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刻を超える雷




――空から、人が落ちてきた。


 ……いや、さすがにそれは、夢か何かだと思いたかった。


 だってここ、戦国の山の中だよ?

 落ちてくるとしたら、せいぜい枝とか、たまに猿とか、そのくらいでしょ。


 なのに。


 ドォォォンッ!!!


 空が裂けたみたいな音と一緒に、“人”が地面に叩きつけられた。


「……は?」


 思わず、足が止まる。


 ――あ、自己紹介してなかった。


 私は牡丹ぼたん

 戦国の世を生きる、くノ一。


 ……ただし、戦は大っ嫌い。


 人が死ぬのを見るのも、斬るのも、全部、嫌い。

 でも、そうも言ってられないから、こうして任務で森を走ってる。


 ――で、その結果がこれ。


「なに今の……」


 恐る恐る、落ちてきた“それ”に近づく。


 そこにいたのは――


「……え、若い……男の人?」


 見たこともない服。

 見たこともない素材。

 まるで金属と布が混ざったみたいな、不思議な装備。


 その男は、苦しそうに顔を歪めて、ゆっくり目を開けた。


「……ここは……どこだ」


 低くて、落ち着いた声。


「え、えっと……山だけど……っていうか、あんた誰!?」


「……時代、間違えたか」


「いや質問に答えて!?」


 なんなのこの人。

 落ちてきたくせに、妙に冷静なんだけど。


 ――そのときだった。


 ズン……ズン……


 地面が、わずかに揺れる。


 森の奥から、何かが“来る”。


「……っ!」


 ぞわっと背中が粟立つ。


 これ、ただの獣じゃない。

 気配が、重すぎる。


 黒い霧が、木々の間からにじみ出て――


 現れた。


「な……に、あれ……」


 人の形をしている。

 でも、人じゃない。


 全身が黒い装甲みたいなもので覆われていて、関節の動きもどこかおかしい。

 目の部分だけが、不気味に青く光っている。


 ――あれは、ヤバい。


 本能がそう叫んでる。


「下がれ!」


「えっ――」


 いきなり、突き飛ばされた。


 気づいたときには、さっきの男が前に出ている。


「この時代にも……来てるのかよ……!」


 男の右手には、見たことのない装置。

 手袋みたいなそれが、青白く光る。


 次の瞬間――


 バチィッ!!


 空気が弾けた。


 男の拳が、“それ”に叩き込まれる。


「はあああっ!!」


 見えない何かが、敵の内部に流れ込むみたいに――


 でも。


「……効いて、ない……?」


 びくともしない。


 それどころか、


 ズガンッ!!


「っぐ……!」


 黒い触手みたいなものが、男の肩を貫いた。


「ちょっと!!」


 思わず叫ぶ。


 傷口から、血じゃない――青白い光が漏れている。


 なにそれ。

 ほんとに人間?


 ――その瞬間。




 ドオオオオォォォン!!!




 空から、何かが落ちてきた。



「はああああああああああああ!?」


 今度はさっきの比じゃない衝撃。


 落ちてきた“何か”が、あの黒い化け物の頭に直撃して――


 そのまま地面に叩きつけた。


「タイミング……良すぎだろ……」


 男が、力なくつぶやく。


 そして、落ちてきた“それ”の扉が開く。


 中から飛び出してきたのは――



「リオのバカァァァァ!!!」



 ピンクの髪の、女の子だった。


「なんで勝手に突っ込んでんのよ!!死ぬ気!?」


 え、なにこの子。

 めっちゃ怒ってるんだけど。


 しかも――


 目が、青からピンクに変わった。


 いや、逆?


 さっきまでピンクだった髪が、今は青く光ってる。


 色が、ぐにゃっと反転するみたいに入れ替わって――


 空気が、ビリビリ震えた。


「侵食者……」


 少女が、低く呟く。


「しんしょくしゃ…?」

 私、今過去いちばんアホな顔してる。


「ぜったいに……許さない」


 腕につけた輪っかが、強く光る。


 次の瞬間。


 バチィィィィィィッ!!!


 雷みたいな光が、一直線に走った。


「――え」


 黒い化け物の胸を、貫く。


 内側から、爆ぜた。


 ドンッ!!!


 衝撃とともに、敵は崩れ落ちる。


 静寂。


 さっきまでの気配が、嘘みたいに消えた。


「……終わり」


 少女が、ふっと息を吐く。


 その瞬間、髪と瞳の色が元に戻る。


 ……今の、何?


 雷?

 いや、それより――


「……あの」


 私は、思わず声をかけた。



「あなたたち……何者?」


 

ピンクの少女は、くるっとこっちを向いて、にぱっと笑った。


「未来人で〜す♡」


「いや軽っ!?」


 思わずツッコんだ。


 だって、今の戦い、どう見ても軽くないでしょ!?


 でも少女は気にした様子もなく、私の顔をじっと見て――


「え、ちょっと待って」


 ずいっと距離を詰めてくる。


「な、なに!?」


「……めっちゃ可愛くない?」


「は?」


 さっきまで命のやり取りしてたよね!?


「肌やば。なにその透明感。スキンケアなに使ってんの?」


「ぬ、ぬか袋だけど……」


「ぬか袋!?渋ッ!!最高じゃん!!」


 ぐいっと手を掴まれる。

 なにこの子、距離近い。


「絶対盛れるって!メイクしたい!」


「め、めいくって何!?」


「え、地雷系とか知らない!?」


「地雷!?爆弾!?」


「ちがうってばwww」


 ……なんかもう、さっきまでの緊張どこいったの。


 でも。


 さっき見た光景は、忘れられない。


 空から落ちてきた男。

 雷を操る少女。

 そして、“侵食者”とかいう化け物。


 ――これ、絶対、ただ事じゃない。


 私の静かな日常は、


 たぶんこの瞬間、


 音を立てて壊れた。

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