。青葉」
一応それだけ声をかけておく。まあ、作ってもらう身だし?
うん?俺は手伝わないのかって?ふっ……。前世も合わせて包丁を握ったこともありませんがなにか?料理を出来る青葉が特別であって普通の男子はそんなスキル持ち合わせていない。それに俺は料理上手な彼女を作る予定だから何一つ問題はないからな。……予定は未定とか言うなよ?
「うん。キッチン借りるね。期待に添えられるよう頑張るよ」
「まったくいいご身分ですね」
天野さんがふんと鼻をならした。青葉が諌め、井上さんがフォローを入れてくれる。
「まあまあ。お世話になってるのはこっちだし二階堂がいても邪魔なだけだからそんなこと言っちゃだめだよ」
それもそうですねと納得する天野さん。おい。邪魔ってなんだ邪魔って。藤木さんも大野さんも頷くんじゃない!青葉は苦笑し岡倉はオロオロし反論する言葉のない俺はすごすごと下がり壁と同化した。
なんだかこのパターンが定着してる気がしないでもない。いや、気のせいだろう。気のせいに決まってる。……あれ?これもパターン化して……全部気のせいにしておこう。
とうとう始まった作業が順調に進んでいく……ことはなく、
「あれ?身がなくなちゃった?」
「まあ、皮むきも満足に出来ないんですの?」
「なっ!?あんたこそ全然切れてないじゃない!!」
「…っ!!?ど、どこから切ろうか考えてただけですわ。決して包丁の使い方が分からないわけではありません」
「ああ〜ー!?天野さん待って!!どうしてお砂糖を袋から直接入れようとしてるの!?」
「??砂糖を入れればいいのでしょう?」
「だめだよ!ちゃんと計らなきゃ!!お菓子作りは正確さが大事なんだから!」
「そうなんですか?」
「そうなの!!」
「…………」
…………カオス。
井上さんと大野さんは目も当てられない。まず包丁を持つ手が俺から見てもぎこちないし些細なことで口論を始めた。この二人は喧嘩するほど仲が良いと言うのかこういう言い争いは結構頻繁にしているが包丁を持ったままするのはやめてくれ……。色んな意味でヒヤヒヤする。
すかさず青葉が仲裁に入り包丁の使い方を教え始める。先に手本を見せ、間違った持ち方をしている大野さんの後ろにまわり手を添えてこうだよと直しながら爽やかに笑って見せた。ふらりと立ちくらんだ大野さんを押しのけて藤木さんが私にも教えて!と突撃していく。
ええと。男物のエプロンはどこにあったかな。……って俺は料理できねぇんだよー〜!!青葉ばっかり美味しいとこ持っていきやがって!
井上さんと天野さんに関しては……井上さんにどんまいとしか言いようがない。普段からクッキーなどを作って持ってくるだけあってお菓子作りは得意のようだが相方に任命された天野さんがあまりにもずさん過ぎる。
卵を割るにしても力が入りすぎて殻まで粉砕しまさしく卵を叩き割っている状態だ。井上さんはそんな天野さんを制止しつつ作業するも天野さんがその分台無しにするため全く捗っていない。
一方騒々しい面々をよそに岡倉は無心で肉をこねくりまわす。無表情が逆に怖い。何考えてるんだあいつ?
……いつになったら完成することやら。
俺は気長に待つことにした。




