第6話 機械でも人間でもないもの
処刑が終わった後、
レオンはアリアの遺体を抱きしめた。
「……すまない……すまない……」
涙が止まらなかった。
裏務課の職員が声をかける。
「レオン、遺体は──」
レオンは振り返り、
殺気を帯びた目で睨みつけた。
「触るな」
職員は息を呑み、後ずさる。
レオンはアリアの遺体を抱え、
静かに歩き出した。
その背中は、
もう“機械”ではなかった。
だが──
“人間”でもなかった。
アリアの遺体を抱えたまま、
レオンはギルドの裏庭にある小さな墓地へ向かった。
レオンはアリアの遺体をそっと地面に横たえ、
自分の外套をかける。
その手は震えていた。
(……アリア)
名前を呼ぶだけで、
胸が裂けるように痛む。
昨日まで隣にいた少女。
自分に笑いかけてくれた唯一の光。
その光を、自分の手で消した。
レオンは土を掴み、
静かに墓を作り始めた。
涙は止まらなかった。
翌日。
裏務課の執務室は、いつも通り淡々と仕事が進んでいた。
だが、レオンの机の上には
アリアの遺品が置かれていた。
小さな革袋。
磨きかけの短剣。
そして──
レオンに宛てた、渡されるはずだった手紙。
封は開いていない。
レオンは震える指で封を切った。
中には、拙い字でこう書かれていた。
『レオンさんへ
いつか、あなたの笑顔が見たいです。
わたし、あなたのことが大好きです。
もっと一緒に冒険したいです。
アリア』
レオンは手紙を胸に押し当て、
声を殺して泣いた。
(……アリア……)
その名を呼ぶたびに、
心が崩れていく。
その日の午後、
ギルド幹部がレオンを呼び出した。
「レオン。アリアの件、ご苦労だった」
レオンは無言で立つ。
幹部は続ける。
「貴族からの抗議は収まった。
ギルドとしては、今回の処理を高く評価する」
レオンの拳が震えた。
「……評価?」
「そうだ。
裏務課として、これ以上ない働きだ」
レオンはゆっくりと顔を上げた。
その瞳には、
冷たい怒りが宿っていた。
「……俺は、仲間を殺したんだぞ」
「仲間?
裏務課に仲間などいない。
お前は“仕事”をしただけだ」
レオンの胸の奥で、
何かが音を立てて崩れた。
(……ああ、そうか)
ギルドは最初から、
アリアを守る気などなかった。
自分も、
ただの“道具”だった。
夜。
レオンはアリアの墓の前に立っていた。
月明かりが静かに照らす中、
レオンはアリアの短剣を磨いていた。
「……アリア」
レオンは墓に向かって話し始めた。
「お前がいた日々は……
短かったが……」
言葉が詰まる。
「……温かかった」
レオンは短剣を握りしめる。
「俺は……もう、どう生きればいいのか分からない」
アリアがいたから、
レオンは人間に戻りかけた。
だが今は──
その光が消えた世界で、
どこへ向かえばいいのか分からない。
レオンは墓に手を置いた。
「……すまない。
守れなかった」
その声は、
風に消えるほど弱かった。




