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マドネス・モンスターをおっぱらえ

 僕が奇跡を使えるようになったのは、およそ一ヶ月前のこと。


 日本政府においては『事変』と呼称されている———日本と魔界との重(・)複(・)が起きてしまった時と重なる。


 前々からニュースなどで聞いていたが、どうやら僕たちの住む世界とは別に、劣悪極まりない環境で生きる魔物たちが暮らす魔(・)界(・)という世界があるらしい。


 で、2万年と1500年の周期で繰り返し発生するのが、僕らの住む世界と魔界との重(・)複(・)だ。これが起きてしまうと、本来ではあり得ない『世界と世界の干渉』が起きる。まあ端的に言えば、魔物が魔界からこっち側の世界にやって来て、悪さしちゃうよ〜ってことだ。


 ただ、だからと言ってこっち側の世界もただ黙って魔物たちの餌食になるワケじゃない。


 新兵器やら何やらを開発し、対魔物の政策を練りに練ってきたらしく、今年の防衛費は全体予算の99.1%を占めるという徹底ぶり。当然だ。人類存亡———日本存亡の危機なのだから、海外からも日本への防衛費支援が後を絶たなかった。


 ———話が見えないって? じゃあ、もっと分かりやすく言おうか。


 一ヶ月前の今日、僕は魔物と出会った。そして、その魔物に突然口付けをされたのだ。


 その魔物は、魔物らしい見た目をしていなかった。どうやら、魔物の中にもマトモなヤツがいるらしく、魔界でも重(・)複(・)が起きる際に、どのようにことを収めるか協議していたらしい。


 で、その協議を率先して取りまとめたのが、魔界のモンスターのうち、著しく僕ら人間に近い容姿を持つ『天使族』と呼ばれる者たち。彼らは僕らに懐柔し、重(・)複(・)の間、互いが必要以上に傷つかないようにするため、こちらの世界へやって来たとか何とか……


 正直、僕もアンマリ分からない。たかが高校二年生の頭脳で、この超次元的な事象を全て理解しろと言うヤツの方に無理がある。


 はじめこそ天使を信じられはしなかったが、どうやら彼女にも彼女なりの目的意識があるらしく、人間を血眼になって守る姿を何度も見せられては、僕も一旦は信用してみようかという気持ちになったワケである。

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