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欲求まみれの顧問
放課後の教室。
佐伯が机に両手をつき、俺たちを見回した。
「……やっぱ顧問がいないと、正式な部活にできないって」
西村が頷く。
「学校規定だね。教員の承認印が必要」
高橋「じゃあ、その承認欲求が強そうな人を引っ張ればいい」
佐伯は人差し指を立て、声を潜める。
「国枝先生。あの、地位欲求と物欲で動く社会科の」
──職員室前の廊下。
ガラス越しに見える国枝圭介は、スマホをスクロールしながらコーヒーを啜っている。
机の横には、やけに高そうなマグカップ。
佐伯がキャピっとした声を出す。
「先生って、人をまとめるの得意そうですよね〜。
しかも部活予算で、先生専用のコーヒーメーカーとか置けますよ」
国枝の目が一瞬で輝く。
「そのコーヒー飲みながら優雅に映える環境、悪くないでしょ」
国枝は腕を組み、机の上を妙に長く見つめる。
「……いいな、それ。ずっとここに置いておけるのか?」
佐伯が笑いながら釘を刺す。
「もちろん! でも先生、学校の備品ですから持ち帰り禁止ですよ!」
国枝は咳払いして、わざと窓の外を見る。
「……誰も持ち帰るとは言ってないぞ」
──こうして、俺たちの部には物欲と承認欲求を満たされた顧問が加わった。




