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フツメンに生まれたかった…  作者: 橘アカシ
二階堂邸in青葉のお料理教室編
15/63

お願いだから……





「やっぱり可愛い子はこうでなくっちゃ!」

自身がデザインしたワンピースに着替えた天野さんを見て満足げな母さんに井上さんが前のめりになって賞賛する。

「とっても素敵です!いいな〜天野さん。鈴蘭さんにコーディネートしてもらえて!」

「あら〜、そんな風に言ってくれるなんて嬉しいわ。もし良ければあなた達の服も身繕わせてくれる?」

「えっ!?本当ですか!?」

「まあ、光栄ですわ」

「あたしまでいいんですか?」

母さんの提案に美少女三人は嬉しそうに頬を染め、尊敬の眼差しを送っている。先ほどの会話から井上さん達は母さんのファンだったらしいことが分かったが、おかしいな。俺、“鈴蘭さん”の息子なんだけどな。なんだかとっても不遇な扱い……。気のせいか。

意気投合してしまった美少女三人+母さんは俺たちを置いて盛り上がっていく。しかも話の方向性が怪しくなってきた。

「……でね?自分でデザインした洋服を子供に着せるのが夢だったんだけどしーちゃんったらちっちゃい頃から妙におませさんで嫌がって全然着てくれなかったのよ?」

ひどいでしょー?と頬を膨らますアラフォ……げふんごふん、母さんに美少女達はキッと俺を睨んできた。ちょっと待て!

「それは母さんが女の服を着せようとしたからだろ!」

転生前の記憶を持っていて良かったと思う唯一の瞬間かもしれない。どんなに幼くても中身は一応高校生男子の羞恥心を持っていたわけで。言葉も覚束なかったが母さんが着せようとしてきたびらっびらのドレスは断固拒否した。それこそあまり泣かず比較的聞き分けのいい子供だったことを自負しているがその時ばかりは手足を振り回して号泣した。

さすがの母さんもそんな俺に無理強いは出来なかったらしい。まあ、成長してからは一切なくなったが。

「ちっちゃい頃はほーんと可愛いかったのよ?おめめもくりっくりでふてぶてしい感じが懐かない猫みたいで愛らしかったのに。はあ。パパに似ちゃって……」

物憂げにため息をつき残念そうに俺と父さんを見比べる。似ちゃってなんだ?その言い方だと俺だけじゃなく父さんまで貶すことになるけどいいのか?父さんはあいかわらず無表情で紅茶をすすっている。そんな父さんを美少女達がフォローする。

「そんな!二階堂のお父さんはとっても素敵です!」

うんうんと頷いてますが“は”ってなんだ。俺は?

そんな俺にはこちらからフォローが入った。

「……ドレス姿の二階堂くん。可愛かったんだろうなあ」

「うん。見てみたかったね」

あれ?今日は暑いのか?青葉と岡倉の顔がまたも赤いぞ。まだ春が終わったばかりなんだけどな。おーい。二人ともどこみてるんだ?天井には何もないぞー?

どこかへトリップしてしまった二人は見なかったことにして天野さん。なんでそんな悔しそうな顔してるわけ?あ、俺のドレス姿見たかった?でもなー。天野さんの頼みでもそれはなー。とか考えていたら天野さんにまで睨まれた。

「……鈴蘭。そろそろ」

「え?もう行くの?まだいいじゃない!こんなに女の子がいるのに!」

ここにきて始めて口を開いた父さんに母さんが駄々をこねる。

「駄目だ」

父さんは眉を顰めて一言。夫婦はしばらく睨み合い何かが通じて母さんが折れた。

「……分かったわ。しーちゃん、ちゃんとお友達をおもてなしするのよ?帰りはあんまり遅くならないようにしてみんなを送ってあげること!可愛い子ばっかりなんだから攫われちゃうんだからね!」

「わーってるよ!さっさと行けって!」

「んもう!その口の悪さは誰に似たのかしら?ママ認めてないんだからね!……あっ!まだ話は……っ!」

未練がましく俺に言い募る母さんを引っ張って父さんは無表情のままグーサインを出して去っていった。

やっと行った……。父さん、ありがとう。無口でも締めるところは締める父さんをマジで尊敬する。

精神をごっそり削られソファーに突っ伏す俺にやっと平穏が訪れる……わけもなく。

「なんだか賑やかなご両親だね」

青葉が微笑みその他がなんだか複雑そうな顔をする。なんとなく気まずくなった空気の中今度は天野さんが口火を切った。

「さて。せっかくですしあなたの自室でも見せてもらいましょうか?」

…………なぜに?

天野さん。そんなに俺に興味があるのか?とうとう俺の魅力に気づいたに違いない。いやー。天野さんたっての望みなら叶えるのはやぶさかではないとも。

……だから見るからに何か企んでますっていう嗜虐的な顔するのやめてもらえません?

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