15話 向かった先
雲ひとつ無い都の教会前中央広場
活気溢れた広場の中央噴水前で1人の女性が立っていた。
その女性は淡黄色の長い髪と前髪のアシンメトリーが特徴的であり
他の女性とは明らかに他の助成と違う服装であるが露出が多からず少なからずな服装。
そこから滑らかな曲線を描き現れている白く細い肢体は周りの男の目を奪った。
彼女を誘おうと幾多もの紳士諸君が声をかけただろうか。
彼女はそれを丁重に断っていった。
「ふぅ、女の子も大変だな」
彼はライル・ガンゴルド
10日前に手に入れた『性別転換薬』を使い
女性へと性別転換した。
性別転換薬には持続時間があり、薬1つにつき
使用した時間から1日となる。
しかし、再度性別転換薬を飲んでも
男には戻らない。
つまり使用したら1日は女のままなのだ。
護衛騎士の緊急要請時どうするかと考えて使用しないといけないのだが、
今回ライルは遠方への旅行と称し休暇の申請をしていた。
それにより、満足に女性ライフを楽しむ予定であったのだが・・・
・・・
あれからコーリィとは会っていない。
いや、連絡が取れないといったほうが良いかもしれない。
教会へコーリィの所在を聞いてみたが友人であっても面会することが難しく
帰されてしまった。では直接本人に聞けば良いと考え、
こうして教会前の広場で張り込んでいるのだが
先程から何度も男からアプローチをされる。
そんなものに構っている余裕もないのだ。
張り込んで5日、教会からコーリィが姿を見せることは一度もない。
20日間教会内で生活をしなければならないのは分かるのだが、
いくらなんでも一度も外に出ていないというのはおかしい。
無紋章の研究という契約内容に誤りは無いと思う。
契約されている内容を管轄からツテで閲覧させてもらったが特に問題はない。
では一体教会内で何が起こっているのだろうか。
僕の権限では教会への強制捜査なんてものは出来ない。
今この場でこうして待っている以外できる事がないのだ。
それがすごくまどろっこしくて苛つかせた。
すこしして、見覚えのある2人が教会の正面玄関から出てきた。
10日前に道端ですれ違ったミスマッチカップルだ。
何故、こんな所にいるのだろう?
そういえば彼らを見た瞬間のコーリィの様子がおかしかった。
彼はなにに対して驚いていたのだろうか?
最初は美女と醜男のミスマッチか何かで驚いていたと思った。
しかし、今よくよく考えてみるとそこまで驚くほどの事でもない。
だとすると別のなにかに驚いていたとしたら・・・
そう考えると私は彼らの後を追った。
・・・
彼らは教会広場から第一広場に向けて街道を歩き出した。
10日前にコーリィと一緒に歩いた道だ。
多くの人々が行き交う主街路で人々に紛れながら相手を
見失わずに追跡するのは骨が折れる。
彼らが主街路の途中で裏街道と主街道の中道に足を進めたときは少しだけ感謝した。
彼らは中道を進んでいき途中さらに幅が短くなった裏道へと入っていった。
彼らが入っていった裏道は家屋と家屋の間に出来た隙間のような道だ。
こんな所をわざわざ2人で通る事があからさまな怪しさをかもちだしていた。
彼らの後を追おうとしたが、この裏道を通ること自体、後をつけていますよと
相手側に知らせているのと同じだ。
「こういう時に役に立つのが風の紋章なんだよね」
元素『風』は攻撃力などでは他の元素に劣るもののバリエーションに富んだ紋章である。
例えばこんなことも出来るだろう。
紋章より発せられたそよ風が裏道へと入っていく。
そしてそよ風が先程までいた街道の方から帰ってきた。
要するにこの道は少なからず別の中道もしくは街道につながっているということだ。
これで、裏道の先は行き止まりで彼らに待ち伏せされているというような
という展開は無いと考えても良いだろう。
僕は彼らを見失わないタイミングを想定しながらかつ後を付けられている事を
認識させないような距離感を保つように何度かシュミレーションし裏道へと入った。
裏口は一定の幅を保つように続いていた。
これならすぐに別の中道へと到着するだろうと踏んでいた。
少し開けた場所に出た、ここが別の中道なのだろうか。
しかしそれは勘違いだと理解した。中道ではない。行き止まりであると。
ではどうやって風は一周し戻ってきたのか。
紋章で作られた風は分散することはない。
行き止まりだった場合はそのまま裏道から戻ってくるはずだ。
ライルは行き止まりになっている壁、物を隅々まで探った
隠し扉や隠し階段などが無いか確かめるためだった。
しかし、そういった類のものは一切見つからなかった。
ライルは困惑した、では何故風は別の場所から戻ってきたのか、
そして行き止まりであるこの裏道から彼らはどこへ行ってしまったのか。
疑問だらけだった。
「おい」
後ろからドスの利いた声が聞こえてきた。
振り向くといかにも悪事を働きそうな外面をした
4人組が立っていた。
「こんな所で綺麗なおねぇさん1人で何をしてっかな~?」
耳に障る口調で4人組の中のひとりが口を開いた。
「別に、あんたらには関係ないことよ
道戻るからそこどいて」
そう言っても男たちは道を譲ろうとはしなかった。
「まぁ、そっちは関係なくてもよ~、俺達は関係あっからよ!」
そう言って男たちは一斉に襲い掛かってくる。
話し合う余地も無いというか先走っているのかは分からないが
とりあえず僕は彼らに襲われているらしい。
まぁ、護衛騎士がチンピラ4名に負けるはずがない。
たとえ今が女であろうと対人での技術力では上のはずだ。
そこをついていけば1人1人倒れていきいずれ終わるだろう。
そう踏んでいたはずだった。
しかし、僕は女体というものを完全に理解していなかった。
「うひっひひひ今日はかなりのべっぴんが狩れたぜ~」
結果、僕は多少の攻防はしてみせたが、与えるダメージ量の低さからこちらの
体力が先に尽きてしまい彼ら4人に一斉に取り押さえられた。
大男4人に捕まり一切の動きができない状態だ。
声をあげる前に専用の道具で口を封じられた。
この手際の良さと用意は初めての犯行ではないことが伺えた。
「さぁて、ここからがお楽しみだぜ~?ヒィヒィ言わしてやんよ」
僕はこれから輪姦されるらしい。
まぁ4人が1人の女を押さえてやることといったらそれしかないだろ。
でも僕は元が男なんだ、やめてもらえないかな、いややめて下さい
お願い!、お願いだからやめて!!
ライルはその工程が頭の中を過り、恐怖に怯え涙目になっていた。
口は封じられ、手足は縛り押さえつけられている。
この状況で助けを求める術が失われているのだ。
「ほっぉぉぉぉ、良いもん穿いてんね。となると育ちは良いな、
犯った後に両親への身代金ってのもありだな」
スカートを捲り上げ下着の判定をする所が変態じめて蹴り飛ばしたくなる。
「さぁて、それじゃ、そろそろお楽しみと行こうぜ~?」
彼らが小さく同意し、僕は横に寝かさにさせられる。
下半身を弄られた時の嫌悪感と不快感が入り混じった感情は
彼らへの殺意であると認識できた。
太ももの付け根の部分に男の指が触った瞬間、
恐怖の感情が開花した。
涙は頬を伝い、激しく抵抗しても彼らも力づくて
押さえつけられていて何も出来ない。
では紋章は・・・通常なら市街で許可無く攻撃紋章術は使用できない。
しかし、口を封じられ詠唱が出来ない。
八方ふさがりだ・・・
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
彼は僕の下着をずり下ろす。
『誰か・・・助けて・・・』
声にならない思いを願った。
「プギャー、男どもが寄ってたかった女の子に何ひどいことやってんだろうね?
ドゥフフ」
突如現れた人物に男たちは驚き、声のした方向を向く。
僕も首だけを動かしその声のした方を向く。
少し低音で口調が非常に気になるが耳にはいる通る声をしている。
勇敢な人なんだろうと思った。
しかし、僕が目にしたのは豚以下の醜い生き物であった。
数日は風呂に入っていなかろう油ギッシュな肌、カサついた不健康な肌。
何を食べ続ければそんなに太ることが出来るのかと思うくらいふくよかな身体に
ベタつき肌に張り付いた黒い髪の毛。
そんななか、唯一かっこいいと思ったのは声のみだ、
しかもあのカップルの片割れである醜男だ。
一体どこから現れたのだろう。
登場した彼はやけに光を反射する眼鏡を着用し、
その眼鏡を中指でクイッと上げる仕草をしていた。
辺りはシンっと鎮まり誰ひとり声をあげようとしない。
僕もまさかの展開についていけなかった。
そして彼はまた眼鏡を上げながら一言つぶやいた
「アプデ、お前たちは健全なる都の民である、その体を労働に捧げよ」
彼らみたいな悪党がそんなことを聞くわけがないだろうと思ってしまった。
「はい、分かりました!」
4人はそう言うととすぐに僕を開放した。
そして髪型、服装を直しながらそのまま裏道から出て行った。
唖然とした。何故彼らはあの男のいうことを聞くのだろうか。
「あ、あの助けてくれてありがとう・・・ございましゅ」
噛んだ、こんな時に・・・
しかし彼は満面の笑みでこういった。
「デュフフ、ドジっ子属性な娘を助けたでござる
これは何かのフラグ?デュフフコポォ」
寒気と生理的嫌悪感が僕が抑えられる限界を一瞬で突破した。
僕はその場から急いで裏道を戻り走った。
追跡対象相手である彼をその場において。
・・・
「何故?」
ラギルスの街、その多々ある住宅の
1つでその1室に彼女はいた。
木造の単調な椅子に座り、
目を閉じて状況を考察した。
私は改変された物語を目の当たりにした。
私が作り上げた物語ではライルはコーリィと別れた後の
中道で温厚そうな外面をした商人に試飲を勧められ、
性別転換薬を飲まされるはず。
そして女になった後に商人のグルである男どもに捕まり輪姦された後、
そのまま奴隷市場へと売られるが途中反抗し、
首を切られ死亡する物語だったはずだ。
それが改変された。誰かが邪魔をしたと考えると
その者は同じ異端紋章の持ち主なのだろう。
商人が性別転換薬を売り、性別転換薬を使ったという事実は
確かに起こった。ライルが襲われたという事実も確かに起こった。
ここまで私の紋章が異変を察知しない様にごく最小限に改変がされている。
しかし最後の結果だけが代わり私の紋章が改変に察知した。
しかし、察知が遅すぎた。
改変された物語では何者が助けたのか分からない。
物語外の人間が現れたという可能性が高い。
今回は遅れてしまったが、この様子だと
コンフィル、マミルの場合が残っていることを考えると
次回も起こるということは予想できた。
その機会を見つけ何者かはっきりとさせよう。
私の物語を勝手に書き換えた代償をちゃんととってもらわなくちゃね。
・・・ねぇ、セシリア。
私は主人格であるセシリアへと頭の中で声をかけたが返答はない。
それもそうよね。あたしでも驚いているもの。
あなたはそれ以上に驚くわよね。
折角、理想への道標を見つけたばかりなのにね。
元に戻されるなんてたまったもんじゃないわよね。
「見つけ次第、徹底的に潰してしまいましょう」
高揚する思いを抑えきれずつい口で言ってしまった。
まぁ、1人だから別にいけど。
彼女は1人ニヤっと不気味に笑いながら椅子に佇んでいた。




