マドネス・モンスターをおっぱらえ(2)
校庭から、モンスターたちの叫び声が聞こえる。
「うわあああああああああああ!」
合わせて、生徒たちの悲鳴も。
「うわあああああああああああ!」
このままではマズい。思ったより、モンスターは多い。とにかく僕も参戦して、ちゃんと奇跡を運用しているところを見せないと、また没収されて登下校・買い物などに支障が……
ところで、先ほどから聞こえる『うわああああああああああ!』が誰の悲鳴かご存じだろうか。
何を隠そう僕の悲鳴である。
「うわあああああああああああああ!」
ま、マズいマズい! いつものノリで高所から飛び出したものの、今朝方に僕の奇跡は没収済だ。すっかり忘れていた、というか身体が勝手に飛び出していた。このままじゃ、犠牲者をnとした場合(n+1)=犠牲者の『+1』の部分が僕になってしまう。しかもモンスター来襲とは別件で勝手に死んだやつになってしまう。それだけは避けねば。
「フンヌ! フンヌ!」
僕は、まるでう○こを出す時のごとく背中に力を集中させた。しかし、やはり没収された奇跡を使用することはできない。
情けなくも、戦闘する天使の方へ目配せしてみるものの、天使がこちらの半泣き顔に気づくことはなかった。ああチクショイ!
みるみるうちに地面が近づいて来る。同時に、脳内を走馬灯のような映像が流れ出す。なんか知らんが、生まれた瞬間から幼稚園時代、小学・中学の思い出を経て、懐かしい映像が再生された。生命の危機に瀕した時に見ることができると聞いていたが、まさか本当に見れるとは。
ただ、駄目だ。走馬灯の中に、今の状況を切り抜ける手段は一切存在しない。というか、遊んでばっかの走馬灯で何も参考にならない。チクショウ。
———走馬灯TVの最後の最後、僕が見たものは……
一ヶ月前にモンスター天使から、奇跡の授与を受けた時の熱烈なキスであった。
途端、僕は落下しながら身体をぐるりと反転させ、着地の構えを取る。
駄目だ……まだ死ねない。だって、ファーストキスが、ファーストキスが……
「クソぉぉぉぉぉ! いくらめっかわな天使が相手だからと言って、ファースト&ラストキスが受け身の情けないキスのままで終われるか! 漢たるものォォォ!!!」
気合い着地・気合い着地・気合い着地ィィィィィィ!
「うおおおおおおおおおお!」
間も無く地面・間も無く地面・間も無く地面だ……
僕の右膝を起点に、そのまま右肘、そして右方向へ衝撃を受け流す、軍隊式着地方法で……
もふん。
「ん?」
もふもふん。
「な、何だこの感触は」
もふもふもふんとした物体に、身体がめり込んだ。どうやら助かったようだ。
「ネットで齧った軍隊式着地方法がまさか成功するなんて……地面がほとんど雪みたいに感じられたぞ。僕に軍人の才能があったとは。いや待て、僕の将来の夢は総理大臣だ。総理大臣は文民しかなれないぞ……ど、どうしよう」
「ちょ、ちょっと烏井 透! アンタが乗っかってるそれ……モンスターよっ!?」
「はみゅ?」




