ガラクタ・チャイムはおざなりで
キーンコーンキャーンコーン……
キーンコーンコーンコーン……
キーンコーンキャーンコーン……
キーンコーンカーンコーン……
「……まだチャイム治ってないのね」
「……ん? あ、ああ。一昨日辺りに奇数回のチャイムだけ、妙に変な音色に変わってしまって……」
「そんなことはどうでもいいわ」
「アンタが話題振ったんだろ!」
「問題は、最近のアンタの奇跡の濫用についてよ」
「いや、別に濫用ってほどでは……」
高校、生徒会室。
木製の使い古された机・椅子6セットを、会議室仕様に並び替えたその空間。
向かい合うワケでもなく、はたまた隣席に腰掛けるワケでもなく———
その天使は、僕の斜め正面(僕はねじれの位置と呼んでいる……)に鎮座していた。
その姿は、ひとことで言えばアニメ。アニメである。
アニメ顔負けのプロポーションに、わざとらしいブロンドの長髪を、これまたわざとらしく高めのツインテールにまとめたその姿。つり上がった目は、行き過ぎることもなく、柔らかすぎることもない絶妙な猫感を生み出している。
およそ一ヶ月前に、この高校へ留学してきた彼女の名はルット=ミルク=レルアとか言うらしい。
俺の前でのフランクな(?)態度とは打って変わって、クラスメイトに対しては温厚な彼女は、最初の挨拶時に『こんにちは、留学生のルットって言います! 気軽に、るーちゃんって呼んでね!』と、決めポーズまで披露していたのに、そのアニメ顔負けの姿・声のせいで、彼女のあだ名は『アニメちゃん』になってしまった。かわいそうだ。
「あ、あのさ……僕、そんな悪い奇跡の使い方したかね……?」
僕は、本心のままにそう告げる。すると、彼女はぷるぷると震え出した。
確かに、一昨日の僕は酷かった。深夜二時、就寝中に猛烈な尿意を感じた僕は、恐らく走っても間に合わないことを悟った。で、奇跡の浮遊を使い、トイレまで移動したのだが……
トイレには間に合った。間に合ったのだが、寝ぼけていたせいか、奇跡の解除をせぬままに用を足してしまったのだ。
確かに、天使にとって『奇跡』という代物は、大天使様とかからもらったらしい大切なモノだと言う。でも、別にこれくらい許されてもいいじゃないか。僕だって、この一ヶ月間で2回くらい世界を救っているのだから。
「ち、違うのよ……烏井 透……アンタには伝えてなかったけどね……」
「ふむ」
「『ふむ』じゃないわ! 奇跡の使用中は、契約結んだ天使・人間の間で視覚の共有が行われるのよ! アタシはアンタの粗末な……」
おいおいまさか……
「チ○コを見せられる羽目になったのよ! マンモスならまだしも、徳用サイズみたいなもの見せられた私の眼の気持ちにもなってみなさいよ!」
「なっ……!? そ、そんなスケベ機能付いてるなんて一度も……」
「そんな使い方する人間、今まで一度もいなかったから言ってなかったのよ! おかげで実績『ミニマムなアソコを見ろ』が解除されちゃったじゃないのよ」
「なんだそのPS5みたいな機能!」




