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戦国の里と、騒がしすぎる未来人



 ――未来人を拾った。


 いや、ほんとにどうしよう。


 

昨日の出来事を思い出しながら、私は山道を歩いていた。


 

後ろには、例の二人。


 空から落ちてきた男――リオと、雷みたいな力を使う女の子――ナナ。



「ねぇねぇ牡丹ちゃ〜ん!この道、マジでオフロードすぎない?ヒールで来たら詰んでたんだけど〜」


「そもそもヒールで山来る人いないからね!?」


 ……うん、やっぱりどうしよう。


 命のやり取りをした翌日とは思えないテンション。


 

一方で。


「……気配、増えてるな」


 リオは低く呟く。

視線は周囲の森へ。


 ――ああ、そっか。


 里が近い。


 当然、見張りもいる。


 そして。


「止まれ」


 ぴたりと、足が止まる。


 木の上、草むら、前方。


 気づけば、囲まれていた。


「牡丹。その者たちは何者だ」


 低い声。


 里の忍び頭だ。


「えっと、その……」


 どう説明すればいいのこれ。


 未来から来ました、って言って信じる?


 いや無理でしょ。


 私が言い淀んでいると――


 横から、ナナが元気よく手を挙げた。


「はーい!未来人で〜す♡」


「ナナァァァァ!!?」


 最悪の自己紹介きた。


 案の定。


「……未来?」


「ふざけているのか」


「妖術か?」


 ざわつく里の人たち。


 うん、そうなるよね。


 私は慌てて前に出る。


「ち、違うの!その……強いのは本当で!あと変だけど悪い人じゃなくて!」


「フォローになってないよ牡丹ちゃん!?」


 ナナが抗議する。


 いや事実だし。


 そのとき。


 リオが一歩前に出た。


 すっと、軽く頭を下げる。


「……信じろとは言わない。ただ、敵ではない」


 静かな声。


「だが、俺たちを追って“別の敵”が来る可能性がある」


 空気が変わった。


 ピリッと、張り詰める。


「……里に災いを持ち込む気か」


「その可能性は、ある」


「正直すぎるよ!?」


 ナナがツッコむ。


 でも、嘘をつかないのがリオらしい。


 沈黙。


 しばらくして、忍び頭が言った。


「……牡丹」


「は、はい」


「お前の判断に任せる」


「えっ」


 えっ、重い。


 責任重すぎるんだけど。


 でも。


 私は、二人を見る。


 ――昨日、命を救われた。


 あの光景が、頭から離れない。


「……大丈夫です」


 言い切った。


「私が、責任持ちます」


 忍び頭はしばらく私を見て――


「……好きにしろ」


 そう言って、気配が消えた。


 他の忍びたちも、ゆっくりと散っていく。


 でも。


 完全に信用されたわけじゃない。


 むしろ――


 めっちゃ見られてる。


 木の陰とかから。


 視線が痛い。


「うわ〜、めっちゃ見られてるんだけど」


 ナナが小声で言う。


「当然だろ……」


 リオがため息をつく。


 私は苦笑いしながら振り返った。


「ごめんね。しばらくはこんな感じかも」


「全然いいよ〜!むしろ異文化交流って感じでテンション上がるし!」


 この子、強い。



 里に入ると、空気がさらに変わった。


 子どもたちは遠巻きに見てくるし、大人たちは明らかに警戒してる。


「……ねぇ」


 ナナが私の袖を引っ張る。


「なに?」


「ここ、Wi-Fiある?」


「わいふぁい…?たぶん、あるわけないよ」


 何を言ってるのこの子。


「えぇぇぇ!?じゃあ電波は!?4G!?5G!?」


「Gって何!?」


「詰んだ……うち、ここで死ぬ……」


「まだ生きてるよ!?」


 突然しゃがみ込むナナ。


 里の人たちがざわつく。


「あの女、何をしておる……」


「呪いか……?」


「ちがうちがう違うから!!」


 必死でフォローする私。


 一方でリオは、なぜか冷静に周囲を観察していた。


「……地形は悪くない。守りやすい」


「いや今それ言う!?」




 とりあえず、二人を家に連れてきた。


 障子を開けると、ナナがぽかんとする。


「……なにこれ」


「私の家だけど」


「え、エモ……」


「えも?」


「なんかこう……落ち着くっていうか……やばい、語彙力死ぬ」


「さっきから死にすぎじゃない!?」


 ナナはそのまま、畳にばふっと倒れ込んだ。


「はぁ〜……無理……SNS見れない……通知来ない……」


「通知ってそんな大事なの……?」


「大事だよ!!うちの存在意義の半分!!」


「軽いなぁ存在意義……」


 私は囲炉裏に火を入れながら、ちょっとだけ笑った。


 ……なんか、変な感じ。


 昨日まで普通に任務してたのに、急にこんなことになるなんて。


 でも。


 少しだけ、思う。


 ――退屈じゃないな、って。




 その夜。


 食事のあと、ナナは完全にぐでていた。


「……だめ……文明不足で死ぬ……」


「だから死なないってば」


 私は呆れながら団子をかじる。


 そのとき。


「……ナナ」


 リオが、荷物を漁って何かを取り出した。


「これ使うか」


「え?」


 小さな機械。


 スイッチを入れると、ぴっと光る。


 その瞬間。


 ナナの持っていた謎の板(スマホ?)が震えた。


「……え」


 画面に文字が出る。


《接続済み》


「………………」


 一秒。


 二秒。


 三秒。


「うわあああああああああああああああ!!!」


「うるさっ!?」


 ナナが飛び上がった。


「通知!!通知来てる!!!うそでしょ神!?リオ神!?」


「だから飛びつくな肩痛ぇって!!」


 泣きながらリオに抱きつくナナ。


 なにこれ。


 さっきまで死にかけてた人とは思えない。


「生き返った……うち、生き返った……」


「ほんとに死んでたの……?」


 思わず引く私。


 ナナはキラキラした目でスマホを掲げた。


「これが文明よ!!!」


「怖いよ!!!」


 思わず叫んだ。


 だって、空気から文が来るって何。


 妖術でしょこれ。




 でも。


 笑い声が、少しだけ里に広がった。


 警戒の中で。


 ほんの少しだけ。


 空気が、緩んだ気がした。


 ――だけど。


 その夜。


 里の外れで、“何か”が動いていたことを。


 このときの私は、まだ知らなかった。




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