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19話 最初より早い最後を


・・・


コーリィは自らの意識があることに気づく

彼は立ち上がりあたりを見回す。

あたりに建物らしきものはなく地平線が広がる空間にいた。

しかし、視界はぼやけており、ピントが合わない状態だ。

この状況は一体何だろう。

いつもならすぐに赤ん坊に戻っているはずだ。

ようやくこの長い生き地獄が終わったのかと安堵した。

しかし、その安堵は勘違いだと気づく。


「やぁ、コーリィ」


いきなり後ろから声をかけられた。

すぐに後ろを振り向くと人らしき人物のシルエットが見えた。

しかし未だぼやけがとれない状況で彼がどのような人物かは

分からなかった。


「あなたは?」


彼のシルエットが下へ下がっていった。

どうやら座ったようだ。


「分かってる。しかし話は長くなるから、

 そのまま突っ立てたら疲れるだろ。」


彼の言うがままコーリィはしぶしぶ座った。


「それで?あなたは誰なんですか?」


「僕もコーリィだよ」


唐突にとんでもない事を言ってくる彼に

不信感を抱かざる得ない。

それを先読んでいたのか彼は続けてこういった


「ごめん、言い方が悪かったね、僕が元々のコーリィなんだ。

 君には大変な役割を押しつけてしまったと思っているよ。牧谷悠人」


コーリィは久しく聞く自分の前世の名前に驚きを隠せなかった。


「まず、君がなぜ僕の体に転生したかを話さないとね」


未だ状況が理解できていない頭を振り絞ってあどけない言葉でコーリィは返事を返した。


「君は世界から選ばれ転生した。エラーを抹消する要素がある人物としてね」


「どこのRPGだよそれ」


「ホントだよね。でも本当のことなんだ。僕では手も足も出なかった。

 自ら失態で彼女を殺すことも出来なかったんだ。それを見かねた

 世界は僕の代替えを・・・つまりは君を僕に移した」


コーリィの頭の中は要点要点がいくつにも広がり何処と何処を

線で結べばよいか状況で混乱していた。


「とりあえず、俺がお前の代替えとして転生してきたところは分かったが

 その、なんだ?いろんな話がいくつも見え隠れしてるんだが

 そこがよく分からん。お前が主人公の世界では一体何があった、

 話をするならまずそこからだろ」


彼の手は頭を掻いているように見えた。


「ごめん、人と長話をするのも久しぶりだからどこから話せばいいか分からなかったよ

 じゃあそこから話すよ。」


彼がコーリィだった頃の話はこうだ

彼は勇者でマミル・ライル・コンフィルはその勇者の仲間である。

異端紋章『最初と最後の紋章』を身に宿し世界の敵である魔女セシリア・オルヴィルの討伐を

目的に旅を続けていた。

その旅路の途中、コーリィは不思議な純白な石を拾った。

その瞬間、最初の紋章がその石に吸われていった。

しかし、石を持っている分には紋章も使用でき問題はなかった石を肌身離さないよう細心の注意をはらっていた。

しかし、問題は魔女との戦いにて起こった。

首から鎖でかけていた白い石は魔女との激しい攻防で鎖が切れ魔女の手中にあった。

そこから、彼は目も当てられないほどの酷い世界を繰り返してきたのだった。

その数は1000回転生で不幸自慢していた今のコーリィが恥ずかしいと思うほどの

天文学的な数字になると話していた。

また、純白の石がリンカーである説明やその他にいろいろと分らなかったことを

彼は惜しみなく教えてくれた。


話を一通り聞き、疑問に思ったことがあった。


「純白な石ってのがリンカーって奴だろ。それはさっき説明した紋章増強装置なんだよな。

 じゃあ何で紋章が奪われるんだ?」


「リンカーの初期化というものだね。詳しいことは僕もよく分っていないんだ。

 ただ、最初の紋章は最後の紋章と繋がっていて紋章力を共有出来るんだ。

 リンカーを使用するには増幅した分の紋章力が必要になるわけだ、

 それはどこで補うか、君は身をもって体験していないかい?」


「俺の紋章力からって事か・・・」


「リンカーは他者の紋章を強制的に奪い所持者に他紋章の使用と

 自・他紋章の威力増強、さらに奪った紋章を媒介に紋章力を

 強制的に共有させる事が出来る装置まさに鬼畜な装置だね。」


彼は声色を暗くしたが、すぐに元に戻し話を続ける。


「最初の紋章は世界の最初を司るものでね、つまりは物語の元、台本を作る紋章だよ。

 元々1つの世界限定の紋章なんだけど

 リンカーによって増幅されて複数世界の最初を構成でき、自世界を途中変更できる

 紋章に変わってしまったんだ。

 複数の世界の運命を構成するだけの紋章力を使うとなると

 流石の異端紋章使いであるコーリィの紋章力は枯渇するみたいでね。

 まぁ、回復には約10年かかるよ」


「・・・そうか、つまりは解紋の儀には紋章力は回復するって訳だな。

 しかし解紋の儀には紋章は現れなかった。これはどう説明するんだ?」


「それは彼女が最初の紋章を使って物語の微調整を行っている可能性があるんだ。

 覚えはないかい?今まで仲睦まじい家族が出来事一つで一気に崩壊したのを。

 今まで親切だったみんなが瞬時に敵意丸出しにしたことはないかい?

 無紋章である無害人物が出来ただけで?」


コーリィは息をのんだ。


「つまりはそういうことか・・・微調整って領域じゃないだろそれ・・・」


「規模の違いって所かな。しかし、ここで救いがある」


彼の口元が動いたのをぼやけた目で確認する。


「まず、今回セシリアは僕が君に戻る方法を探すまで生かすと言った。

 ということは少なからず微調整の負担が少なくなる可能性が出てきた訳だ。ここがポイントだ。

 最後の紋章が使える紋章力が貯まり次第、即座に解き放ってくれ。

 最後の紋章は世界の最後を締めくくる紋章。最初と最後が決められたとき、この世界は確定され

 世界の偶発的に起こった変更以外からの変更は一切受け付けなくなる。」


「つまりは思い通りに動かせなくなるって事か」


彼はうなずき話を続ける。


「しかし、彼女の言葉をすべて信じる訳ではないし、

 彼女の気が変わってしまうかもしれない。だから紋章も気づかれず即座に使えるよう

 君には少し細工をさせてもらうよ」


そう言って彼はよく分らない単語をいくつも連ねた。

それが終わったと同時に自ら視界の左上になにやら

見覚えのある棒とその横に『最紋』というボタンが見えた。

これはぼやけて見えていなくはっきりと

目に映っていた。


0/100[最紋]


「まぁ、それが現在君の紋章力を視覚化したものだよ。

 実は君の紋章力は天文学的数字なんだけど

 それじゃ分りづらいから、今回パーセンテージで表示してる。

 次の世界に入りったらその数値は常に動いていると思うから気にしていて。

 数値が90を超えたら最後の紋章が使えるはずだよ。

 使う際は隣のボタンを押せば詠唱なしで使えるから」


「一つ聞いていいか?」


彼は、どうぞと返してきたのでお構いなく話をする。


「話は分ったが、セシリアを一泡吹かす方法も世界を誰の干渉も受けさせないようにするのも

 全部分った。ただ、俺はあんたを信用しきっていない。あんた自身がこの世界の人間だったはずだよな。

 そんな世界にはステータスバーやグラフィカルなタッチパネル式なボタン、さらには

 俺の話の合間合間に出てきた前の世界の単語を理解しているように見えるんだがお前は

 そんな世界とは無関係のはず。なぜ知ってるんだ?」


彼は俯き少し間を置いた後に話さなきゃだめかい?と言いづらそうに

ほおを掻いている


「あぁ、じゃないと信用が出来ないもんでな」


そうかと、観念したかのようにうな垂れていた。


「とにかく怒らないで聞いてほしいんだけど、最初君がこの世界に来たときには

 僕はまだ存在したんだ。君と同じ体にいてね。君が僕の体を支配していて

 僕が表に出られなかった訳だ。僕はどうしてこう言う状況になったかを知りたかった

 そこで丁度近くには君の記憶がある訳だ。まぁ、最終的にはほら、最後に後ろから

 女性の声聞こえたよね、あれで分割されたんだ。」


俺の顔から血の気が引いていく音が聞こえた。


「まぁ、いろいろと勉強になったよ。ただ・・・ね

 個人的意見としてはもう少し成長した女の子をえら・・・」


コーリィは最後まで言わせなかった。

無意識に彼の口をふさいでいた。


「わかった。約束だからな。怒らない、仕方ないよな。

 身体は俺が使ってしまってどうすればいいかいろいろ探ったんだよな

 わかるわ、俺でもそうするわ。じゃぁ俺とも約束しようか

 このことはお前の意識記憶がある間は絶対に口外しない。いいな?」


彼は何度もうなずく。

それを確認した後にコーリィは立ち上がった。


「よし、それじゃそろそろ行くわ。

 道が見えたとたんに何とかなりそうだって気になった。」


彼もあわせて立ち上がった。


「そうか、最後に一つだけ聞いてほしい、最後の紋章は最後を決める紋章

 最後の内容は君で決めてくれ。どういう終わり方でもいい。君が

 納得できる終わり方にしてくれ。それが僕が君に出来るせめてもの償いだから」


「世界が勝手に俺を選んだんだろ、お前は関係ないし気にすることはないぜ」


「そう言ってくれると助かるよ。ありがとう。」


彼はそう言って頭を下げた。

それと同時に空間がだんだんと薄暗くなる


「ご武運を」


あたりが真っ暗になり、気がついた時は

いつもの母の手の中だった。


これが本当の始まりだとコーリィは

この世界での生を過ごすと決めた。

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