12話 1000回分の幸せをと
広場に居るものは自ら立場を忘れ、彼の今までの我慢を体感したかのように
自らうちに眠る感情に揺さぶられた。
むせび泣く無力な少年に私達は何をしているのか皆が自ら考えに疑問を持ち始める。
傷つきそれでも少年を守った少女は微笑んでいる。
それを遠目で見ていたガリア。
その表情は憑き物から開放されたかのように生気がある。
そしてコーリィとセシリアのいる方向へと歩き出し
二人の前に来ると同時に2人を太いく広い両手で抱きしめた。
「こんな小さい子共に教わっちまうとは、俺も馬鹿が過ぎてたみたいだ
無力な大人でごめんな、コー坊、セシリア」
ガリアは一緒に泣いてくれた。
自ら行いを恥じたこと、娘が教えたくれたこと
何よりも娘が大切なものを身を挺してでも守ったこと。
それから数日が経った、展開は凄まじい勢いで修復していった。
俺が外に出る度にすれ違う村人たちに謝られ、
買い物をするとオマケが付き、商品を眺めていると
格安価格で販売してくれた。
家に詫び品を持ってきてまで現れる人たちだっていた。
至れり尽くせりのこの状況は何なんだろうと疑問に思ったが
まぁ、これでようやくあの日から開放されたと安堵した。
だが、コンフィル、ライル、マミルの3人は
コーリィの目の前に現れず彼らが都へ行く前日になった。
コーリィは見送りくらいはと
人だかりがある村の入出口を遠目で見ていた。
久しぶりに見る3人はこれから向かう都への好奇心と
村を離れる哀感が入り混じったように喜んだり、たまに
寂しそうな顔を浮かべていた。
マミルが遠くから見ている俺に気付いたらしく
少し悩んだあと、笑顔で手を降った。
ほかの2人にも俺の存在を明かし、
2人もまた俺に手を振る。
俺も手を振り返す。
すると、3人は俺のもとにすごい勢いで走って来た。
少し息切れしながらも俺に言いたいことがあるらしい
ような顔をしていた。
先に口を開いたのはコンフィルだった。
「コー、ごめんな。」
「いや、もう過ぎたことだし、大丈夫だよ」
「コーより自分が大切だったのはあの時の俺の態度を
見れば当然だ。俺は自分が強いって思っていたけど
実感した。俺はここに居る大人たちよりもはるかに弱い存在だった
だからさ、今度はどんな状況だろうとお前を
守ってやれるくらい強くなってくるよ。」
「うんわかった、期待してるよ」
そうしてコンフィルト固く握手を交わした。
「コーちゃんごめん」
軽い謝罪、しかし納得行かないような表情を浮かべるライル。
「おい、ライル。」
コンフィルに正された。
何が言いたいのかわかっているらしい。
「コンちゃんわかってるよ~」
ムーっとした表情で俺を軽く睨む。
そこに敵意などはなかった。
少し間をとりため息混じりに息を吐いた。
「コーちゃん、僕はあの時コーちゃんが皆から
虐められている時、ざまぁみろって思ってた。
僕にないものをみんな持っていたコーちゃんを
僕は羨ましかったんだ。」
俺が記憶保持しての転生者だから。
当然そんなことを知らないライルは何を取ってもそつなく
こなすことに俺に嫉妬したらしい。
「だけどさ、ずっと心の中で引っかかってた。
僕はコーちゃんを虐めたかったのかな?って
じゃあなんで友達になんてなっていたんだろうって・・・
でさ、ようやく気付いたんだ」
俺が・・・憧れだったんだな。
俺ももう少し子供らしくすれば
そういった事を思わなくてもすんだのにな。
俺こそごめんだ、ライル。
「僕はコーちゃんが好きなんだって」
・・・は?
しんみりとした雰囲気が一気に凍りつく。
俺は一瞬我を忘れ固まってしまった。
コンフィルとマミルも同じだった。
ほのかに顔を赤くにしながら
もじもじと恥ずかしげに両手をいじりっている。
確かにぱっと見は女に見えなくもないが
こいつは男だ。
「あの広場の時、セシリアちゃんがコーちゃんを抱きしめた時
すごいなって気持ちと一緒にずっとなんかモヤモヤってなってた
これ嫉妬していたんだよね!きっとそうだ!」
「ら・ライル、もういい、もういいぞ」
コンフィルが止めに入るが一度本音を口に出したライルは止まらない。
「マミルやセシリアちゃんが羨ましくてしょうがないの!なんで2人だけ
コーちゃんといちゃいちゃいちゃいちゃして!ズルい!」
「私、コーちゃんとイチャイチャしてないよ~!
そんな事したらセシリーにチョメチョメされちゃうよ!」
マミルがとっさに弁解しようとしたが即座にライルは論破にかかる。
「嘘!僕は知っているよ、セシリアちゃんが村に居ない時を狙って
コーちゃん家に1人で遊びに行っていたじゃないか。」
「それはコーちゃんからお菓子を貰いに来たんだよ」
コーリィは思った、貰いにではない。たかりにだと。
「じゃあ2人で仲良く川辺で遊んでいたよね?僕とコンちゃん
差し置いて。」
「な、なんで知ってるの!」
「2人でキャッキャウフフしている最中に
僕ら二人でだるまさんがころんだしてたんだよ?寂しかったよ!」
「カイル、もういい、もういいから俺も泣きたくなってきた」
コンフィルがうなだれている。
相当苦痛だったのだろう、じゃあ何故やった。
・・・
4人を気まずい空気が支配した。
「・・・いろいろと言いたいことはあるけど、それでもさ、
僕はコーちゃんを見捨てようとしたんだ。これは僕が一生背負わないと
いけない罪、ごめんなさい。」
ライルはおずおずと手を差し出す。
一生背負うとかなんか重いがそれでも
ライル自身の誠心誠意の言葉なのだろう。
その手をしっかりと握りしめた
瞬間ライルは俺を見て満面の笑みを浮かべた。
「ちなみにさ、コーちゃん」
悪寒がした。
「コーちゃん、ワンピースと
短いズボン履いている子好きだよね」
「あ、あぁ、何故わかった?」
たしかにそうだが、何故バレた?
ちなみに襟付きシャツのミニワンピとショートパンツの
コーディネートが大好物です。
インナー?目立たなければんなもん適当でいいよ。
見えそうで見えないよりもちらりと覗かせる
ショートパンツがって所に萌えを感じる。
しかしこの世界はそんなファッションしている
奴らがゴロゴロしているわけではない。
冒険者のねえちゃんとかたまにベリーでロックなショートパンツ履いている。
ワンピースはよく他の女の子たちが身に着けているのを見ているが
たまに上着みたいにつけている女の子がいるから
それをジーっと観察していた記憶があった。
「うん、コーちゃん観察してたから」
どうやら観察していた俺も観察されていたらしい。
なにそれ怖い。
「次会うとき、着てくるから感想きかせて」
え?これは聞き流しておこう
そして最後に締めくくるのはマミルだ
「うん、私も言いたいことはコンちゃんと同じ。
本当にごめんなさい。浮かれていたって言えばいいのかな?
どんな紋章が出ても大切な人守れなかったら意味ないのにね」
少し間をおいているのだが、ものすごいデジャブを感じる。
いや、数秒前もこの雰囲気になったよな。
「私も・・・さ、コーちゃんの事、好きだよ?」
「そ、そうなんだ」
ライルといいマミルといいこの世界の
俺は男女にモテる両刀使いなのか?
それとも転生1000回分の幸せが今訪れているのか?
「・・・でもさ、あんな事出来るだけの勇気は
私なかった。だからあの子について欲しいな」
マミルはその歳で意外と大人な発言をするな。
こいつもしや転生者か!?
んなわけ無い。真面目に聞こう。
「わかった、約束するよ」
そのあと少しだけ沈黙の間が訪れた
マミルはなにか続きを言いたげな様子だった
そして、意を決したかのように口を開く
「コーちゃん、あのね!」
「コーちゃん」
コーリィの後ろからセシリアの声が聞こえてきた。
一瞬遅れて金属製の椅子を引きずると出すような時甲高い音が聞こえた。
マミルは明らかに、動揺していた。
そんなにこいつが苦手なのだろうか?
セシリアはそのままマミルに向けて歩いて行った。
「マミル、そんなに怯えないで大丈夫だから」
「そ、そう」
「うん」
セシリアは丁度マミルとすれ違う
その際なにかつぶやいたようだ。
「コーちゃん、今日はアキメさんの商店に用事があるから
またね」
そう言って走って去っていった。
去った後のマミルの表情がこわばっていた
だが、誰ひとり追求するものは居なかった。
セシリアの姿が見えなくなると3人は一斉に
「コーちゃんも頑張ってね!」
「コー、しっかりカーネスト嬢を守れよ」
「コーちゃん、今度帰ってくるとき期待しててね!」
と言って皆、急ぐように村入出口へ戻っていった。
彼らは一足先に都へ旅立っていった。
いつもの仲良し4人組プラス1名は離れ、
今はコーリィとセシリアの2人のみになった。
そしてコーリィらは彼らと同じように、都へ行けるよう
努力を始めた。
それから6年の年月が流れた。




