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Invisible scars~傷だらけの棋士と四人の少女~  作者: 罠崖
第一部 傷だらけの棋士と四人の少女
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22歳20+epU_傷だらけの棋士と四人の少女

 暮香浮草


 あれ?

 何でこの人たち、私を応援してるの?


 若手の元ダンサーが立ち上げた、小さな事務所だった。社長がマネージャーで、アイドルは私だけの事務所。

 いつも一緒にいて姉のように慕っていた。二人三脚で営業して、レッスン場を借りてもらって、曲も作家さんから格安で借りられるものをいくつか覚えた。

 オリジナル曲にはできない契約。社長にはお金がなくてごめんねと言われた。

 売れたらオリジナル曲にお金が使える。CDも売れる。頑張ろうって励まし合った。

 ソロアイドルの小さなライブは赤字だった。

 方針変更した。小中規模のアイドルのライブの前座やコラボ相手として売り出してもらった。開催費用は多く持つ条件で。

 社長は頑張って営業してくれた。

 いつしかファンが倍々ゲームで増えてる気がした。簡単だった。私は可愛いんだ。

 増えたファンは、コラボ相手のファンばかりだった。新規獲得じゃない、横取りだ。

 弱肉強食なんだと思った。相乗効果なんて期待する方が馬鹿だ。

 二人で結構稼げたと思う。具体的な金額はわからないが、私の名前でチケットが売れる。

 三曲目を作ってもらった時、社長が苦情の電話を受けていた。

「もううちとやりたくないんだって」

「大丈夫だよ。単独でもいけるよ」

「無理だよソロじゃ」

 あの睡蓮さんですら元はユニットスタートだ。着実ではあるが無駄足だったと私は思う。


 完全ソロライブ。お客は一杯いた。

 前座はいなかった。引き立て役はいなかった。それでも盛り上がったと思う。

 社長が褒めてくれた。それが何よりも嬉しかった。

「浮草は凄いね。本当によくやってるよ」

「睡蓮さんが目標だからね」

「偉いよ本当に」


 次のライブが決まった。

 チケットは余りまくった。

 他のライブが少し先に発表されていた。

 私のライブの前日、私にファンをおすそわけしてくれたところ同士がコラボしてた。

 見に行ったわけじゃない。でも察した。ああ、私、孤立したんだ。

 お金はいくらかあった。社長に見切りをつけたいと言われた。まだ続けたかった。

 私が売れれば売れるほど、社長への苦情は増える。それでも稼ぎになるから続けていた。

 稼げなくなったら私はただの問題児。姉のように慕っていた社長に見捨てられることを察した。

 昔からの友人、桜蓮ちゃんに相談した。今売れている人気のアイドルユニットのリーダーだ。

 Lotusに誘われた。嫌だった。桜蓮ちゃんの下につくの? 睡蓮さんもほとんど出ないのに?

 友だちではある。だけど、仲よしこよしで一緒にできる世界ではない。

 桜蓮ちゃんの優しさに甘えるのは、売れなくなったアイドルでもプライドが許さなかった。


 事務所にお声がかかった。タイミングがよすぎる。木蓮さんだった。ドライブに連れて行ってもらった人。

 助けてくれるんだ。もう木蓮さんはLotusとは関係ない。ソロでもやらせてくれる。

 亜嵐という木蓮さんの上役もいた。引き抜きの交渉らしい。

 社長は亜嵐さんにすがりついた。見切りをつけるどころか私を売り捨てた。

 衣装デザインも曲の権利も、私の経歴も抱き合わせで売られた。一千万、それが私の値段だった。

 社長とはもう連絡を取っていない。私が売られたお金は、いつものお給料以外社長のものになった。


 昨日のギャル、あれは多分駄目だ。

 勢いで乗り切るタイプ。

 弱いふりをしたら簡単に引っかかった。単純な子。

 容姿はいいけど多分それだけだ。


 もう一人のポニテの女の子。幼く見えたけど、背は私くらいあった。

 じっと見てくる目にイラっときた。全部見透かされた気分になるような純粋な目をしていた。

 私を「強そう!」なんて言ってた。何を言いたいのかわからない。

 雰囲気が連理さんに似ていた。

 イラっとさせられたけど、頑丈そうな子だ。面白そうな子を見つけた。


 一番面白い人だった。連理さんだ。

「あんまりうちの子たち舐めないでね」

 妙な迫力がある人だった。小さい背丈なのに、大きく見える妙な存在感がある。

 多分この人、睡蓮さんをビビらせた人だ。あのライブで睡蓮さんの表情が歪んだ時、対峙していた黒い影役の人。

 小さい背丈、綺麗な顔、優しく丁寧な口調、急な威圧。そして傷だらけの手。


 連理さんの質問に唖然とした。

 睡蓮さんを越える?

 無理に決まってる。

 そんなのが見たかったら、この人がやるしかないよ。

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