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フツメンに生まれたかった…  作者: 橘アカシ
新しい始まり編
12/63

いざ、二階堂邸へ!

日曜日午後一時。二分前。髙田駅にて。

いつもは足早に通り過ぎて行く人波が一所に集まり何かを喰い入るように見つめている。

俺はその様子を遠くから眺め深いため息をつくと人混みを掻き分けるようにその中心に向かった。

「二階堂!遅いわよ!私たち全員集まってたんだからね!?」

真っ先に気づいて文句を言ってきたのは藤木美和子。肩ほどの長さの髪をポニーテールにしてチェックのシャツにジーパンというなんともボーイッシュな格好をしている。

「仕方ありませんわ。二階堂ですもの」

さらっとお嬢様言葉で毒を吐いてきたのは見た目もお嬢様な大野サラサ。白いワンピースに紺色のボレロ。色素の薄い髪は期待を裏切らない縦ロールだ。

「まあ、二階堂はおまけみたいなものだし良いんじゃない?」

フォローのようで内心だだ漏れな井上のの。トレードマークのうさぎ耳ヘアーは今日も健在で膝丈のフレアスカートにピンクのもこもこトップの姿はゆるふわ系の代表と言っても過言ではない。

うん。足を止めて見入ってしまうのは仕方が無い。雑誌から抜け出してきたような否それ以上の美少女が三人も揃っているのだ。野郎共は鼻の下伸ばすどころか魂飛ばして固まっている。

俺もその中に加わりたかったがその美少女三人が待ちくたびれているのだ。彼女たちの元に行かないわけにはいかなかった。

羨望と嫉妬の視線を浴びながら彼女たちの前で立ち止まった。

優越感に浸りながら……とはいかず。

「ちょっと五分前集合は常識でしょ!あんたの家に行くから待っててあげたけどそうじゃなかったら置いてってるんだからね!」

藤木さんは尚もくってかかってくる。 そんな彼女にごめんごめん待たせちゃった?とか言える俺ではなく……。

「一時集合って言ったんだから遅れてねーだろ!五分前に拘るなら五分前に設定しろよ」

悲しいかな前世からの癖が直っていない俺は美少女に喧嘩腰で答えてしまう。美少女に軽蔑の目で見られ俺は再びため息をついた。

正直代わって欲しい。誰もが羨みそうな状況になぜ?と思うかもしれないがお忘れだろうか?今日ここにいるのは俺を含めた七人だ。

「に、二階堂くん!きょきょきょっ!今日はよろしくね!」

しどろもどろなこいつは岡倉雅人。黒のタイトパンツにミリタリーブーツ、黒いシャツとシックに決め、我がクラスメイトながら斜めに流した前髪の下は普通の女子が嫉妬するレベルの色白美肌でイケメンと言うよりは美人だ。が、いかんせん挙動が不審過ぎる。俺と身長は変わらないはずなのに何故か上目遣いで見られるという不可思議な状況だ。

「わざわざ来てあげたんです。さっさと案内してください」

尊大に言い放ったのは最後の美少女天野ユエル。前の三人同様野郎共の視線を集めているには集めているがなんというか、うん。どこにあったそれと突っ込みたくなるようなロングスカートに形容し難いデザインのTシャツ。中学生が履くような運動靴。よれよれではないためお古とかではなく決して貧乏だからというわけでもなくそれならなんだと言われれば……。よしておこう。俺の口からはとてもではないが言えない。

「はは。なんかごめんね?二階堂くん」

色物ばかりの中で眉尻を下げて苦笑するのは青葉浩一。カーゴパンツにパーカーとなんとも平凡な格好をした青葉は逆に目立っていた。普通なら他に埋れて存在自体気づかれなさそうだがなんてたって美少女が花を飛ばして囲っているのだ。嫌が応にも目がいってしまう。あいつは何者だ。なんであんな奴が美少女はべらしてるんだと当初の俺のような視線を向けている奴も少なくない。

「とりあえず行くぞ。ここはうるせぇ」

「さっきからそう言ってるじゃないですか!……だからモテないんですよ」

天野さーん。ぼそっと言ってますがばっちり聞こえてます。気のせいか?井上さん達もそうそうと頷いている気がする。うん。気のせいだな。

ここに留まり続けたら色んな意味で暴動が起きかねない。気を取り直して俺がさっさと歩き出そうとすると数人の女子が行く手に立ちはだかっていた。

「あのっ……!一緒に写真撮って貰えませんか!?」

その手にはスマフォを持ち写す気満々で構えていた。

彼女たちの目がきらきらと輝いていて断るのもなんだかなーとかどうすべきか思案していると意外なことに青葉が俺の前に出た。

「君たちはこの中の誰かと知り合い?」

唯一平々凡々な青葉に話しかけられ女子達は怪訝な顔をしているが渋々と言った感じで答えた。

「違うけど……」

だからなに?と言いたそうな女子達に青葉はきっぱりと言い切った。

「それなら写真を撮る理由はないよね?僕らは行く所があるからもういいかな?」

暗に向こうへ行けと言われた女子達は正確に真意を読み取り顔を真っ赤にして怒りをあらわにした。

「なんであんたにそんなこと言われなきゃなんないわけ!?」

「見るからに冴えない優男がこの人達と一緒にいられるの?どうせ無理やりくっついて来てるんでしょ」

「サイテー。あんたみたいなやつうざったく思われてるって気づかないわけ?」

写真を断わられただけですごい言いようだな……。女子達が可愛子ぶりっ子をやめて青葉を罵り始めた。青葉は平気な顔で聞き流しているが……。

「おい。何も知らないくせに良くそこまでずたぼろに言えるな?……通行の邪魔だ。どけ」

……しまった。真っ先に俺が断れば良かった。ちらりと後ろに振り向くと美少女四人が青葉の後ろ姿をうっとりと眺めていた。ノーと言える男はモテる。普段の温厚なイメージとのギャップで俺にもカッコ良く見えてしまった。くっそう!

青葉の後に言っても俺の言葉に効果はない。三度ため息をつくと何故か割れた人垣の間を抜け俺たちは駅から離れた。


「ところで、二階堂の家までどうやって行くんですの?」

しばらく誰もが無口で歩いていたが大野さんが何事もなかったように口を開いた。

「二階堂のことだから車で迎えに来るかと思ってたけど……」

そう言って藤木さんがきょろきょろと周囲を見回した。しかし車なんてあるはずがない。

「俺まだ十六なんだけど」

日本の法律で免許は十八歳からと決まっている。それでも運転してたら俺はお縄についてしまう。そんな危険を犯してまで俺に運転させようとしているのだろうか。まさか警察にぶちこんで青葉から引き離そうという計画かと妄想を膨らましていると井上さんが呆れたように答えてくれた。

「違うよ。お抱えの運転手さんがいるんじゃないかなって」

「は?そんなのいねーよ?」

なぜにそんな発想?あれだろうか。よく漫画とかであるブルジョアな学生の登下校みたいなものだろうか。

俺が頭にはてなを浮かべているとなぜか青葉と天野さん以外が呆気に取られたような表情になった。

「……ど、どうやって行くの?」

当たり前の問いをしてくる岡倉に俺は当然の答えを返した。

「歩いてに決まってんだろ。そんなに遠くないし」

「そ、そうですか。では案内をお願いいたします」

戸惑い気味の四人に首を傾げながら六人を引き連れて我が家へと向かった。

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