ミニ・ウィンナーはごめんあそばせ
「何はともあれ、二度とあんなポークビッツは見せないでよね」
「うぅ……ひどい……」
知らぬ間に僕の股間が見たクセして、オマケのオマケにこの言いようは酷すぎる。アンマリじゃないだろうか。
しかし泣き言を言っていても仕方がない。
ただ、一つだけ言えることは、僕がお嫁さんをもらう時———この金髪留学生天使だけは毛頭ごめんだということだ。僕はもっと、優しくてほんわかしていて、ポークビッツだとか何とか言わない人がいい。思い出したら悲しくなってきたので、もう考えるのはよそう。
「ともかく、アンタは三日間奇跡の使用禁止ね」
「おいおい、そりゃ無いよ! だいいち、登校はどうするのさ。下校は? 買い出しは? アルバイトへの通勤……」
「えぇい……黙りなさい! このスケベ野郎! 元々は、天使の奇跡なんて人間には勿体無いモノなんだから! そもそも、アンタに奇跡を託したのはそんなふざけたプライベート丸出しなことのためじゃないわ!」
天使は、呆れたような顔をして、僕をびしりと指差し、こう続けた。
「日本と同化してしまった魔界からやって来るモンスターたちから、この国を守る|ためでしょ!?」
いや、確かにそうなんだけども。一理あるんだけども……
なんか僕のポークビッツの話から、流れが変わってきてないか? 元々こんな話だったっけ。トークテーマがいやに巨大になってきている気がするんだけど……
その時だった。
「い、いやあああああああああ!」
僕たちのいる校舎5階の生徒会室さえもつんざく悲鳴が、校庭の方から聞こえてきた。しかも、一つではなく複数の女子生徒のものだ。
やや険悪なムードのカップルみたいになっていた僕と天使は、目を一瞬合わせてから、がたりと音を立てて立ち上がった。天使が校庭側へ通ずる窓ガラスを手早く右へ引き、外へ通ずる出口を作り『誰にも見られてないわよね』と、周囲を見回してから、外へ飛び出した。
その背中には、緑色の紋章のようなモノが出現している。奇跡の紋章だ。
「よ、よし僕も……」
窓のへりに右足と左手を掛け、飛び出そうとしてから二つのことに気づいた。
一つは、校庭を数人の女子生徒が悲鳴を上げつつ———ゴールデンレトリバーくらいのサイズのモンスターに追い回されていること。
目算で、モンスターは10体くらいいたので、怪我人なしで助け出すには、天使ひとりじゃ力不足だろう。なので、僕も奇跡を使わせてもらっている者として加勢したいのだが……
ここで二つめの気づき……というか、うっかり忘れていたことである。このことには、実際に窓から飛び出し、奇跡を使おうとして背筋に力を入れたところで気づいた。
「あああああああああ! 今僕奇跡使えねーじゃん!」
今朝方、天使から奇跡を没収されたばかりだったのだ。




