7話 怪しい動き (7)
ナニス王国からの使者を迎え入れたオスタリア公国
は国を上げての歓迎ムードに包まれていた。
使者として来たのは大臣とサードニクス第一王子だ
った。
今年で16歳になる。
上には二人の姉がいて、ナージャ嬢とルイーシャ嬢だ。
第二王子であるタンザナイト王子は留守番らしい。
「サードニクス王子、ようこそお越しくださいました
歓迎いたします」
城の門の前には兵士と騎士達が一斉にならび、彼らを
迎え入れた。
「これは、静観ですね。滞在中の事、よろしくお願い
します」
「かしこまりました」
彼らの案内にはそれ相応のベテラン執事があてがわれ
たのだった。
アンネ王妃は早速甥っ子に駆け寄ると、親しげに話し
かけていた。
大臣と、この王子の反応次第で国が揺れる。
そう思うとイーサの手には汗が滲んだのだった。
部屋で休んでいるといきなり雑なノックをされて
緊張が走る。
「ニクス、俺だ!いるか?」
「メノウ兄さん?」
「あぁ、入ってもいいか?」
「もちろんです」
すぐに外にいたメノウを招き入れるとサードニクス
が心配気に見上げたのだった。
「叔母上から聞きましたが、軟禁されていたとか
大丈夫なのですか?」
「あぁ、やっと出られたんだ。なぜか毒殺の犯人
にさせられちまってさ。困ってるんだ。外にも
出られないしさ〜。馬に乗って走りてぇ〜んだ
けどさ、逃亡?のおそれがあるってんで出して
ももらえね〜んだよ」
「それはさぞかしご不便でしたでしょう。もし
よろしければ我が国へ来るというのはどうで
しょう?この国はもう先がないのです」
「何言ってんだ?ニクス、先がないって…」
「メノウ兄さんよく聞いてください。この会談は
ただの見せかけなのです。父上はオスタリアを
攻め落とし我が国の領土にしようとしています。
アンネ叔母様にも我らと一緒に避難してもらっ
て兄さんとアンバーくんも」
「わけのわからない事言ってるなよ!ここは俺の
国になるんだぞ?イーサなんかに渡さねーよ。
ましてや、攻め込むだと?冗談じゃねーよ!」
怒り出すメノウにサードニクスは慌てた。
メノウは頑固なのだ。
自分のものを取られるのが一番嫌なのだ。
だが、メノウではイーサと比べると見劣りしてし
まう。
それほどまでにイーサは優れている。
だから、民がどちらを選ぶかは目に見えている。
それでも、真っ直ぐぶつかっていくメノウは尊敬
出来るが、ただの無謀にも見えるのだった。
「兄さん、考えておいてください。僕が帰ったあと
一年です。約一年後には全面戦争になります。
逃げるのなら今のうちです」
16歳とは思えないはっきりした口調。
頑固とは違う、まっすぐな瞳。
本気である事が伝わってくるサードニクス眼差しに
メノウは一瞬気後れした気分だった。
「それでもだ!俺も、この国は譲れねーな。絶対に
負けねーよ、イーサにも、二クスにもな」
「兄さん………」
メノウは部屋を出ると真っ直ぐにイーサの部屋に行
った。
中で待っていたタヒソに向けて、ポケットに入って
いた魔道具を差し出した。
「さっきの会話ですよ」
「ご苦労様です。疑われませんでしたか?」
「どうですかね……メノウ兄さんならこう言うだろう
と思って言ってみましたが、違和感なく話せていた
とは思いますがね」
そう言うと、机の上にあった紅茶を口に含んだ。
飲み込むとさっぱりした喉越しがして側にあった鏡
を覗き込んだ。
どう見てもイーサの顔がそこにはあった。
「うん、凄いね。」
「お役に立てって光栄です」
「では、明日の会談もこれでなんとかなりそうだね」
「はい、でメノウ様がお召しになる服をこちらに運
んでこさせましょう」
「そうだね。お願いするよ。今は信用できるのは君
しかいないからね」
イーサの毒殺事件後、唯一信用ができるのがイーサ
を必死で助けてくれたタヒソだった。
それ以外には、金で動く人ばかりで誰一人信用でき
なかったのだ。
調理番の人間は、あの日以外にもちょくちょく毒を
混ぜるようになった為、その度に始末して来た。
今では、月一での毒の混入くらいですんでいるのだ。




