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11話 明るいく楽しい未来の為に

異端紋章


歴史上確認されている分類分けが出来ない紋章の通称。

ケタ外れの力を持ち、1つの異端紋章が

世界を変えるとも言われている。

異端紋章の恩恵があった者は

必ず歴史に名を残している。


昔読んだ紋章術の一部分を思い出した。

もしかしたらの話だ。

俺には異端紋章が存在しているのかもしれない。

それはとんでもなくふざけた効果の紋章なのだろう。

でなければこの不可解な現象は起こらない。いや起こせない。

もしこの世に神様が居るのなら言ってやりたい。

悪ふざけも大概にしろと。


俺の転生は1000回目を迎えた。


同じ人物、同じ家柄、同じ境遇で最初からやり直し続ける。

しかし、すべて10歳のあの日で終わってしまう。

一歩家から出れば、罵詈雑言<<ばりぞうごん>>の嵐

姿を見せれば石を投げられ、目を合わせたら

苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべる。


それでもと躍起になり

村から出て行くと道中魔獣に襲われて殺された。

地図すら持たず布切れ一貫で村の外に出歩く危険性を

痛感させられた。


それなら逆にほとぼりが覚めるまで家の中で引きこもり

続けたら今度は親に殺された。

両親は非常に世間体というものを意識する方々らしく

役立たずニートは殺すらしい。実に素晴らしい考え方だ。


それならこちらから攻めてみようと助けを求めてみた。

村の皆は快く俺を殴り蹴り罵倒した。

最終的に真っ裸にされ四つん這いで村を一周させられた後

首を掻っ切られ殺された。


流石に俺も怒ったよ。俺が皆を殺す側に回ればいい

俺は事前に旅商人から買っておいた片手剣を持ち

村人を斬って回った。両親だろうと友達だろうと関係なく斬った。

しかし、数人ほど斬った後、傭兵もどきに取り押さえられた。

その後、舌を切られ、目を潰され、毒虫がうじゃうじゃいる部屋に放り投げられたり、男にとって大事なものを切り落とされ、生きるために大事なものを引きずり出されたり等数々の拷問にかけられた後、魔物の巣窟と有名な森に捨てられそのまま魔物の餌になった。


そんなことを試行錯誤しながら繰り返し繰り返しやってきた。

やられてきた。

しかし一向に状況は改善できず俺の精神もすり減ってきた。


繰り返す転生の中、生気は無くなっていき、

ただ先の見える展開に自分で決めた当たり障りない

台本を口にするだけの存在となっていった。


最初のコーリィが絶望の淵に立たされていた時に現れた

あの女はそれ以降姿を表さない。

草原丘から祭囃しが聞こえなくなった事がそれを意味している。

もちろんタブレットもそれ以降手に入れることはなかった。


この袋小路をどうしたら突破できるのだろうか。


1000回目の世界。3歳になるコーリィはただ虚ろに遠くからガリアの商店を眺めていた。

近づいたらガリアに声をかけられセシリアと出会いを果たしてしまう。

しかし、遅かれ早かれ彼女はコーリィと出会いを果たす。

そして必ずコーリィの味方をしようとしてくれる。これがこの世界の運命と言ってもいい。

しかし、過ごした時期が短いほど彼女に振りかかる不幸の負荷が少ないのだ。

全ての暴力・罵詈雑言は俺に向かう。


やるかやらないかのジレンマ、何度も何度もこの考えに至り、

後回しにした最後の鍵。


セシリアと親密な関係になれたらこの袋小路から

脱出できるのではないかという仮説。

しかし幾多もの暴力・罵詈雑言を経験してきた。

それがセシリアに振りかかるとなると気が気でなくなる。

しかし、それでもこれしか方法がない。


重い足取りでガリアの露店へ足を運ぶ。


「おぅ、いらっしゃい。小さなお客さんだな。」


近くで見ると更に大きく感じるが、その笑みには

敵意を感じないすごい好意的なガリアだった。


それがあと7年もすれば敵意丸出しで俺を殴り殺した

の筋肉達磨さんになると思うとその笑顔ももはや意味を成さない。


「うん、珍しいものがいっぱい」


「そうだろそうだろ、どれも都にある商品だからな。

 そうそうお目にかかれないと思うぜ。」


「これは甘いやつ?、これは辛いやつ?」


コーリィが指さしたのはりんごと唐辛子である。

基本名前は違うが野菜の形状は同じなんだと再認識させられる。


「おぉ、そのとおりだ。」


「食べ物がいっぱいどこからきたの?」


「となり町のラギルスの町からだ、10日に3回はこの村で商売してんだよ。」


物は言いようだな、本当は4日に1回だろうが。


「全部都のなんだね。ふーん」


ここは絶対に詳しくは聞かない。長いし。


「おじさん名前なんていうの?」


「俺はガリア、坊主の名前はなんていうんだ?」


「コーリィ」


「そうか、コーリィか、よく見たらうちのセシリアと同じくらいみたいだないくつだ?」


セシリアキター!と言わんばかり心が舞い踊る。忙しく商品陳列を手伝っていたセシリア

やはり何度見てもこの頃が一番可愛い。


コーリィの中で最初密かに計画していた

幼馴染育成計画を思い出した。

何も考えず暮らしていたあの頃が懐かしい。

と感傷に浸っていたら。


「おーい、コーリィ。いくつなんだ?」


おっと、感傷に浸っている場合じゃなかった。


ガリアが聞こえてないと認識したのか再度聞いてくる。


「僕、3歳」


「おぉ、やっぱり同じ年か、せっかくだセシリアのお友達になってもらえないか?

 このとおり俺以外とは話そうとしないんだ」


「いいですよ」


コーリィは快く頷いた。

そして、セシリアの前に手を差し伸べた握手って意味で出したのだが

セシリアは身を引っ込め固まっていた。


「いや、パパだけでいい」


セシリアはその発言の後、少し唸っているようにも聞こえた。

最初はかなり警戒されていたからな、それくらいはあるだろう。

俺は最初のコーリィを演じるべく台本通り口を開いていく。


「僕はパパと仲良しだよ」


セシリアはガリアを見るガリアは笑いながら頷く


「そうそう、俺はコーリィと仲良しだ」


ガリアがそう言うと影で隠れていたおとなしめにセシリアが姿を表した。


「パパと仲良しは私ともすっごい仲良し!!」


少し台詞変わってないかと思いながらもまぁいいかと流した。


これから俺が手を差し出し、それがスルーされ

この世界のコーリィ・サスウェイのファーストキッスと持ち込むのが

当初の予定だ。


手をすり抜けたセシリアはコーリィの首に手を回し

二人の唇が重なった。


・・・


うーん至福の時間だ。



・・・

・・


…ん?


至福の時間長くない?


疑問が頭をよぎる

すると初めての感触が唇から口内にかけて広がった。



「!!!?」


台本にない濃厚なアドリブ。


なになにこれなに?え?え?え?

困惑と驚きが合わさり頭の中がかき回される。


舌と舌のからみ合いが口内で行われていた。

耳にも聞こえる唾液同士の絡み交わり合っている音が

俺の理性のリミッターを壊しにかかっていた。

しかしここで辞められるはずもなくされるがままに

何度も何度も唇を合わせた。


「せ・セシリアー!!お前はなにやっているんだ!!」


ガリアがセシリアを強制的に引き剥がした


「はふぅ」


引き剥がされる際にセシリアの吐息が鼻にかかる。

甘く暖かい匂い。彼女の顔を見た。


とてもご満悦な顔だ。


これもこれで・・・・悪くない。


それから7年間、俺とセシリアは会う度に新しい事を

一緒に体験した。

あえてそこの詳細は省こう。


・・・


時が経ち1000回目の運命の日を迎えた。

今回の転生は何かが違う。そう思い自分に紋章力があることを期待していたのだが

そこまで都合よく世界は構成されていないようだ。


村人方々よりアンデットと呼ばれ慣れたのか

そろそろ普通に返事が出来そうだ。


広場でセシリアとガリアが俺を見ている、

その他にも友人、両親、仕事仲間その他大勢が俺を蔑み、

汚物を見るかのような視線で俺を見ていた。

ガリアはセシリアの前だというのに明らかな

嫌悪感を表情に出していた。

何度見ても堪える光景だ。


台本通りセシリアが俺へと向かってこようとする。

しかし、ガリアの怒声にも近い忠告が広場を駆け巡る

っが、セシリアはそれを無視し、俺へと歩き出そうとした。

そんなセシリアにガリアは憤怒し、セシリアの頬を叩き

忠告を聞くように促した。

叩いた威力が強かったのかセシリアは地面に

叩きつけられるかのように倒れた。


これは俺の転生していた中で最も強く叩いたのだろう。

ここで俺が逃げればセシリアはこれ以上の暴力は受けないはずだ。

今俺が向かえば俺はガリアに殴り殺される、

これは過去の経験で体験済みだ。

しかしここで逃げたら最初の二の舞だ。

拳を強く握り状況を見守る。


「ぃ・・・やだ」


台本は破かれ、袋小路に穴が開けられた瞬間を見た。


「嫌だ!!」


セシリアは立ち上がった。

目は真っ赤にし涙が止めどなく流れている。

鼻水が垂れ、叩いた衝撃で口が切れそこから出てくる血と

交じり合い地面に落ちる。


よろめきながら俺に向けて歩き続ける

村の皆がこの光景を見ていた。

歩くごとに嗚咽が混じり、よだれと血と鼻水が混じった液体が地面を濡らした。

それを隠す様子もない。彼女がどれだけ必死かを物語っている。

俺から動くことは出来なかった、足が・・・動かなかった。

そんな俺の様子を知っているのかセシリアは最後の最後まで自ら足で俺にたどり着いた。

距離にして20mもない位の距離なのに、永遠に続くと思うほど長く感じた。

セシリアは俺を抱き包み、力なく微笑えんだ。


「コーちゃん、つーかまーえた♪」


壊れた。


何か我慢していた感情が洪水のように溢れだした。

叫び声に近い泣き声が広場中を駆け巡った。

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