表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/8

第7話 亡霊は裁きを選んだ

アリアの死から三日が経った。


レオンは裏務課の執務室で、 いつものように任務書を受け取っていた。


『犯罪冒険者の処分』


淡々とした文字。 だが、レオンの胸には何も響かない。

アリアの短剣だけが、 腰で静かに揺れていた。


職員が恐る恐る声をかける。


「レ、レオン……大丈夫か……?」


レオンは無表情のまま答える。


「問題ない」


その声は、 以前の“機械”よりも冷たかった。

職員はそれ以上何も言えず、 ただ視線をそらした。


レオンは任務書を握りしめ、 静かに歩き出す。


(……アリア)


名前を思い浮かべるだけで、 胸が痛む。


だが、その痛みすら 今のレオンを動かす燃料になっていた。


処分対象の冒険者は、 街外れの廃屋に潜んでいた。

レオンは扉を蹴り破り、 中へ踏み込む。


「ひっ……! ま、待ってくれ!

 俺は……俺は悪くないんだ……!」


冒険者は震えながら後ずさる。

レオンは無表情で短剣を抜いた。


「罪状は確認した。

 抵抗するなら、殺す」


「や、やめてくれ……!俺には家族が……!」


レオンの手が止まる。


家族。

その言葉が胸に刺さる。


アリアにも家族がいた。

彼女の死を、誰が伝えるのか。

誰が泣くのか。


レオンは短剣を握り直す。


「……俺も、守れなかった」


冒険者は意味が分からず震える。

レオンは静かに告げた。


「お前の罪は、俺には関係ない。

だが──」


短剣が振り下ろされる。


「……アリアの死は、俺の罪だ」


冒険者は一瞬で絶命した。

レオンは血を拭い、 アリアの短剣をそっと撫でた。


(……アリア。  俺は、どうすればよかったんだ)


答えは返ってこない。


ギルドに戻ると、 裏務課の同僚・マルクが声をかけてきた。


「レオン……お前、最近おかしいぞ」


レオンは無言で書類を置く。

マルクは続ける。


「アリアの件……俺だって納得してねぇ。

 でも、ギルドの命令は絶対だ。

 お前が背負う必要は──」


「俺が殺した」


レオンの声は低く、重かった。

マルクは言葉を失う。


レオンは続ける。


「ギルドは……アリアを守らなかった。

 俺も守れなかった。だから、俺が殺したんだ」


マルクは拳を握りしめる。


「……レオン。

 お前、ギルドを疑ってるのか?」


レオンはゆっくりと顔を上げた。


その瞳には、 かつての冒険者の光はなく、 ただ冷たい怒りだけが宿っていた。


「疑っているのではない。知っただけだ」


「何を……?」


レオンは静かに言う。


「ギルドは……冒険者を守らない」


マルクは息を呑む。

レオンは続ける。


「アリアを殺したのは、俺だ。だが──

 アリアを“殺させた”のは、ギルドだ」


その言葉は、 裏務課の空気を凍らせた。


その夜。

レオンはアリアの墓の前に立っていた。


月明かりが静かに照らす中、レオンはアリアの短剣を磨き続ける。


「……アリア。

 俺は、もう戻れない」


レオンは墓に手を置く。


「お前がいた日々は…… 俺にとって、救いだった」


風が吹き、 アリアの墓に置かれた花が揺れる。

レオンは静かに目を閉じた。


「……ギルドの闇を、見に行く。

 お前を殺した“本当の理由”を、知るために」


レオンは立ち上がる。

その背中には、 もう迷いはなかった。


アリアの死を境に、 レオンは“裏務課の亡霊”から “ギルドの闇を裁く者”へと変わり始めていた。


アリアの墓を後にしたレオンは、

夜の街を静かに歩いていた。


目的地は決まっている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ