Сторона Волх・В・Были́на с9
俺達は森へ進軍する。土を踏み締め、小川を越え、魔王と出会った目的の場所まで。
今回はメリー達も見えない壁に阻まれる事無く辿り着いた。……舐められてるな。
「……魔王!」
「ああ、来たのか。一人暮らしの家にはちッとお客さンの人数が多すぎるな」
魔王は庭の椅子に腰掛け、テーブルには湯気の上る紅茶を出し落ち着いて対応していた。
茶会の最中の急な客に対応するかのように、やや呆れを含んだその態度から次の言葉を予測できる筈もなく。
「だからさ、死んでくれ。茶器が足りねェンだ──Oh, the brave old Duke of York」
瞬間、弓部隊が消し飛んだ。
悲鳴も残らずこの世から消えた。
静寂が俺を刺す。目に見える圧倒的な力に、誰かが漏らした小さな悲鳴がよく届いた。
剣を握る手に力が籠る。
「お前──!」
「あのな、アタシを狙いに来たと分かッてて放ッとくワケねェだろ?アイツらだッて死ぬ覚悟で来てンだ、お互い様だよ。それとも、魔王を殺そうッてのに全員仲良く生きて帰れると思ッてたのか?」
思っちゃいない。思ってなんかない、が。
……こんな、手も足も出ないで死んで行くなんて。
「『暴食』は誰かさンと違ッて趣味じャねェンだけどな。
ファ、フェ、フィ、フォ、フン!
匂う匂うぞ人の匂い
骨を挽いてパンにしよう
パンにしたなら食っちまおう
──Fa, Fe, Fi, Fo, Fum!」
ぱくり、ぱくり。魔王が咀嚼するように口を動かすと、板チョコが齧られていくように魔法部隊が消滅して行く。
なす術無く切断された身体から血が吹き出し、鉄の匂いが辺りに充満する。
「あ、あああああ!!!」
「お待ち下さい勇者様!」
やられるがままじゃ駄目だ!これ以上人が殺される前に攻撃を入れないと!
俺は静止の声も聞かず、魔王に向かって剣を振りかぶる。
「やぶれかぶれの斬り込みにしちャ良い太刀筋だ。……だが」
剣はいきなり現れた杖によって弾かれ、ガラ空きとなった胴体に強烈な蹴りが入れられる。
勢いよく吹っ飛ばされ、背中から木に当たり衝撃と痛みに顔を歪める。
「どうした、勇者サマ?剣だけか?魔法は使わないのか?」
「ゴホッ、ゴホッ!」
痛い。痛い。こんな感覚知らない。
そりゃそうだ。訓練は所詮訓練で、血が出るような実戦はほぼ無かったのだから。
ただ、この世界に来てから血はすぐ止まるし怪我もすぐ治るようになった。俺が勇者に選ばれたからだろうか。
……でも、おかしい。魔王から受けた攻撃がちっとも治らない。まるで勇者になるより前に戻っちまったみたいだ。魔王の攻撃にはそんな効果もあるのか!?
そして、魔法は……俺は使えない。魔力というのはあるらしいが使うのに適性が無いようだ。
とはいえそういうのはよくある話らしい。だから俺は気にせず剣に打ち込み、魔法はメリーに任せることにした。
「はァ……『勇者』というからにはどんな強さかと思えば……アイツより弱ェ。ああ、そうか。勇者は『勇ましい者』であッて『無敵の者』ではないものな?」
「勇者様を愚弄するな!!!」
「あ?事実だろ」
キューラが盾を振りかぶり、ナスタシアが鋭い弓を放つ。だが、どちらも杖により弾かれた。
俺の剣みたくどこからともなく現れて消えるなんて、なんなんだあの杖。
「多少は期待していたンだが……アタシの本当の姿も見ずに終わるとはなァ。
ゆりかごの赤ちャンどこへやら
あの子のお墓に枯葉が落ちる
かわいい魂天国へ
だけど身体はまだここに
──A |Baby's cradle」
「させるか!──『獣と化す者』!」
狼と化し、魔王の喉元に噛み付かんと飛び掛かる。だが、例に漏れず杖により簡単に弾かれてしまった。
その勢いのまま人間の姿に戻り、着地。すぐさま剣を呼び出し切り掛かる。
攻撃は弾かれたけど魔法を止められたから目的は果たした。これで良い。
ただ攻撃よりも俺が狼になった事の方が驚いていたような気がするが、些細な事だ。ともかく止められれば何でも良かったんだ。
「こりャ驚いた。オマエも魔獣だッたのか」
「いや、俺は人間だ。これは超能力に過ぎない」
「そうか。ところでお仲間が面白い表情を浮かべているぞ?」
魔王が片手で振るった杖で剣を弾かれ、再び腹を蹴られて吹き飛び、地面に叩きつけられる。
しかしそんな俺を囲んだのは、心配する仲間の顔ではなく怪物を見るような態度だった。
「……勇者様が、魔獣?」
「そんな馬鹿な」
「だが、しかし……」
え?え?俺、魔法防いだよな?必要な事だったし、俺が動物になった事で皆を守れたよな?
……なのになんで、そんな疑いの眼差しで俺を見るんだ……?
確かに今まで皆の前で超能力は使って来なかった。使う機会も必要性も無かったから。
そもそも一人だけでいるならいざ知らず、基本的にメリーやキューラ、ナスタシアと共にいるから動物になるよりも一緒に戦った方が強い。
「ごっ、ごめん皆!隠してたワケじゃねぇんだ!ただ見せる機会が無くってだな……」
やっぱり隠し事されてたみたいで気分悪いよな。俺達は仲間なのに気が回らなかった。失態だ。
くそ、魔王に勝つ為には力を合わせなきゃならねぇのに不信感を抱かせてしまった!この場でこれは良くないな……。
「いいえ、勇者様。問題ありません。お気になさらず、今は魔王に注力すべきです。皆様も!敵は眼前の魔王と知りなさい!」
「「「お、おおーーっ!!!」」」
流石はメリーだ。ちょっとどよめきがあったけど皆の心を一つにした!
俺も再び剣を構え、魔王に相対する。
「ふン、いくらやッても同じなンだがな。さッさと諦めろよな。……にしてもあの女の顔、どこかで……?」
「いいや、俺は諦めない!俺は勇者だ!勇者は魔王に勝って、世界を救うんだ──!」
「……!?」
そう大声で宣言した途端、ドクンと心臓が跳ね力が湧き上がる。
身体が熱い。過度に血が巡る感じがして、頭が冴える!
剣を振りかぶる。今までなら簡単に弾かれていた攻撃が実力以上の威力でもって魔王の杖に直撃し、逆にその杖を手元から弾いた。
景色が遅い。まだ行ける。そのまま追撃!
しかし流石は魔王、脅威的な反射速度で剣を避けて距離を取る。
だが、その頬には一筋の剣傷が刻まれ血が垂れていた。
「そうか……その類稀な『勇気』は美徳だな。
ならばそれに答えよう。応じよう。返そう。
見せてやる、無知の魔女、Rhyme・Gooseの真の姿を!」
「!」
魔王を中心に、嵐が吹き荒れる。
次は3月4日
追記
申し訳ないのですが忙しくて今月は書けそうにありません…。
次回は4月1日となります。
すいません4日にさせて下さい。
また、以降は更新を土曜日のみとします。
予想外の予定が入ったため5日となります。
本当に申し訳ないです……。




