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フツメンに生まれたかった…  作者: 橘アカシ
二階堂邸in青葉のお料理教室編
13/63

父は無口。母は強し!?





「着いたぞ。ここが俺ん家」

懐かしの我が家を見てさっき出たばかりだというのにほっとするのはなぜだろう?駅から家までの道中だけでも人だかりに揉まれ、盾にされ……俺が。美少女とイチャつき……青葉が。まだつかないのかと美少女に貶され……俺が。岡倉に穴が空くほど見つめられ……俺が。やっと辿り着いた愛しの我が家。布団に引きこもっていいだろうか?

げっそりとした俺に岡倉がまたも信じられないといった驚愕の表情で俺をガン見してくる。

「ここが、二階堂くんの……?」

「だからそう言ってるだろ。とりあえず入れよ」

不可解な反応をする四人はこの際無視して扉を開ける。やっと一息つけると思ったのも束の間家の中にも嵐はいた。

「しーちゃん!本当にお友達を連れて来たのね!?」

そう言って抱きついてきたのは美少女もびっくりの二十代前半の美女。スパンコールを随所にあしらった黒いイブニングドレスを着た美女を一言で表すなら妖艶。緩めに結い上げたうなじの後れ毛にくらくらくるとかこないとか。しかし……

「やめろ!離せ!」

後ろからの視線が痛い。絶対勘違いしている。しかし美女は気にした様子もなくぎゅうぎゅうと締め付けてくる。

「く、苦しい!!離せって、……母さん!」

「「「へ………っ??」」」

後ろの六人は目を点にしていることだろう。それもそのはず子供がいるようには見えないこの美女こそ何を隠そう俺の母親、二階堂鈴蘭。二十代に見えても実は年増なアラウンドふぉー……

「しーちゃん?今、とっても嫌なこと考えてなあい?」

声はとてつもなく猫なで声だが気のせいだろうか?背骨からみしみし聞こえてくる気がする。……気のせいじゃない!

「な、なんにも考えてねぇ!それより!なんでまだいるんだよ!もう、行ったんじゃなかったのか!?」

うまく気をそらせたらしい。母さんはぱっと俺から離れると子供のように瞳を輝かせて後ろの六人の顔を食い入るように見つめた。……我が母ながら感がよすぎる。

「この子達がしーちゃんのお友達ね!始めまして。しーちゃんの母の二階堂鈴蘭です」

母さんの勢いに若干引きつつ六人もそれぞれ自己紹介をしていく。

「まあまあ!こんなにもお友達が出来たなんて!ママ感激!!私くらい社交性があったら良かったんだけどほらこの子パパに似て愛想も何もないでしょ?今まで彼女どころかお友達の一人も連れてこないものだからとっても心配してたんだけど杞憂だったみたいね!今日もお友達を家に呼ぶだなんて言うからとうとう妄想の中のお友達をなんて思って見届けようと待機してみたらこーんなに素敵な子を六人も連れてくるんですもの!」

待ってて良かったわねパパ。なんて言って振り向く母さんに同意だと言わんばかりに父さんが頷く。ちなみに父さんはずっと玄関に立っていた。

妻に無愛想と言われたピンストライプの黒スーツの男、二階堂征治。無愛想と言われただけあって男前な顔は常に無表情。引き結んだ唇と眼光鋭い瞳。背の高さもあいまってなかなかの威圧感を醸し出しているが妻の尻に敷かれ見掛け倒しな部分が大きい。父さんも類稀なイケメンなのだが母さんといるとこう、影が薄いと言うか残念な気がするのは俺の思い違いだろう。

母さんのマシンガントークにぽかーんとしていた俺たちだが言われた事を反芻しふつふつと羞恥心が湧き上がってきた。……何言ってくれてんだ、母さん!

「出かけるんだろ!さっさと行けよ!」

これ以上何か口走られたらたまったもんじゃない。追い出しにかかるが母さんは全く引く気がなかった。

「えぇ〜。やーよ。今からしーちゃんのお友達とお茶しながらゆっくりと話すんだから」

「時間は良いのか!?遅れるぞ!?」

「しーちゃんったら。夜会は夜にやるものでまだお昼を過ぎたところよ?まだ全然早いじゃない。……あっ!!私ったらごめんなさいね。しーちゃんのお友達を玄関先で放ったらかしちゃうなんて。さあ、上がって上がって!狭い家ですがどうぞ」

母さんは俺を押しのけて青葉達を促す。未だにぽかーんとしてた青葉達もその言葉にぎこちない笑みを浮かべ家へと入っていく。

「こちらこそ、お邪魔します」

「いいえ。自分の家だと思って遠慮しないでね」

そんなやりとりを交わす青葉と母さんの裏で打ちひしがれていた俺に追い打ちをかける奴がいた。天野さんが麗しい顔を意地悪く歪めて一言。

「ふーん。家ではしーちゃんって呼ばれてるんですね?」

……終わった。

青葉の手料理を食べたいと思った代償は計り知れない程大きかった。

日曜日の午後は始まったばかり。布団に引きこもっていいだろうか?

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