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18話 申請

「どうやら監視されていたらしいな。

 かくれんぼは終わりらしいぞ」


セシリアは喫茶店にいる2人に目を向けていた。

既に察知されていたのだ。

彼女は2つに割れたリンカーを俺達にみせつけた、

合わせ一つにした瞬間、リンカーの反応が現れた。

その瞬きも出来ない間をへて姿を消した。


「・・・急ぐぞ。コーリィが危ない」


世界を再構築させる際に唯一

いなくならなければならない人物がいた。

世界操作の干渉を受けない人間、それがコーリィだ。

彼が生きている間は時間の巻き戻し・世界の再構築はできない。

今は、教会の保護下に置いているものの、彼女が相手ではそんなもの

無いにも等しい。


人目を気にしている場合ではない、瞬時に移動ができる

空間移動を発動させようとしたが何も起こらない。

リンカーを持っている彼女はこの世界の神と同格だ。

俺達にこの世界の事柄全ての変更を拒否したのだろう。

仕方なく走って教会へ向かう。


「さて、一応申請はしてみたがこんな緊急時にすぐに通るかどうかは

 わからんな」


隣で一緒に走っている彼女が呟く。


「何を申請したんですか?」


「秘密だ。それにしても君はよくその体型で走れるな

 普通ならへばっていると思ったのだが」


「まぁ、外見だけですし。そんなことよりあのリンカーは何なんですか!

 リンカーは壊れるものなんですか!?」


走りながら喋ると口調も強くなってしまう。


「リンカーが壊れることはない。ただ、

 アレはそういうリンカーなのだ」


彼女はそう言って話を打ち切り、教会へと走った。


・・・


中央教会内部の一室。

石造りの簡素な部屋の中彼はいた。

部屋の中には必要最小限の物だけがあった。

ベッドに腰掛けて、ただ一点の壁を見つめ続けていた。


教会の研究に手を貸したのは自らの身体の異常が知りたかったからだ。

数日で研究は終わり、残りは3人と一緒に観光で回る気分だった。

しかし、初日からあの醜男とあった時、心臓が疼いた。

この男、どこかで知っている。何処で見たのか思考を巡らせたが

全然思い出せない。流石に10000年以上生きているとなると

昔の事がすぐに思い出せなくなる。

まぁ、あとで思い出すだろうと軽く考え、教会へと向った。


本格的に研究が始まり数日が経過した。

既に俺の予測していた日数は過ぎており、それほどまでに

無紋章は難解なのかと不思議に思ってしまった。

そして、研究員の言葉によって俺は驚愕の事実をつきつけられた。


「調査の進捗なのだが、君は異端紋章を持っている

 可能性が非常に高い結果が出るまでもう少し教会で拘束させてもらおう」


そうして案内されたのは、この石造りの密室である。

それから、最低限の食事・排便以外は外に出ることが出来なくなった。

唯一ある娯楽は、この協会が信仰している神々の物語が書かれた分厚い本が

並べられているだけだ。まぁあるだけマシだ。


異端紋章、そんな気はしていた。

既に何度も死してもまたこの体に戻るの繰り返しが起きているのだ。

それを疑わない訳がない。

ただ気になるのは俺に異端紋章があったと仮定して

『死を繰り返す以外に何が出来るのか』だ。

それだけなら俺は寿命で死のうが他人に殺されようが繰り返し

生き続けなければ行けないことになる。

いつかは発狂しこの世界を彷徨う事になるだろう。

それを止める方法はあるのか知る必要がある。

あるのなら誰か教えてくれ、もう俺は死にたくないんだ。


「コーちゃん」


聞き覚えのある声が背後から聞こえてきた。

おかしい、何故背後から聞こえてくる?

鉄扉が開いた様子もない。

そもそもなぜセシリアはここにいるんだ?


「セシリア?」


声が震えている止めようにも止まらない。


「なに?コーちゃん」


どうやら、幻聴ではないらしい。

しかしその口調は感情が全く入っていない鋭利なナイフのようだ。


「なぁ、色々聞きたいことがあるんだけどさ、

 その前に振り向いて良いかな?」


後ろから生暖かい吐息が背中にかかる。


「だめ」


彼女は本当にセシリアなのだろうか?

声は同じでも口調があまりにも無感情すぎる。


「コーちゃん、お願いがあるの」


「な、何?」


「コーちゃん」


少し間があった。その間の後に発せられる

言葉は言わずとも何故か理解できた。

両首筋に冷たい鉄の感触があるからだ。

それは巨大な鋏《ハサミ》を連想させた

「死んで」


その声はとても無邪気で何の迷いも無かった。


「嫌だよ」


俺もその言葉に脊髄反射するように即答した。


「もう二度と戻りたくない」


「大丈夫だよ、また助けるから」


「違う!もう繰り返しは嫌なんだ!過去を語ることの出来る

 仲間を失いたくない!」


「・・・」


セシリアは少しの間沈黙しその間、室内は緊迫感のみが

支配した。

しばらくして彼女は口を開く。

その口調には先ほどの無感情な口調が多少暖和されていた。


「過去を語る仲間を忘れたあなたがその言葉を口にするの?」


「え?」


「ほら、忘れてるじゃない」


背筋から汗が伝わる。


「この良くわからない石を使い続けてきた代償なの?

 そもそもあなたは誰なの?」


彼女は何を言っているのだろう

石?石とは何だ?


曖昧な記憶をたぐり寄せ、最初の世界でもらった白い石

だという事をなんとか思い出す事が出来たコーリィ。

しかし、セシリアの話はコーリィの思考を無視し

進めていく


「私の知っているコーリィは、お菓子なんて作らない。

 そもそも作る方じゃなくて食べる方。

 鍛えるとかそんな努力なんてしない。

 あと、私にすごく優しく接してくれた。

 それが趣味みたいにしつこく私に優しくしてくれた。

 何回繰り返そうとそれだけは変わらなかった。」


セシリアの良く分らない話を聞き流そうと努力したが、

聞き流せるような内容ではなかった。


今まで体験してきた1000回の転生で

一度も努力を怠ったことなど無いし、

執拗にセシリアに優しく接したとは一体何だ?

少しセシリアを優先していたが、

皆平等に接したつもりだ。

話の内容が今現在のコーリィ自身全く体験の

範疇外であることから導き出された答えは


「でもね、突然その優しく接してくれるコーリィは居なくなったの

 初めて会うかのような顔で私に接してきたあなたが現れた世界からね。

 だから思うの、あなたは誰?」


俺が転生する前からもこの世界は常に繰り返されていたのだと。


セシリアはため息混じりに息をついた。


「まぁ、誰だっていいわ。私は以前のコーリィが戻ってくるまで

 あなたを飼育してリミットが迫ったら殺害するだけ。

 早くコーリィの身体から出て行ってね。

 何回殺しても彼が戻ってくる可能性少ないっていうのが分かったから

 今回からあなたが出て行ける方法が分かるまで生かせてあげるけど」


コーリィの両首筋に少し体温と同じ位の温もりを持った物体が少し動く


「今回はもう時間切れ」


・・・


教会の人間たちを説得するのに時間がかかった。

一応、制限を掛ける前に洗脳済みが幸いしたが、

あくまでこの世界に大きく干渉しない程度の洗脳だ。

それなりの理由がない限り彼らも通してはくれない。

コーリィの居る鉄扉の前まで急ぎやって来た。

俺は鍵を手に取るが彼女が勢い良く足で

蹴飛ばし扉を吹き飛ばした。


彼女が軽く舌打ちをした。

俺はその光景に絶句した。

赤に染まった地面に倒れるは

頭と胴体が分離したコーリィが

2人の目に写った。


「意外と早かったね。そっちのお兄さんは図体の割によくやるわね」


セシリアは淡々と話を始めた。

彼女も血に染まっていた。

俺は眉を顰めた。


「そんな事はどうでもいい。さっさとそのリンカーを

 渡してもらおうか。お前が持っていいものじゃない」


「嫌よ」


セシリアは俺の話を最後まで待たずきっぱりと拒絶した。

続けて彼女がセシリアの説得をする。


「権限が高い紋章に味を占めてたみたいだけど

 見つかったからにはもう終わりよ

 さっさと渡さないとこちらもそれなりの手を打たせてもらうわ」


セシリアは不気味にほくそ笑みながら白い石を掲げる


「その前にこの世界から退場させて頂くわ。

 今度のダミー世界は1京を超えるわよ

 また数千年後にお会いしましょうね。」


そう言って彼女は瞬時に姿を消した。


「まぁ、そうなるわよね」


彼女は不敵な笑みを浮かべながら醜男へと

視線を向ける。


「申請の承認が間に合ったみたい。

 それじゃ、後は分かってるわね。」


「わかっていますよ。

 先ほど話された作戦で行けばいいんですよね」


「えぇ、それで終わりよ」


「わかりました。」


そして2人は空間を歪ませその中に入っていった。


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