16話 探しもの
彼以外誰もいなくなり、シンっと静まり返る裏路地
彼はぼそっと独り言を呟く
「ふぅ、やっぱりこの超絶醜男って何からも嫌われるよね
今のイケメンだったら確実にイチコロだったぜ?」
そのつぶやきに返答するかのようにどこからか声が
聞こえてきた。
「あんたすごいわね、あんなに気持ち悪い演技されるとさすがの私も引くわ」
彼の真正面、空間に歪ができ、そこから金髪の美女がさっそうと出てきた。
彼は驚く様子もなく言葉を続けた。
「いやいや、あんなんで気持ち悪いと言われてもまだまだレベル1くらいの
キモさしか出してないんだけどな」
「それであの威力はある意味脅威ね」
「いや、この外見が最初の脅威でしょ」
「何いってんの?超絶イケメンじゃない。私メロメロのヌレヌレよ」
彼は鼻息を荒くし
「そ、それじゃぁ今すぐ宿にでも」
いきなり焦った口調を
装いつつ彼女を誘ってきた。
「宿に行って八大地獄よりも悲惨な楽しい事をがしたいの?
仕方ないなぁ~♪」
彼女は頬を紅く染めモジモジとその体をくねらせていたが
それを聞いた彼は冷や汗をながしながら目を泳がせていた。
「いえ、結構です」
淡々とした回答を答えるだけだった。
「さて」
彼女がこの言葉を口にした瞬間、
ふざけた雰囲気が一変した。
彼もそれを察知し、表情を引き締める。
「状況を確認する。
設定していた物語の結果が変わった事で
彼女も私達の存在に気づいているだろう。
今作戦で分かったことは上位権限付与石リンカーは
この世界では彼女の元にはない可能性がある。」
「何故です?彼女はリンカーを使用して世界を移動した、
もちろんリンカーも彼女と一緒のはずでは?」
「もっともだ、しかし理由はこの状況で未だリンカーの
反応がこの世界にあることだ。
普通なら私達の存在の影を見つけた時点で即座に
類似世界移動するはずだからな。
リンカーの反応は消えるはずだ、だが今残っている
ということは可能性を疑わざるえない
私達は彼女より早くリンカーを手に入れ、
リンカーを入手した後、彼女の確保。
彼女にあるべき世界の姿に再構築させる。
ここまで理解しているか」
「その彼女を先に捕まえたほうがいいのでは、
競争相手居なくなって探しやすくなるのでは?」
「あくまで持っていないという可能性だ。
彼女が何らかの方法でリンカーを隠し持っていたとしたら
それはまた前回のと同じ結果になるか
それよりひどい結末が待っている」
「それは嫌ですね。」
「だから、先にリンカーを手に入れ、権限付与の
恩恵が無くなった彼女を確保する
という流れが重要になるのだ。分かったな」
彼は即座に返答をよこした。
「もちろんです」
彼女は頭を掻きため息をつく。
「あぁ、最初のリンカー探しで既にかなり時間をとっているのも
現状だが世界に介入することをごく最小限に
押さえてほしいものなのだがな。」
「しかし、今回も無紋章のコーリィにリンカーが
渡されていると踏んでいましたが結局ありませんでした。
リンカーの行方がわからないまま振り出しに戻ってしまい
非常に悩みましたが、何かアクションしないと
探し出せない所にあるのではないかと閃いたのです。
ですので今回は攻めの心持ちで彼らを助けに行きます!」
彼らとはライル・マミル・コンフィルの事だ。
彼は自信満々にだらしない胸を張る。
それを見て彼女は大きなため息を着いた
「頼むから前回みたいな失敗はやめてくれよ」
その言葉で彼は前回の失敗を思い出し頬を掻いている。
「お前が余計な真似をしたから面倒な事をしなくては
ならなくなったんだからな。」
彼の顔が引き攣る。しかし、そんなことは
お構いなしに彼女が言葉を連ねる。
相当根に持ってるのだろう。
「リンカーを餌に本体を誘い込むという作戦までは良い。
実際に釣れたからな。彼女も何のリスクか自身を記憶喪失していた。
格好のチャンスだった。
しかし、細工したタブレットをお前が勝手に置いたせいで
彼女の記憶を思い出させた挙句
リンカーを使用され類似世界に逃げられてしまった。
さて、天文学的数ある類似世界の内、
この世界を見つけるまでに何年かかった?」
「は、86年です」
手には汗を、心に寒気を感じ彼は口を震えながら答えた。
「普通なら1000年は超えるがそれでも
遠回りと言わざるを得ない年月だ。
次失敗したら無限地獄より悲惨で楽しく遊んでやるからな」
彼の選べる選択肢は『はい』以外残されていなかった。
・・・
都第2広場都入り口前第1広場入り口前に比べ迫力は
劣るものの入り口に施された装飾の数々は目を見張るものがある。
そんな出入り口門の警備に同期で入った顔見知りの騎士と一緒に入っている。
ライルと入るはずだったのだが、いつの間にやら休暇の申請を
していたらしく、調整の連絡が聞き届かなかったらしい。
ライルめ、また女絡みだな。今度は会った時にきつく説教してやろう。
コンフィルの表情はいつにもまして頑なになった。
「おぃ、コンフィル」
同期の騎士が小声で声をかけた
「お前、いつにもまして顔怖すぎ、もう少し手加減しないと
謁見する前に我が民が逃げるだろが」
「すまない。気をつける」
都に来て気付いたことだがある。
俺の表情は非常に怖いということだ。
マミルやコーリィ、ライルはこういった事を全く気にせずに接していた。
つまりは慣れていたのだろう。
まぁ、そんなことよりも今は仕事をすることにしよう。
少し力を緩め表情を和らげた。
同期の騎士は続けて小声で話をする
「そういえば、お前宛に手紙が届いてたぞ。
なんだぁ?いかつい顔しちゃって彼女とかいたのか?」
「そうか、後で確認する。そんなことよりも今は仕事しろ、
王の護衛を任された騎士なんだぞ。緊張感が足りん」
それに追い討ちするように後ろから声が聞こえてきた
「そうだ、ヴィルヘルト。自らの職務を全う出来ん人間には
説教が必要のようだ」
っげっとした同期は恐る恐る振り向くとそこには騎士長が仁王立ちしていた。
どうやら俺達の会話を聞いていたようだ。
「さて、ヴィルヘルト、こいつを少し借りていく。」
「構いません」
そう行って同期は襟首捕まれ騎士長室へ連れて行かれた。
兵舎に戻ると封蝋が施された手紙が俺宛に届いていた。
「この刻印は・・・」
封蝋に刻まれている刻印はガリア商店の刻印だ。
あの商店は情報を売っていると聞く。
どうやらライルがまた余計な情報を買ったようだ。
近日、奴の無駄遣いが目に余る。
開いてみると、コーリィが都に来るという情報と
その日時が記載されている。
「コーリィか・・・」
ふと懐かしくなる幼年時代を思い返した。
彼と遊んだ日々はとても楽しい思い出だ。
そして忘れられない自らの器の小ささ、弱さを知らされた
出来事も彼を中心として起こったことだ。
それが糧となり、今の俺がいるのだろう。
そんな彼が都にかと考えると少し嬉しくなる。
観光か何かなんだろうか。
まぁ詳しくはライルにでも聞いておこう。
それから10日程経った。
ライルは何処をほっつき歩いているのか
連絡すらよこさない始末。
次あった時には説教だ。
・・・
本日は都の巡回の任務を担った。
街道を歩く。今日は雲ひとつ無い日差しの強い日だ
正午も過ぎた辺りで日差しは最高潮だ。
さらに鎧も着用しているため非常に暑い。
しかし、こんなことを思っているのでは
まだまだ未熟の証拠である。
意識を変え、街の風景に視線を移した。
活気のあふれる町並みに、不思議に顔が微笑む。
平和な街だ。素直にそう思えた。
町中を歩いていると、向かいから走ってくる
女性の姿があった。顔ははっきりとは見えないが
淡黄色の長い髪が誰かを連想させた。
しかし、彼は男だ、髪もあそこまで長くはない。
仕切りに後ろを気にしながらこちらに向かってきていた。
この状況から察するに、誰かに追われているのではないかと
判断し、彼女に声をかけることにした。
「突然失礼致します。」
その言葉に後ろばかりを気にしていた彼女が振り返る。
とても美しく、華やかな方だった。
俺は一瞬自分の立場を忘れ彼女に魅入ってしまっていた。
少し間があり、彼女の方から口を開いた
「えーっと・・・追われているわけではないのですが、
丁度あそこの裏路地で怪しい人物と遭遇してしまって」
彼女の言葉にハッとし自分の立場を思い出した。
とにかく彼女を安全圏に移動させた後、護衛を1人付けて
返すのが得策だと瞬時に思考がたどり着いた。
「わかりました、あとは私の方で調査させて頂きます。
あなたも護衛として騎士を1人付けさせて頂きますので
大丈夫で」
彼の言葉に覆いかぶさるように彼女は大声でそれを拒否した。
「いえ!1人で帰れます。」
彼女はそう言うとまた走り出し人混みに消えていった。
綺麗な人だがあのおっちょこちょいな所もまた
可愛らしい。
表情を切り替え、コンフィルは裏路地に入った。
いかにも犯罪の温床となりそうな場所だ、
この場所は仕切りに巡回する様に上の方に報告しなければならない
と考え注意深く目線を巡らせ足を進めた。
しすて裏路地を抜けて別の中道へと出た
怪しい人物の姿は何処にもなく既に場所を移動したのだろう。
今回は特に何もなく良かった。
早期発見に務めるようこういった裏路地も巡回するように
しよう。
「さて、街道に戻るか」
独り言をつぶやき、コンフィルは通常の巡回ルートへと戻った。
それにしても先程から胸の高鳴りが止まらない。
彼女に会ってからだ。
次に会った時には名前位は聞いておこうと決心した。




